『お兄ちゃんの全裸を見てしまった』※咲視点
__お風呂場でお兄ちゃんの全裸を見てしまったんだがどうすればいいだろうか。
私はお風呂場から逃げるように自分の部屋に行き、パソコンを開きネッ友に質問する。
『お兄ちゃんって例の?』
最初に反応したのは私のネッ友の『@マダム』さんだ。
@マダムさんは私のネッ友の中でも一番の常識人。
私は反応してくれたのがこの人で良かったと安心する。
『うん』
『羨まけしからん。早く我輩に写真を渡しなさい』
しまった。『もっこり大好きっ子』も来た。
私のネッ友の中で一番の問題児。
オタク・ネトゲ廃人・変態と三拍子揃った変態だ。
『あげない。絶対に』
『お兄様の裸を見てしまったですか。それは大変ですね。お兄様にはしっかり謝ったのですか?』
私のネッ友チャット最後の一人『お嬢様』が来た。
珍しく私のネッ友チャットの全員が揃った。
『……逃げてきちゃった』
『バカ?』
『はい、バカ決定ww』
『それは、流石に……』
分かってる! バカなのは分かってるけど仕方ないじゃん!
『だって、お風呂場に入ったらお兄ちゃん(美少年)が全裸で無防備にしてるんだよ!? 私、分かったの。あの場所にいたらお兄ちゃんを襲っちゃうって!』
『自分のにーにーを美少年ってw 身内に自信過剰ww』
くっ、本当なんだよ!
お兄ちゃんはもう美少年って呼んでいいレベルなんだよ!
『それは置いておいて、今からでも謝りに行ったほうがいいんじゃない?』
『そうですわ。今なら許してくれるかもしれませんわ』
『そうだそうだ。そんでもってビンタされて「妹! 大っ嫌い! もう二度と話しかけないで!」とか言われてこいww 自分だけいい思いした罰だw』
もっこりこのぉ〜、むかつくな!!
でも、早く謝らないといけないのは本当だし……でも、本当にもっこりの言う通りになったら……。
私はマウスを握る強さを強める。
「__咲、入っていい?」
お兄ちゃん?
幻聴だろうか。
私の部屋の扉の向こうからお兄ちゃんの声が聞こえる。
「お兄ちゃん?」
「うん。さっきの謝ろうと思って」
謝る?
「咲も年頃だし、僕の裸を見てショックを受けたんだよね」
「え?」
「もしかして、具合悪くなっちゃったりした?」
「え?」
私はお兄ちゃんの言っている事の意味が分からない。
なんでお兄ちゃんの裸を見て私がショックを受けるんだろう。
「お、お兄ちゃん、入って」
とりあえず私は扉を開けてお兄ちゃんを部屋に入れようとする。
「あ、うん」
お兄ちゃんはお風呂から出て急いで来たのか髪や体にはまだ水滴が付いている。
髪からしたたる雫が服を濡らし妖艶的ないやらしさがある。
「咲?」
「あっ、えっ、ごめん!」
見とれてしまっていた。
「あ、あと、お風呂の事もごめん!」
「?」
私は勢いでお風呂で裸を見たことも謝る。
私が謝るとお兄ちゃんは可愛くキョトンと首を傾げた。
「なんで、咲が謝るの?」
「何でって……お兄ちゃん怒ってないの?」
「怒る? 怒ってないよ?」
裸を見られても怒らないなんて天使ですかお兄ちゃん。
「咲こそ、怒ってない?」
「私? 私はむしろ感謝してるくらいで……」
「……つまり、怒ってないの?」
「うん」
お兄ちゃんはもしかして自分の容姿が悪いって勘違いでもしてるのかな?
だから、私がお兄ちゃんの裸を見てショックを受けたとか勘違いしてるのかな。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
私はお兄ちゃんの方に手を置く。
「お兄ちゃんは凄く美少年だから!」
「えっ」
「本当に! 私だってさっきお兄ちゃんの裸見た時、自分の欲求を抑えるのに必死なんだから!」
わ、わ、私は何を言ってるの!?
これじゃ私がお兄ちゃんに欲情しているみたいじゃない!
いや、してるけど!?
「……えっと、ありがとう?」
お兄ちゃん多分私の言っていること理解してないなぁ。
でも助かった。
もしお兄ちゃんが理解してたら私変態扱いだったよ。
「__さぁきぃちゃ〜ん」
「__!?」
「お母さん?」
大魔王、お母さんが扉の前に居た。
お母さんは笑顔で、そして目の中の光を消して私を見ている。
その目を見て私はこれから私の身に起こることを理解した。
(あっ、私、死んだわ__)
お母さんの握力は100越えです。
その気になればリンゴを手だけで潰せます。
そんな彼女のアイアンクロー……。御愁傷様、咲。