ばったり遭遇
__疲れた。とんでもなく疲れた。
ここは一言、健斗の口癖を借りよう。
「めんどくさい……」
僕は、まだ誰も帰ってきていない家のリビングでソファーに座りながらうなだれている。
演劇部の練習に参加したはいいんだけど、思ったよりハードだった。
それも、僕は主役? ヒロイン? をしなくちゃ行けないみたいだ。
月丘先輩の話曰く、
『あぁ、やはり来てくれたねマイエンジェル! この舞台には君が必要なんだ!』
『必要?』
『あぁ、今回の劇は盲目の少女が主役なんだ! と、なれば君が適役だろうと私が推薦したのさ!』
とのことだ。
なんで、素人の僕を推薦したのか分からないが僕が劇の主役になることが確定した。
「……シャワー浴びよ」
演劇の練習で汗をかいて少し気になるのでシャワーを浴びることにした。
部屋から出て脱衣所に向かう。
「あ、服」
昨日みたいな事になるのは嫌なので僕は脱衣所に行く前に自室に服を取りに行く。
自分の部屋まで行き、着替えを取ると、脱衣所に向かう。
「やっぱり、ベタベタ」
服を脱ぐとき肌に引っ付いてくる嫌な感触を感じる。
僕はお風呂場に入りシャワーを浴びる。
「冷たい」
最初に出てくる水は冷たい。少しずつ水が温かくなる。
ちょうどいい温度になると僕は体を洗い始める。
「よし」
僕は体を洗い終わりシャワーの水を止めるがお風呂場を出ずに棒立ちしている。
体についている水が少しずつ冷たくなっていく、僕はこの感覚が好きで体を洗い終わっても少しの間棒立ちしている。
そろそろ出ようかな。
流石に寒くなり体を拭こうとお風呂場から出ようとする。
「__お、お兄ちゃん?」
「……咲?」
お風呂から出ようとするとお風呂場のドアを開けて咲が入ってきた。
僕は明かりが必要ないからお風呂場の電気もつけなかった。
きっと、咲は僕がお風呂場にいるのに気づかなかったんだろう。
「なにこれ、夢?」
「……多分、違うと思う」
咲は僕の裸を見てショックを受けてしまったらしい。
年頃の女の子が僕みたいな男の裸を見たらショックを受けて普通だ。
「ごめん咲」
「こちらこそ……ありがとうございます」
「ありがとう?」
何故だろう。
さっきから凄い視線を感じる。主に下腹部に。
「咲?」
「お兄ちゃん、ごめん後でちゃんと謝るから……私、部屋に行ってくる」
「え、あ、うん」
咲の深刻そうな声に僕は頷いてしまった。
もしかしてショックすぎて気持ちが悪くなったとかかな……。
あとで咲の部屋に謝りに行こう。
折角、話せるようになってきたのにこんな事で前みたいになりたくないし。
あべこべ感が出てきた。




