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第一話-8 文化祭?!

第一話-8 文化祭?!


☆☆☆


「失礼します」


 昼休み、教室に見慣れない男子生徒が入ってきた。

 ん? あの襟章は3年生?


「あ、いたいた。君たち、ちょっといいかな」


 その男子は、あたし達を見つけると、手を上げてニコニコ笑いながら近づいて来た。

 あー、この人知ってる。生徒会長だ。


「柊くんと壬鳥くんだよね。初めまして、生徒会長の茂木翼です。よろしく」


「こんにちは」

「どうも」

「ども」


 あたしと巴絵は、ついでに一緒におしゃべりをしていた大生も、椅子に座ったままペコリと頭を下げて挨拶した。

 生徒会長が、いったい何の用だろう。なんだか先生と話すよりも緊張する。


「突然で申し訳ないんだけれど、今日は二人にお願いがあって来たんだ。文化祭のことなんだけどね」


「「「文化祭?」」」


 そう、それは春の体育祭と並ぶ、2大学校行事のひとつ。

 毎年11月の初めにやるので、開催は1か月ほど先のことだ。クラスでもそろそろ準備を始める時期、次の学級会あたりで出し物を決める感じかな。


 会長さんは、声を揃えて首をかしげるあたし達を見下ろしながら「うん」と大きくうなずく。

 巴絵と並ぶくらいの長身に、爽やかな笑顔。

 こんなに近くで見るのは初めてだけど、さすがは生徒会長、その辺の奴とはオーラが違う。

 うわー、なんかドキドキしてきた。


「君たち、コンサートをやらないか?」


「はあ?」

「コンサート?」


 コンサートという言葉を聞いた瞬間に、こないだの株主総会の光景が頭に浮かんだ。

 ううっ、思い出したくない。


「実は、先日の生徒会の会議でね、今度の文化祭には何か目玉になるような派手なイベントが欲しいって意見が出たんだ。

 それでダンス大会とかロックバンドとか色々案が出たんだけど、じゃあアイドルのコンサートはどうだってことになってね。

 もちろん本物の芸能人なんか呼べないけど、うちの学校には本物以上のアイドルがいるじゃないかって」


「ごめんなさい」

「勘弁してください」


 あたしと巴絵は、速攻で頭を下げた。当たり前だよ。


「まあまあ、そう言わずに聞いてくれ。君達、ファンクラブあるよね?」


 その言葉に、あたしは思わず立ち上がって、隣でボケッとアホヅラ下げてる大生を指さした。


「あれはっ! このアホが勝手に始めてそのアホにアホの仲間が群がってきただけのアホの集団です! あたし達は関係ありません!」


 会長は初めて気が付いたように、大生を見た。


「あれ、君が作ったの?」


 すると大生が、すっくと立ち上がる。


「はい、その通りです。

 何を隠そうこの僕こそ、なでとも大好き倶楽部の創始者にして管理人、会員番号0番、東雲大生です」


 なにを急にキリッとした顔してんだよ。もしかして生徒会長と張り合ってるつもりか?

 だが、すると会長は大生の手を取って、何やら感極まったみたいな感じで言い出した。


「そうか、君がやってくれたのか! ありがとう、ほんとにありがとう!」


「喜んで頂けて嬉しいです。僕もがんばった甲斐がありました!」


 大生も、会長の手を力強く握り返す。何なの、こいつら。


「だが東雲くん、一言言わせてくれ。ファンクラブという割にはちょっと活動が地味すぎやしないか?

 今のところHPだけで、それもここ最近更新がサボり気味で目新しい情報が少ない。やはりここはひとつ、ファンのみんなの為に大きなことをやるべきだと僕は思うんだ。

 そこでだ、文化祭というのは絶好の舞台だと思わないか?」


「さすがです、会長。僕もそろそろ何かイベントでもやりたいと思っていたところでした。

 全ては、なでともファンみんなのため、ひいては学校のためなんですね。

 わかりました、やりましょう!」


「ありがとう東雲くん! 僕と一緒に、最高の学園祭を作り上げようじゃないか!」


「はいっ」


 あたしと巴絵はポカンと口を開いたまま、二人の三文芝居を眺めていた。ほんと、何なのこいつら。


「えっと、盛り上がってるところ申し訳ありませんけど。あたし嫌ですから」

「私もごめんなさい」


 二人して頭を下げる。だが会長は動じることなく、ニヤリと笑った。


「ふふ、君たちに断ることなんてできないさ」


「え、なんで?」


「なぜなら! ナンバーズ特典を発動させてもらうからね!」


 会長はそう叫ぶと、ポケットから1枚のカードを取り出し、あたし達に突き付けた。


「「へ?」」


 思わずハモてしまった。

 会長が出したのは、毎度おなじみファンクラブの会員証。ああ、ここにもアホがいた。


「えっと、これがどうかしたんですか?」


「よく見てくれ。会員番号777、特典付きラッキーナンバーだ」


「特典って何ですか? おい大生……、あれ?」


 大生がいない。あっ、四つん這いになって逃げ出そうとしてる!


「大生くん?」


 こそこそと逃げようとする大生の頭を巴絵がガシッと掴み、片手で引き戻した。


「どういうことか説明してくれる?」


「痛ててて、ともちゃんちょっとタンマ。

 ええっとあの、いや別に大したことじゃないんだけどね。何しろほら、これ作った時って急いで会員集めなきゃいけなかっただろ?

 だから、会員番号にちょっとしたオマケを付けといたんだよ」


「ふうん、どんな?」


 目が泳いでるぞ。またやらかしやがったな、こいつ。


「えっと……。撫ちゃんとともちゃんが、一つだけどんなお願いでもきいてくれるって」


「「はあっ?!」」


 この馬鹿、またとんでもないことを!


「お前、なに勝手なことしてんだよ! そんなの聞いてないぞ!」


「ラッキーナンバーって何よ?! まさか、他にはもういないんでしょうね!」


「ど、どんな事って言っても、変なことされないようにちゃんと条件はつけてるんだよ!

 公序良俗に反しないこと、あと内容はHPで公開するって!」


「で、一人だけなんでしょうね?」


 巴絵が大生の頭を掴んだまま、念を押す。


「えっと……その、撫ちゃんの『な』から7、77,777,7777。ともちゃんの『と』から10、110、1010、10010……」


 バキッ! ドカッ!

 巴絵が大生をグーで殴り倒し、あたしが尻を蹴っ飛ばした。


「あと7人もいるじゃないか! どうしてくれんだ、この大馬鹿野郎!」


 大生が、床に這いつくばったまま喚いた。


「だっ、大丈夫だよ! まだ会員は8千人しかいないからあと6人だけだって!」

「6人も7人も変わんねえよ!」


「そっ、それに会員はみんな二人のファンなんだから、変なお願いなんてしないって!

 ほら、会長だって自分のためじゃなくてみんなのためのお願いだろ!」


 あたしと巴絵が会長を睨みつけると、会長は腕を組んで、うんうんとうなずく。


「そういうことだ。壬鳥くん、柊くん、納得してもらえたかな?

 いやあ、ほんとにラッキーだったよ。会員登録の時、この番号を取るためにクリックのタイミングを見計らおうと思って画面を睨んでいたら、あっという間だったもんなあ。

 やっぱりみんな狙ってたんだよね。あっはっは」


 会長は相変わらず爽やかに笑うけど、もはやあたしの目には何のオーラも映らず、ただのアホの仲間にしか見えない。


「会長、これはこの馬鹿が勝手にやったことであたし達は知りませんから、申し訳ありませんけどそのお願いを聞くことはできません。ごめんなさい」


「えー、そんなあ」


 再び頭を下げるあたしに、会長は落胆の声をあげた。その時だった。


「撫ちゃん、そらあかんわ」


 教室の後ろの方から、大きな声が響いた。

 えっ、春ちゃん?


「いくら東雲くんが勝手にやった事とはいえ、約束は約束や。皆はん楽しみにしてはるんやもん、裏切ったらあかん」


「春風ちゃん、そうは言ってもこればかりは」


「巴絵ちゃんも、あかんえ。ウチもこればっかりは引かれへんよってな。うふっ」


 うふっ、と春ちゃんが笑った。何だろう、いつもと目つきが違う。


「は、春ちゃん?」


 そして春ちゃんも、ポケットから一枚のカードを取り出した。

 会員番号7777。


「ああっ、忘れてた! そういえば春ちゃんの番号!」


「ええっ!そうだったの?!」


「うふ、うふふふふふふ」


 なんという邪悪な笑み。ついに獄落院の本性を現したか。


「ウチもこの際、会長はんのお願いに乗っからせてもらうわ。撫ちゃん巴絵ちゃん、ええよな?」


「春ちゃん、いったい何をお願いする気?」




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