表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/77

第二話-11 大団円…からの

★★★


「うわあっ!」


「きゃあっ!」


 文箱が爆発した衝撃でボロボロの床が抜け落ち、撫子と蓬子ちゃんは、折り重なるように床下に落ちて行った。


「撫子っ! 蓬子っ!」


 藍子お姉さんが駆け寄り、大きく空いた穴に身を乗り出して叫ぶ。


「二人とも、大丈夫か!」


「いててて、大丈夫だよ藍子姉ちゃん。蓬子は?」


「あいたた。もーっ、撫姉ったら少しは加減してよー」


「撫子、大丈夫? 掴まって!」


 私も慌てて駆け寄り、穴の中へと手を伸ばした。


「巴絵? 動けるようになったの? 初代のばあちゃんは?」


 撫子が、私を見上げながら訊いてきた。

 あれ? そういえば、夢中で気づかなかった。


「いないわ。消えたのかしら」


 ともかく、そんなことよりも二人を助け上げる方が先だ。


「蓬子、先に」


「うん」


 撫子が下から押し上げ、私とお姉さんが手を引いて蓬子ちゃんを引き上げる。


「じゃあ、撫子」


「うん」


 身を乗り出し、両手と両手でしっかりと掴み合う。

 撫子の手。ああ、こんな小さな手で。私のために……。


「いくわよ。せーのっ!」


「しょっ!」


 私の腕力と撫子のジャンプ力で、小さな体がロケットのように飛び出して来る。


「うはー、ほこりまみれの泥まみれだ」


「うん、おかげでゲロが目立たなくなったな」


「姉ちゃん……」


 藍子お姉さん、そこ?


「そんなことよりも、ばあちゃんっ!」


 撫子が呼んでみたが、初代の返事はなかった。


「ばあちゃん、行っちゃったのか」


 そう言って周りを見まわす撫子を、私は思い切り抱きしめた。


「お、おい、服が汚れるよ。体はもう大丈夫なの? ちょっ、苦しいって」


 服なんかどうでもいいよ。あんなクソババアのこともどうでもいい。

 撫子が、撫子が無事でよかった。

 私は、両腕に更に力を込めた。


「ぐぇっ。とも……マジ、苦し……」


 うるさい、お黙り。

 私は撫子の悲鳴を無視して、無言で抱きしめ続けた。

 その様子をやれやれという顔で眺めていた藍子お姉さんが、「ふう」と息を吐いた。


「ともかく、一件落着ってわけか」


 撫子も私に抱きしめられたまま、顔だけお姉さんの方に向ける。


「これで、巴絵のおっぱいも小さくなるんだね」


(いいや、ならんよ)


 皆の頭の中で、声が響いた。


「ばあちゃん!」


 初代?! くそっ、まだいやがったのか。

 私は立ち上がって周りを見回した。


「このクソ幽霊がっ! これ以上撫子に何かをしようというのなら、今度こそ!」


(騒ぐな、乳娘。

 言ったじゃろう。呪いと祈りは同じもの、想いの強さが力になる。

 じゃが儂は生まれてこのかた、小さい乳しかまともに見たことがなかったからのう。こんな馬鹿でかい乳など、想像すらできんかったわい。

 如何に想いが強かろうと、想像できないものは具現もかなわぬ。おぬしの乳のでかさは、初めから儂の呪いを超えておったわ)


「「「えっ?」」」


 予想外の言葉に、三人の目が私の胸に注がれる。


「呪いを超え……って、え?」


 いったい、どういう意味?


「じゃあ、呪いはどうなっちゃったの?」


 と、撫子。


(精々、しばらくの間熱を出させるくらいが関の山じゃったのう)


「てことはその熱も」


 と、蓬子ちゃん。


(まあ、ひと月もすれば勝手に収まったじゃろ)


「どうしてそれを、もっと早く教えてくれなかったのよ!」


 私。


(じゃって、面白かったんじゃもん)


「こっ、この……クソババア」


(じゃから、案ずるなと申したではないか。ちゃんと人の話しを聞かぬ、おぬしが悪い)


「やかましい! ぶち殺してやるから今すぐ出て来い!」


 青空の見える天井に向かって怒鳴り散らす私の胸を見つめながら、藍子お姉さんが呆然と呟いた。


「つまり、壬鳥家八百年の呪いも、巴絵のおっぱいには敵わなかったと……」


 蓬子ちゃんも続いて声を漏らす。


「結局、最初からただの思い過ごしで、全部無駄な苦労だったと……」


「ええっ? あ、いえそんな……えっと、えっと」


 私は二人の視線から逃げるように、撫子の背中に隠れた。

 その私を、お姉さんと蓬子ちゃんの目が力なく追う。

 そして撫子は……。


「いいや、無駄なんかじゃないさ」


 ニヤリと笑った。


「おかげでこの力を貰うことができたんだぜ。

 ばあちゃんが言っただろ、強い想いが祈りの力だって。そして、ばあちゃんは知らなかったから、想うことができなかった。

 でもあたしは知っている。この馬鹿でかいおっぱいを、ずっとこの目で見てきたんだ。

 あとは、強い想いさえあれば……」


「撫子、まさかお前」


 藍子お姉さんの顔色が変わった。


(おいおぬし、いったい何を考えておる)


 私にも何らかの力が残されたのか、撫子の体が光り輝いているのが見える。

 この子まさか、この力を使って!


「姉ちゃんは力をもらえなくて残念だったな。蓬子っ!」


「は、はいっ?」


 蓬子ちゃんは急に呼ばれてきょとんとしていたけど、すぐに理解したらしく、撫子そっくりの悪い顔でニヤリと笑った。


「フフ……。わかったよ撫姉、そういう事だね」


「そうだ蓬子。この力さえあれば、どんな爆乳だって思いのままさ。

 ばあちゃん喜べ! 壬鳥家八百年の悲願は、あたしと蓬子が叶えてやるぞ!」


「おおうっ!」


 二人揃って腕を高々と振り上げ、空に向かってガッツポーズ。

 撫子どころか、あの真面目な蓬子ちゃんまでその気になるなんて。壬鳥家の悲願ってこれほどのものだったの?

 と、私が半ば呆れながら思ったその時……。


「なにが悲願だ。そんな私利私欲のために力を使わせる訳にいくか。

 天の理……、

 地の恵み……、

 人の世に永久(とこしえ)の幸あらんと、全魂を捧げ祈り祈りて……、

 我、壬鳥の藍子ここに命ずる!」


 藍子お姉さんが、二人のガッツポーズと競うように右手を振り上げ、天を指さした。


「引っ込めおっぱい!」


 その言葉と同時に、撫子と蓬子ちゃんの体を包む光が一瞬にして消え失せ、青い空に二人の悲鳴がこだました。


「ええっ?!」

「そんなあああーっ!」






第三話に続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ