第一話-2 自己紹介。みたいなディスり合い
☆☆☆
自己紹介をしよう。
あたしの名前は、壬鳥撫子。
北関東の片田舎に暮らす、中学2年の女の子だ。
身長146センチ、体重りんご2個分、スリーサイズ乙女の秘密、頭脳人並み、運動まあまあ、性格快活、容姿端麗。そして容姿端麗。
そして、朝っぱらから痴漢と暴行の犯罪行為を繰り広げるこいつの名は、柊巴絵。
隣の家に住む、同級生の幼馴染だ。
身長電柱、体重インド象、スリーサイズボインボインキュッボボン、容姿まあまあまあ、頭脳左右1個ずつ、運動ゴリラ、性格天然、そしてあたしの嫁(笑)だ。
あたしの嫁(笑)とはどういうことかと言うと、今朝の夢の通り、実はあたしとこいつは幼い頃に結婚をしている。
もちろん遊びに決まっている。いや、決まっているはずだったのだが、馬鹿な母親のおかげで、それでは済まないことになってしまっていた。
と言うのも、あたしと巴絵の母親達というのが、二人揃ってとんでもない大馬鹿者で。「どうせやるなら本気でやりましょ」と、友達を大勢呼んで大披露宴をやらかしやがったのだ。
しかも、神主を呼んだり、わざわざ市役所に行って本物の婚姻届まで貰ってきたりと、悪乗りにも程がある。
かつては素直で良い子だったと言われるあたし達は、奴らの言いなり。誓いのキスも、やっ……た。
あああああ! 思い出したらまた首吊りたくなってきた!
はっきり言って、あたしはこの女が嫌いだ。
そこそこ美人だとか、背が高くてスタイルがモデル並みと言えなくもないとか、ちょっとだけ成績がよくて常に学年トツプとか、バレー部のエースアタッカーだとか。
そりゃもう、気に入らないところを数え上げればキリがないけど。
特に許せないのが、あの遠慮のないおっぱい。
ただでさえでかいのに、あいつは何かというとこれ見よがしに胸を張るのだ。
小柄でキュートなあたしが正面に立つと、ちょうど顔の前におっぱいが来て、まるでおっぱいとしゃべってるような感じになる。ついつい鷲づかみしてしまうのも、無理のない話だ。
もっとも、あたしがあいつのおっぱいを掴むのには、ホントは別の理由があるんだけど。
その話は、また後で。
そしてどういう訳か、あいつは何かにつけあたしにちょっかい掛けてくるんだよね。
まあ別に悪気があるわけじゃなくて、本人は世話好きなつもりらしいんだけど、それにしてもちょっと度が過ぎている。
てか、はっきり言っておかしい。
そりゃあ、物理的に上から目線なのは仕方がないとしても、だ。
あたしのやる事にいちいち偉そうに口やら手やら出してきて、そのくせやることがどこかズレている。
今朝だってそう。頼んだわけでもないのに、わざわざ起こしに来たくせに、起こすどころか勝手に布団に入ってきて、あげくに顔面キックときたもんだ。
勉強はできても、やることはド天然。そのうえ、熱しやすくキレやすいという狂犬のような女、それが柊巴絵だ。
ホント、何考えてんだよまったく。
★★★
撫子が朝の支度を済ます間、私は玄関の外で待つことにした。
どうして外なのかというと、撫子がシャワーを浴びるというので「じゃ私も一緒に」って言ったら、追い出されてしまったから。
仕方がないから、待っている間に自己紹介でもしましょうか。
私の名前は、柊巴絵。
身長182センチ、体重いちご3個分、スリーサイズ宇宙の神秘、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、性格温和、そして撫子の嫁(失笑)。
はっきり言って、私はあの子が嫌い。
お馬鹿でがさつで我が儘で、人の言う事は全然聞かないくせに、都合のいい時だけ甘えてくるし。一人じゃ何も出来なくて、宿題だって毎日私が見てやらなくちゃならない。
頭が悪いわけではないと思うんだけど、勉強が嫌いなのか興味がないのか、とにかく物を知らなすぎるのよね。
どれくらいお馬鹿かというと、「明石の有名な水産物は?」という問いに、「さんま」って真顔で答えるくらい。
じゃあ、どうして私があんな残念な子と付き合ってるかっていうと、それは幼い頃に、撫子のお母さんに「よろしくね」って頼まれたから。
責任感の強い私としては、頼まれた以上は見捨てるわけにいかないから、仕方なく面倒を見ているってわけ。
ほんと、迷惑だわ。
あの子の唯一の取り柄といえば、見た目がちょっとだけ可愛いってことくらいかな。
ちっちゃくて、色白で、目がくりっと大きくて。
あの小動物っぽい目で上目遣いに睨まれて、生意気な口なんか叩かれたりしたら。なんかもお、とにかくもお。
ギューってしたくなるのを我慢するのに、毎日どれだけエネルギーを使うことか。
神様は、どうしてあんなダメ人間に、あんなきれいな外見を与えたもうたのか。それとも、きれいな娘に残念な中身を与えたと言うべきか。
ああ、運命って残酷だわ……。
「あ、とも姉おはよう」
私の深遠なる思索がもう少しで世界の真実に迫ろうというその時、玄関が開いて、一人の女の子が出てきた。
「よーちゃん、おはよう。撫子は?」
「今、着替えてるからもうすぐ来るよ。行ってきまーす」
「いってらっしゃーい」
撫子の妹の蓬子ちゃん、小学6年生。撫子と違って、真面目でお利口さんだ。
「巴絵おはよう」
「あ、お姉さんおはようございます」
続いて現れたのは、女の私でもドキッとするほど美しい、知的なクールビューティー。高校3年生のお姉さん、藍子さんだ。
「毎朝ご苦労さま。お先に」
「行ってらっしゃい」
後ろ姿に手を振りながら、思わずため息が出てしまう。
わー、相変わらずスリムだわあ。それに脚も長いし、顔ちっちゃいし。
壬鳥の三姉妹といえば、この街では知らぬ者のない超有名超絶美少女姉妹だ。
それに三人揃ってスリムボディで脚長小顔、大柄な私にしてみれば羨ましい限りだわ。
ま、胸だけは勝ってるけどね。こちらのお宅は、お母さんも含めて全員……、いや別に何でもありません。
ちなみに、私には大学生の兄が一人。
父のやっている空手道場の跡取りで、図体もデカく、傍若無人の乱暴者だ。
「おまたせ」
撫子が出てきた。
毎日見ているけど、制服もいいのよね。
夏服になったら、肌の露出も増えたし。この子の肌って本当に透き通るように白くて、ああ、紫外線対策をちゃんとさせないと日焼けなんかしたら勿体ないわ。
そして、ブラウスから透けて見える純白のブラがまた、ハァハァ。
「なにジロジロ見てんだよ」
ハッ、やばいやばい。また涎たらすとこだった。
「べ、別に。あなたっていつもだらしないから、服装チェックをしてあげてたのよ。ほら、リボン曲がってる」
「うるさいな、母ちゃんかお前は。ほら行くぞ」
顔を赤らめて私の手を振り払い、スタスタと歩き出す撫子。
照れた顔もまた、いい!




