初登校
ピピピピピ…カチッ
「7時…か。」
5月、今日から学校です。中学生の途中から学校に行ってなかったし、4月の時点で高校にも行ってない。だからこれは入学になるのかな。
「これとこれで…よし、準備出来た!」
学校に行く支度を済ませて、朝ごはんを作り始める。パンの上にレタスとベーコンと目玉焼きを乗せたアニメの朝食で出てくるような朝ごはん。1週間前ぐらいからはまってるんだ。
「今日は何かやってるかな?」
歯磨きをしながらモーニングTVを見る。RPGが紹介されてる。体験版も配信してるみたいだし、帰ってきたらやってみよう。
「そろそろ行こうかな。」
歯磨きを済ませ、バッグを持って家を出る。僕が通う事になっている菫草学園は制服はあるけど、私服でもいいみたいなんだ。設備もいいし、校舎も校庭も広い。そんな学園から招待を受けた時、何かの間違いなんじゃないかと思った。
「行ってきまーす!!」
自分以外には誰も居ない家を出て、鍵を閉めて出発する。一応、地図を貰ったから大丈夫だと思うけど…僕は中々の方向音痴なんだ。
「…ここどうやって行くんだろう?」
結城永遠、15歳。早速迷いました。地図を持っていても正直見方が分からない。見方が分からないのさえ忘れていた僕って一体…
「えーっと、ここは通ったことあるような…ないような…?」
引っ越して来てから5日目。通ったことあるような曲がり角に出ました。
「はぁ…地図じゃなくてナビを貸してくれればなぁ。ナビがあっても迷いそうだけど。」
誰か…ヘルプください。
「っと思ったら学生さんらしき人発見!あぁ…身長170くらいあるよね。しかもイケメンで優しそう。僕、小学校中学年並の身長だから凄く羨ましい。」
「大丈夫?」
「!?」
「あ、驚かせてごめん。もしかして、迷子?」
「迷子じゃないよ!…道が分からないの。」
「迷子だね。」
「僕は迷子じゃないってば!」
「身長低いし、顔が幼いから男子なのか女子なのかも分からないから…」
「それは仕方ないの!自分でなりたくてなった訳じゃないのに…」
「ごめんごめん。お詫びに道案内してあげるから。どこに行きたいの?」
「…菫草学園です。」
「え!?俺と同じ学校?え、え?君、小学生じゃないの?」
「高校生…だよ。ってぇー!?同じ学校なの!?」
「菫草学園でしょ?」
「うん。」
「じゃあ、同じだね。」
「(;・`д・ ´)」
「行こうか。」
「え?あ、はい。」
「どうかした?」
「いやー…別に…」
これは…運がいいの?悪いの?でも、親切な人で良かったぁ。
「そういえばさ」
「な!?に?はいっ!」
「そんなにびっくりした?」
「まぁ…ね?」
「慣れてないの?人と話すのとか」
「うん。ちょっと、訳があってね。」
「そうか。」
「あ、あのさ…」
「うん?」
「身長低いとか性別分からないとか話すの苦手とか地味にライフが削られていくからやめてほしいな。」
「…あ!!ごめん!!」
「許します。」
「ありがとうございます。」
「クスッ」
「?」
「あ、ごめんね。何か面白い人だな〜って。」
「面白い?」
「何でだろう。何かとにかく面白い。」
「悪いことじゃなければいいよ。」
「…優しいね。」
「そ、そう…か?」
「照れてるの?」
「照れてない!!」
「照れ屋だな〜。」
「照れ屋じゃない!!」
「もう、照れちゃって!可愛いな〜。」
「それはそっち…!!」
「そっち…?」
「何でもない。そういえば、名前聞いてなかったな。俺は神崎真裕。君は?」
「かっこいい名前なんだね。僕は結城永遠。よろしくね、神崎君。」
「よろしくな、結城。トワって名前、珍しいな。」
「そうかな?たまに結城えいえんとかって呼ばれたりしちゃうけど…」
「あ、そういう字か。」
「カタカナかと思った?」
「うん。あ、気づけばもうそこだな。」
「うわぁ〜!!写真で見た通り、大きな学校だね!!」
「そんなに嬉しい?」
「うん!!これで設備もいいなんて、もう最高すぎるよ!!」
「それは良かった。そういえば、結城って転校生だったっけ?」
「うん。そうだよ?」
「じゃあ、学長室に寄らないとな。」
「だね。」
「学長室は、そっちの角を左に曲がったすぐそこの部屋だから…1人で行ける?」
「行けるよ!?」
「本当に?」
「からかわないでよ!!」
「ごめんごめん。そういえば、結城ってクラスどこ?」
「え?1-2だけど…」
「本当!?俺と一緒だ。」
「そうなの!?やったー!」
「嬉しいのか?」
「もちのろんだよ!」
「この〜!可愛い奴め!」
「僕は幼児じゃないよ!!」
「悪い悪い。じゃあ、また後で!」
「ありがと〜!また後でね〜!」
「馴染めそうで良かったよ。でも、やっぱり結城は年下にしか見えない。」
学長室
「では…さっそくですが、1-2へ向かってください。毒牙先生。お願いします。」
「分かりました。よろしく、結城さん。」
「よ、よろしくお願いします…」
この毒牙先生っていう人、何だか怖い。
「あんまり緊張しないで。みんないい子ばかりだから。」
「は、はい。」
みんないい子ばかりって幼児に言う時の言い方みたい。僕は本当にどんな印象を持たれているんだろう。
ガラガラガラ…
「みんな、席について。今日は転校生の紹介をします。結城さん、こちらへどうぞ。」
「は、はい…!」
いざとなったら緊張する。…よし!
「初めまして!結城永遠と言います。よろしくお願いします!」
パチパチパチパチ
良かった〜!
「なぁ?あの子、小学生に見えないか?」
「なんか幼児にも見える〜!」
「男?女?どっちなの?」
「女だろ!」
「あれ男の娘でしょ。」
「なんか、可愛い!」
…どうしてそうなるの?
「じゃあ、結城さんは真ん中の列の一番後ろの席に座ってね。」
「分かりました。」
隣の席は…
「結城!?隣の席なのか?」
「神崎君!?さっきぶりだね!!」
「あれ?神崎さんと結城さんって知り合いだったの?」
「さっき会いました。道を教えてくれました!」
「そうだったんですか。えー、では!本日も楽しみましょう。体育館に行ってください。」
「え、楽しむってどういうこと?」
「知らない?菫草学園は学力コースとレクコースに分かれていて、学力コースは普通の学校と一緒でほとんどが授業。でも、レクコースは休息や遊び、スポーツだけなの。他にも、学力コースは制服の着用が義務付けられているけど、レクコースは私服でOKだからね。」
「えぇ…何それ。そんなのあり?」
「大丈夫!日常の中にも非日常は存在するからね!」
「それを言えば、全てが上手くいくような気がするよ。」
「あ、名前をまだ言っていなかったね。私は桃園美香。よろしくね、永遠ちゃん!」
「ちゃんって…僕は男だよ?」
「いいのいいの。さ、行こう!」
「あぁ…これは人の話を聞かないタイプの人だ。」
「でも、実際ここはなんでもありだからね。」
「1つ確認。これは、夢じゃないよね?」
「現実です。」
「リアリィ?」
「オフコース!」
初登校は神崎君のおかげで、無事に成功しました。そして、この学園はめちゃくちゃです。登校する意味があるのでしょうか?僕は、この町で何とかやっていけるのでしょうか?
「よし、体育館に行こう。」
「は、はい…(~_~;)」