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29, 7才 ⑮

一万五千字近くあります。



「……お母様…わたし…」


動揺したせいで魔力の嵐が弱まると、すかさず母が駆け寄ってきて抱き締められた。


「ごめんなさい、リフィちゃん。ごめんね」

「……どうして、お母様が謝るのですか…。わたしが……わたしのせいで……」

「違うわ。あなたのせいじゃないの。わたくしも見て見ない振りをしたの。エアルドとアイリーンのこと。聞くのが、知るのが怖くて耳を塞いで、目を閉じたの。エアルドの様子がおかしいことに気づいていたのに、弱いわたくしは逃げたのよ」

「でも、幕を引いたのは…」


わたしが口を開くよりも早く、ぎゅっと左手をケイに握られた。涙が止まらなかった。

母が立ち上がり、伯爵を睨んで対峙する。


「話は全て聞かせて貰いましたわ。道を塞いだので、ラルゴはこちらで拘束させていただきました」


母が壊れた扉に目を向けると、叔父とメイリンに挟まれたラルゴが姿を見せた。その足下にはアッシュ。騒がしかったのは、母たちが廊下で揉めていたかららしい。

お母様が嘆息し、無表情に軽蔑の眼差しを伯爵に注ぐ。


「本当に、どうしようもない方ですね………お父様」

「……」

「わたくしのしたことが気に入らないのでしたら、わたくしに直接言えばよろしいのに、エアルドやリフィちゃんにまで手を出して…」

「父上、さすがに今回のことはやりすぎだと思いますよ。……事情や心中は察していますが…」


叔父様が困った悲しげな顔をしていた。隣を見ると、ケイもどうしていいのかわからないといった途方に暮れた顔をしていた。敬愛している伯爵のしたことに衝撃を受けていることだろう。


「憶測で話を進めるでない。ワシは知らんと言っている。創造力豊かな子供の戯れ言になど付き合いきれん」

「証拠なら、ございます」


わたしは涙を拭いながら、ポシェットからアイリーンの手紙を取り出した。

お母様に向き直り、わたしは今まで黙って隠していた父とアイリーンが生存していることや、最後にマリーナで会話したことをかいつまんで話した。


祖父とのやり取りを聞かれていた以上、隠せないし、もう隠す必要もない。勝手に決めて終わらせたことを謝ると、「わたくしたちが不甲斐ないばかりに、辛い決断をさせてごめんなさいね」と、涙ぐんだ母に抱き締められた。

母も薄々感じ取っていたようだった。


「そんな憶測の私情の手紙など証拠にはならん。まんまと愛人のいいように話を鵜呑みにして操られおって…情けない。たが、一年前に下した判断は妥当だった。シェルシーにも家名にも傷がつかなかった」


確かに公的な証拠かというと、不充分。わたしは悔しくて睨みつけ、宣言した。


「この前の侯爵たちといい、上から目線が多いですね。わたしもそれほど他人のことを言えませんが。こんな策略を平気で巡らせて意のままにする……ますます貴族や特に男性が嫌いになりました。わたし個人は伯爵家には入りません」


全員が驚いたように、視線を寄越した。それを無視して、伯爵を見据える。


「また何か妨害しますか、それとも商会を潰しにかかりますか。それでもわたしは、伯爵を頼る気はありませんよ。そうするくらいなら、どこかのギルドに入って生活していきます。もう王族も貴族もうんざりです」

「バカな…そんな野蛮なことを」

「何が野蛮ですか。ギルドで生計をたてている方に失礼です」

「それは平み」

「わたしも平民ですから、構わないでしょう。姿が問題なら大人に化けます。恥というなら、わたしを貴族の系譜から抹消していただいて構いません」


子供が一人で何でも上手くできるとは思ってないけど、この人の世話になることは我慢できなかった。前世じゃ子供一人で生きてくのは無理だろうけど、この世界では何とか暮らしていける。チート能力のお陰で。


大言壮語に母たちが困惑し、わたしが一歩も引かないと伯爵と対峙していると。

何か悩んでいたケイが重い息を吐き出した。


「お祖父様、せめて伯母様とリフィに謝罪を」

「何を言うか、ケイトス。ワシが」

「仕組んだこともその証拠もございます」


その一言に、全員が驚いてケイを見やった。わたしも軽く混乱しながら隣の従兄弟を見つめると、深い森の目と合った。


「……黙っていてごめん。マリーナで事情を聞いたとき、アイリーンがやけに僕の存在を気にしていたから、もしかしてって思ったんだ。考えすぎかとも思ったけど、気になって。自分でこっそり探ってみたけど、何も手がかりがなくて…」


ジャックに力を借りたと、ケイが言った。

かつて『影』を取り仕切っていたジャックのツテは大きく、あっさりと裏が取れたこと。

愛人募集要項の貼り紙の写し、いつ誰が募集した酒場に出入りして候補者を探し、どこで面接が行われたか。細かな証言の報告書をケイがベルトポーチから取り出した。


「ずっと話せなくて、ごめん」


ケイが申し訳なさそうに、顔を曇らせた。

わたしは戸惑っていて、何て返せばいいのかわからない。

何か探っていたことや、時折悩んでいたことは薄々知っていたけど、何も言われないし、何でもないよと言われたからそっとしておいた。


これまで相当、苦悩していたのだろう。

祖父の行いを非難した彼は、罪悪感を感じていて今にも泣きそうに見えた。ケイの中では祖父もわたしもどちらも大事だから、両方傷つけたと自分を責めていそう。


「僕はお祖父様を尊敬しておりますが、この件はさすがにどうかと思います。王家のためであれ、ご自身のためであれ、リフィに益々王家と貴族を嫌わせてどうするのですか」


ケイが静かに告げて、わたしを見てきた。


「リフィも落ち着いて。確かにお祖父様は酷いことをしたけど、たぶん、伯母様や君といった家族を自分の元に取り戻したかっただけなんだ」

「……ケイは伯爵を擁護するの?」

「しないよ。君や伯母様をとても傷つけたと思うから。ただお祖父様を誤解しないで。間違ったことをしたのは、娘や孫娘と一緒に暮らしたかったからなんだよ。それだけ強く思っていたんだ」


ケイが自分の言葉に諭されて項垂れる伯爵を気遣うように見ながら、不器用で娘への接し方がわからず仕事に逃げた伯爵のことや、母との軋轢、伯爵不在の間に内緒で強引に嫁いでいった母のことを語る。初耳のわたしは唖然とした。


正直どう反応を返していいのかわからない。……お母様、そんな駆け落ち紛いのことをしてたんですね…。

久しぶりに家に戻ったら娘が既婚者で、その後はほぼ音信不通。……ジャックを執事として遣わして、一応認めたけどって……あーもー!!


腹立つし嫌いだけど、伯爵の事情もわかったよ。お母様の心情と強行手段の理由も。わたしが前世の記憶持ちでよかったね。子供のままだったら、怒り爆発、癇癪起こしてグレてるよ多分!!


ケイも確信犯かな!?

冷静にじっとわたしの反応を窺いながら、聞き入らせるように静かに話したもんね!?

わたしなら理解してくれるとか、赦しはしなくても事情を解ってくれるとか思ったの!?


くそぅ、その通りだよ。さっきみたいに伯爵最低バカ野郎コノヤロウと責めにくくなったし、諸悪の根元だとは思うけど、一概に伯爵だけ悪いとは言えなくなってるよ。叔父様やメイリン、周りも気づいてたのかな!? 父娘に教えてあげてよ!


「……どっちもどっち」


疲れたわたしの言葉がやけに響いた。

ぐるりと大人たちの顔を見回すと、全員が情けないようなやるせないような困った顔。……ソウデスカ。皆さん、自覚あったんですね。


盛大に拗らせまくってこうなったわけデスカ。

思いっきり、ため息を吐いた。

気遣うようにアッシュが頭をわたしの手に擦り付けてくる。……うぅ、アッシュが優しい。ふわふわの毛に癒される…。


時々、口煩い小舅とか思ってごめんね。

心の中でこっそり謝ったら、何故か距離を取られた。わたしのふわもこが…っ! マダ癒し足リテナイ!!


「……とりあえず、解りました。納得はしていませんが。…けれどもう……全部、終わったことです…。なかったことにはなりませんし、わたしも自分勝手に終わらせました……きっと、全て受け入れるのには時間がかかると思います」


そしてわたしも結構、混乱している。

仕方ないで済ませて、祖父を受け入れるのは無理。ついでに貴族になるのは、危ない旗が乱立しそうなので、もっと無理! 何で伯爵家…男爵より身分上がってる! 補正? 補正なの!? マジいらん! ボキィッと折れろ!!


とにもかくにも、今後伯爵家に入ることはないときっぱり引導を渡し、母たち家族はこれまでのことや、これからのことを話し合うことになった。


祖父が本当は、叔父様とお母様を婚約させるつもりだったことをポロリと漏らし、周りが反応に困ったこともある。

母はそれはないと思い込んでいたらしく、大いに慌てふためいていた。ので、「お母様の幸せが第一ですから、再婚ドンとコイです!」と応援しておいた。ケイも「当人たちの問題ですから」と口出ししない方向のようで、少し安心した。ええ子や~。


そうして大人だけを残し、ケイにアッシュ、わたしは記念すべき第一回ドラヴェイ家家族会議の場を後にして、秋の彩りが美しい庭へと移動した。とゆーか、連れてこられました。


大理石で作られた薔薇園の一角にある三角屋根の東屋。他よりも広いそこには白いテーブルとそれを囲む円い椅子。

穏やかな秋風に吹かれながら無言でいると、ラルゴが現れてお茶の用意をし、アッシュにお茶菓子と土精霊の好きな花と葉っぱをのせた皿を置いて去っていった。

どちらともなくお茶を飲んで、先に口を開いたのはケイだった。


「……今まで大事なことを黙っていて、ごめんね」

「え、あ…。わ、たしの方こそ……一人でここに来て……力を暴走させて………迷惑をかけるところだった……ごめん」


ケイがわたしの管理責任者になって王様たちから自由になったところだったのに、早々に管理能力を問われる事態になるところだったよ。


「この邸には強い土の結界魔法が張られているから、気づかれてないと思うよ。あのまま結界が少しでも壊れてたら、確実にウェンド侯爵に気づかれていたけど」

「………ごめんなさい」

「そうじゃないよ、リフィ」


東屋全体に、強固な結界が張られた。ケイのもので、そこにアッシュも力を付与して強化されている。わたしがちょっと暴れてもびくともしないくらいに。


「……僕たちが入ったから、慌てて傷つけまいと解放しようとした力を無理に自分の内に留めているでしょ。ここでなら、発散して大丈夫だから、好きなだけ泣いていいよ。一番巻き込まれて翻弄されたのはリフィなんだから」


またもや涙腺が弛んで、自然と涙が流れた。一つ流れると止まらずにボロボロと零れて、同時に抑え込んで溜めていた魔力も強風となって吹き抜けた。木々や薔薇の花を揺らして通りすぎていく。


━━ああ、全くもう…。

行儀悪くても見られたくなくて、体育座りして膝に顔を押し当てた。

何なの、コレは。もう何もかもが嫌になった!! お父様を糾弾しておいて、追い詰めていたのはわたしの存在とかフザケンナ。ていうか、ナニその結婚後の条件! おかしいでしょ!?


お母様もお母様だし、メイリンもジャックもどうしてこんなに拗れるまで放っておいたの!! 結局全部、家族の事情で、それに振り回されただけとかっ! 最悪っ!


事故でお父様を亡くさないよう必死こいて力をつけて、魔物のせいで従兄弟を死なせないためにチート能力を磨いて、病気のお母様を助けるために薬作りも頑張って……。そりゃ、後者は役に立ったよ?


だからって、こんなん……っ! もー、何なのこれぇっ!! マジふざけんな。うわーん、バカー!! やってられるかコンチクショー!!


理不尽さに罵倒して、思いっきり泣き喚いて、好き勝手言って暴れて、わたしはようやくスッキリした。後日、羞恥のあまり一人反省会を鬱々と催しそうだけど、少しだけ気分が晴れた。


ぐずぐず泣きながら、差し出されたハンカチで涙を拭い、強く鼻をかむ。発散した熱で火照った顔や体温が、通る秋風のお陰で少しずつ冷えていく。


「……落ち着いた?」

「うん…。ありがとう。…取り乱して、驚かせてごめんね…」

「それはいいよ。……ところで、リフィは赦してくれる? 僕がずっと黙って隠していたこと」

「………わたしもたくさん隠しごとしてたから、おあいこってことで」

「それなら、よかった」


悩ませて申し訳ない。わたしにはまだ隠しごとがあるのに。

顔をあげると、神々しい美貌に安堵の笑顔を称えた従兄弟。……いい子だねぇ~! またホロリときそうになる。


「ところでリフィが隠してたことについて聞きたいんだけど」

「…………ん…?」


今、何か不思議な言葉が聞こえたような…。

気のせい? わたしったら、混乱しすぎてついに幻聴まで━━仕方ない。とりあえず、落ち着くためにも一度家に帰って寝るとしよう。お布団がわたしを呼んでる気がする!


顔色悪く意味不明な言葉を発して、その場から離脱しようとしたのに、そうは問屋が卸しませんでした。


具体的に言うと、右隣には天使の笑顔の従兄弟。左隣には食事を終えたアッシュに隙間を詰められ、挟まれていた。

念のために前後も確認すると、前は紅茶の置かれたテーブル、後ろは椅子の背もたれ。……逃げ場がねぇー。


罠だった? ここに連れてこられたの罠だった!?

笑顔で青ざめるわたしは、一刻も早く脱出したい。こうなったらテーブル返し…破壊をして突破するしか……。決意を固めていると。


「ちなみに自白剤を混ぜた紅茶は美味しかった?」

「ごふぉっ!?」


素敵笑顔で強襲されました。

咄嗟に吐こうとし、イヤそれ何か失うと乙女の尊厳で必死にこらえて、ぶるぶる震えながら反論する。


「…いじめ反対。ダメ、絶対」

「ごめんね、冗談だよ」


天使の笑顔に見惚れたさっきの自分を、正気に戻れと殴ってやりたい。

疲れきって遠い目をしたわたしを、従兄弟は清々しい笑顔で追いつめてきやがりました。


「常々ね、訊きたいと思ってたんだ。『この世界には』ってどういう意味? って。無自覚でたまに使うよね。新しく何か造るときは特に。既存の物の有無を確認すると、『この世界には』そこまでの技術はないかとか、『この世界では』まだ初期の段階か、とか考えに没頭して呟いていたよ。今まで聞き流しておいたけど、さすがにそろそろ知りたいかな」

「……あら、わたしそんなことを言っていたかしら?」

「言ってたよ。アッシュも聞いてる。残念ながら、たまに無意識に出るのは僕とアッシュの前でのみだけど」

「ごめんなさい。とんと記憶がないの」

「━━へぇ?」


笑顔でかわしきった! と、自画自賛していると、笑みを深めたケイ。……にこやかに大魔王化っすか。本能で恐怖を感じたのか、手が小刻みに震える。

やりきったぜ、やっふー! とか調子にのってすみませんでした……。


けれどそこは女の意地で、何でもありませんよと、泰然と微笑み返した。まだお子様に負けるわけにはいかねーんですわよ!?

ニコッと笑うケイ。アッシュが付き合いきれんと丸くなる。……だったら、ピタッと寄り添わないでわたしを逃がして!


「記憶にないんじゃ仕方ないかな。でもついさっきのことなら、覚えてるよね。確か『事故でお父様を亡くさないよう必死こいて力をつけて、魔物のせいで従兄弟を死なせないためにチート能力を磨いて、病気のお母様を助けるために薬作りも頑張って』……だったかな」


血の気が引きました。もう帰らせてください。じゃなきゃ、儚く気絶シマス…。━━無理だったけど。失言したわたしのアホ…。


「この独り言はちゃんと記憶玉で記録しておいたから、忘れているなら見せてあげるよ」

「……」

「取り乱したら、リフィは色々と正直になるものね?」

「……」

「前々から知っていたように動いたり、発想の知識を不思議に思っていたけど、最初から知っていたのなら納得だよ。━━それで、何でそんなことを知っているのかな?」

「……ジーザス」

「? どういう意味?」

「わたしも詳しく知らないけど、使ってみたかったの。たぶん、こういう追いつめられたときに使うんだよ…」

「それもまた後で聞くとして。質問に答えてくれるかな、リフィ?」


何か、上手いこと誤魔化す言い訳を…っ!

かつてないほど稼働させているのに、脳内に浮かぶのが、危機一髪。絶体絶命。万事休す。罪認メロ。ってドユコト!?

それは知ってる! 身をもって実感してるから!


「リフィ。またどう逃げるか考えてるの?」

「……」

「言いたくないなら今は逃げてもいいよ。次は容赦なく問い詰めるから」

「グハッ!」


せ、精神に深刻なダメージが……。

この従兄弟コワイッ!! 笑顔で崖っぷちに追い詰められた気分だよ!? 自業自得なのは重々承知だけど!!


……………。うーん…。何というか………急に何もかもが面倒になった。━━はぁぁあぁああ。

もうどうにでもなぁーれ!

死んだ魚のように濁った目で見やると、従兄弟は嬉しそうに目を輝かせていた。


「話す気になってくれた?」

「……まず、頭のおかしい精神異常者と認定して、病院に入れたり、変なものに取り憑かれたと騒ぎ立てないでクダサイ」

「うん? わかったよ」

「次に、用法用量を守って…」

「リフィ?」

「……」


……悪あがきくらい笑顔で流してよ。

言いたくないし、不安しかないけど…わたしが間抜けにも漏らしていたのが悪い。腹を括って、勢いのままぶっちゃけよう!! 聞いた後は自己責任で!

でもその前に、確認しなくちゃ。


「ケイ、アッシュ。……話を聞いたら、容赦なく大きな面倒ごとに巻き込む可能性があるけど━━いいの?」


真剣に問うと、二人がしっかり首肯した。

わたしは一つ息を吐いて、腹を決める。

それでと先を促す従兄弟に、観念したわたしは異世界、輪廻転生、前世、記憶にあるこの世界観の物語について語った。

いつの間にか、アッシュがお座りしてきちんと聞いていた。

……ええ、洗いざらい吐かされました…。



・*・*・*



「━━と、ゆうわけで。何となく予想つけて、起こりそうな出来事を回避しようと頑張ったのでした」


今日一日で、色々ありすぎた。どっと疲れて精神ゴリゴリ削られた。━━よし、帰って寝よう。


ハイスペック従兄弟もアッシュも混乱しているようだし、狂人変人だと距離を取られるのは……寂しいけど、仕方ない。最悪、この不可思議話で精神に異常をきたすようなら、今話した記憶を消そう。そして今後はあまり関わらないようにしよう。


子供が順応性高いといっても、さすがに受け入れるのは無理だろうなぁ。ケイと一緒にいるのは楽しかったのに残念…って、わたしがうっかりボロを出していたせいなんだけど!

はぁぁあぁああ。


「信じる信じないは二人に任せるよ。わたしと距離を置いても仕方ないとも感じているから」

「確かに俄には信じがたいけど、説明されたら成る程って納得できるからね……記憶があったから、お姉さんとか年上っぽいこと言ってたんだね」


しみじみ言われたよ。アッシュも「だなー」って、うんうん頷く。……あれ? この反応でいいの…?


「……ぇ、信じるの…?」

「嘘をついてるとは証明できないし、王候貴族を避けてたし、伯父様や僕の死因を知って動いたと聞くと、納得できるからね。君の誕生日が近づくにつれて僕にベッタリだったのが、『大波』や領地の慣習を聞いたら焦燥が嘘のように凪いだし、領地についてきて助けられたから━━って、何で泣いてるの!?」

「……え」


驚くケイとアッシュに囲まれて、顔を触ると涙が溢れていた。もう今日は、涙腺決壊しすぎな気がする…。

わたしを嵌めたり、追い詰めたりしていたくせに、心配するように窺うケイとアッシュ。基本、優しいのは変わらないよね。


「……信じてもらえるとは思ってなかったから…。最悪、避けられると思ってた」

「そんなことしねーよ」

「アッシュの言う通りだよ。まだよく呑み込めてないところはあるけど、薄れている前世の記憶も含めて、今日まで過ごしてきたリフィに変わりはないでしょ」


……あ、安心したら、涙が…。

どうしよう。現金なもので、色々あって落ち込んでいたけど、大事な人たちに否定されることなく、受け入れてくれて、全部まとめてわたしだって認められて、物凄く嬉しい…!


「でも、その事も含めて」

「周りには黙っておいた方がいいだろうな」


ケイの言葉をアッシュが引き取り、頷く。

━━デスヨネ。こんなおかしな話、信じてくれる人が少ない。わたしだって聞いたら、熱があるのか、相当衝撃的なことがあって混乱してるからそっとしとこうとか思うだろうし。


「でも、本当によかった」


安堵して笑うわたしを、従兄弟とアッシュが両側から不思議そうに見てきた。


「わたしの秘密というか、行動原理を知ったからには、二人とも協力してくれるよね?」

「ん?」

「は?」

「今後どうなるかはわからないけど、攻略対象者には関わらず普通に暮らすのが目標なので、わたし自身も頑張るけど、二人も協力してね」


わたしを挟んでケイとアッシュが顔を見合わせた。目と目で二人が無言のまま会話している。それから、観念したように大きくため息を吐いた。……わたしに失礼デスヨ?


「これから本当にそうなるかはわからないけど、予防するからできる範囲で手伝ってってこと?」

「うん。イベントないならそれで、全く困らないから」

「……変な方向に暴走されるよりは」

「歯止め役がいた方がまだマシだな、ケイ」


同時にため息を吐かれた。……本当に失礼だ。

二人を色んなことに巻き込んでいる自覚はなきにしもあらずだから、ここは大人なわたしが笑顔で流しておくけども。


嘆息しつつも了承した二人に、わたしはにんまりご満悦。━━よっしゃ、強力な助っ人というか、共犯者ゲットォッ!!


なるべく頼らないようにすると決めていたけど、事情を知られたというか、聞いてきたからには遠慮なく巻き込むよ!

その代わり、全力で力を貸すつもりだけど。


……何にせよ、今日一日で最低な報せと嬉し頼もしい共犯者ができて、感情の起伏が大きく複雑に動いて、疲れた。

糖分補給と、わたしは涙を拭いて、冷めた紅茶を飲み、お茶菓子をうまうまと頬張った。


不安だった未来が、少しだけ楽しみになったよ。

これからの未来も明るく、大丈夫な気がする!!

今なら、登場人物どんとこ ………あ、嘘です。やっぱりなるべく来ないでクダサイ。面倒なので。


普通の平和が一番だよね~。

そう呟いたら、両側から呆れた視線が。またもや深いため息のおまけ付き。……温厚なわたしも怒るよ?


「何というか…リフィには当てはまらないから、無理じゃないかな?」

「ケイに賛成だ」

「ザックリ切って捨てられた!! そんな夢も希望もないこと言わないでよ! 王様たちとの関わり拒否したし、学園通わないし、これ以上はないでしょ」


……その可哀想な子を見る目をやめてクダサイ…。


「まずリフィの言うチート(?)発明品が出る度に、もうすっかり製作者のミラ・ロサの名は有名で狙われているよね。次に、君がうっかり全属性持ちで全精霊王の契約者と周囲にばらす可能性があって、最後にこの薬」


ケイがベルトポーチから取り出して見せたのは、もしわたしが城に監禁されている間にお母様が病気になったとき飲ませてほしいと、ソール先生にお願いして手紙と共に送った━━ 一年かけて先生と共同開発した画期的な━━薬だった。


ラカンさんの紹介で、最初に先生と会ったとき「難病とされる流行り病って何ですか?」って聞いたら、「放熱病だな」と返されたので、薬学を学ぶ傍ら熱病と冠する病の各症状と薬について片っ端から資料を読み込んで、調べた。

先生が長年研究していたというのも大きいと思う。


放熱病とは、三日間熱を体内にためて高熱に苦しみ、その後熱を放出して冷たくなる━━死に到る病で、原因は毒素のを持つ鳥が運んでくると伝えられていた。


それから特に効き目があった、改善が見られた薬草を様々な条件下で育てた物を掛け合わせ、ノームの知恵を借りながら失敗と挫折を繰り返し、ウィンにその毒素持つ鳥を捕まえてきてと裏取引して、解剖と実験、抗体や生態系を詳しく聞いて試行錯誤しながら何十種類と作った。


ノームの人体に害はないというお墨付きをもらい、それを放熱病のネズミや動物で試してから、臨床試験に協力してくれる患者さんを募ってもらって、薬を先生の知り合いの医師に試してほしいと送ってみたら、何十種類と作った薬の中で一つだけ効き目があり、三日で完治したとのこと。他の患者も同様で、それを聞いた瞬間、思わず先生と抱き合って喜んだ。それが、サンルテア領に出発する前の話。


つい熱弁したら、突き刺さるような視線を左右からいただきました。同時に何度か目のため息。


「リフィ、君は本当に……奇跡という現象を起こした自覚がないんだね…」

「何が奇跡?」

「開発したこの薬だよ。伯母様のために無意識にやらかしちゃったお陰で、また君を狙うというか欲しがる理由を作ってくれて、南西の都市部から探りが入ってきてるんだよ。ここ最近、僕が忙しかったのもその情報秘匿と、密偵をラカン長老と共に王都に入らないよう追い返していたからなんだよ」

「はっ? ……ええっ!?」


そうなの!? いいことしたとかそういう問題じゃないの!?

だって主に開発したの、わたしじゃなくて先生だよ?

先生が地道にこつこつしてきた研究の下地があってこそだし、その知り合いにも先生の名前しか出してないのに。


「ちなみにウィンとした裏取引って何だ? あの鳥が少し前から、近くを飛び回って鬱陶しいことこの上ねー」

「アッシュ、それは後で問い詰めて」


ケイの言葉に大人しく従うアッシュ。……わたしはそこが今、納得いかないんだけど?


「……作った物は仕方ないけどね。画期的な物だし、立派に国に貢献してくれたと思うよ。特に南西の方は百年前に滅びかけたところをこの国が併合してから中央といさかいが絶えないし、この件で態度が軟化していくと思う。放熱病の被害が毎年あるのは南西のルドルフ地方だから」

「……それは何より。……それで?」


話はそこで終わらないから、奇跡なんて大層な表現をしたんだよね。聞きたくないけど、聞きましょう。

ケイが疲れたように笑んだ。


「そのルドルフ地方の国境、宗教国家トレアも放熱病には悩んでいてね? ぜひ開発者には聖人賢者の称号を授与して、国をあげて迎えたいと触れ回っているようだよ」


わたしは絶句して、間抜け面を披露した。なんとまさかの…。


「━━世界規模の指名手配!?」

「そこまで大事になったら、僕や『影』ではどうしようもないかなー」

「遠い目をして言わないで! 諦めたらそこで試合終了だよ!?」


待って、見捨てないで! わたし少しお手伝いしただけで、あまり関係ない! 先生がそこに迎えられるだけだよ、たぶん。

ケイに盛大に息を吐かれた。


「僕の知らないところで、うっかりドッキリを仕掛けるのはやめてくれる?」

「仕掛けてないよ!? ていうか、わたしが今聞いてドッキリしてるから!!」

「本当に予想外のことをしてくれるよね?」

「わたしも想定外だったよ!?」


不可抗力! 人命救助のはずなのに、何で責められてるの!?

真面目な顔をしたケイが、茫然とするわたしに告げる。


「ラカン長老と徹底して『翠の聖女』の話は揉み消して、ソール先生にも君のことは他言無用でお願いしてあるけど……どこでどんな話がどう伝わるかはわからないし、全部の噂は消せないから、覚悟はしておいて」


森の目には不安と気遣う色。

見捨てられないと知り、ほっとした。……世界の指名手配ヤダ…コワイ!!


「それでリフィ、当分は…」

「大人しくしてます。先生のとこにもラカンさんのとこにも行きません!」

「次に何か始めるときは」

「ケイに相談します!!」

「薬の知識を見せるのは」

「『影』だけにします!!」


敬礼して答えたら、「忘れないでね…」と疲れたように釘を刺された。……うぅ、ごめんなさい。迷惑をかけて。先生とラカンさんも。


「サンルテアの僕がこれ以上表に出るのは、君に辿り着かれかねないから、今後は別の所から情報操作するよ。幸い、ミラ・ロサが誰かを知っているギルドマスターがいるから、せいぜいハイドたちをけしかけてくれたお礼もかねて、酷使するか…。薬もギルド経由で販売させて、ラカン長老とソール先生に会わせて、対外的に関係者っぽく見せて……」


……ワタシ何も見てません聞いてません。従兄弟が黒いとか魔王化に拍車がかかっているとか、ギルドマスターが隠れ蓑に利用されそうとか、それもわたしのせいでとか、一切そんなことないと現実逃避。

そもそも、人助けに協力して指名手配されるとか酷い! 理不尽だよね!?


すっかり疲れた様子で考え込むケイを見る。

あ、よく見ると目元に隈が! 何てコトッ!? いやでも、ここれはこれで、翳りのある美貌の憂い顔が一段と映える!

内心で、ぐっと拳を握ったら━━声に出てた。


「……余裕だね、リフィ。反省してないのかな?」

「…………してます。スミマセンデシタ。…何でもはできないけど、その、わたしにできる範囲でならできる限りのことはするよ…?」


魔王の笑顔コワイ魔王の笑顔コワイ。

わたしはそっと目線を外した。


「……アッシュ。リフィの嫌がることって何かな?」

「何でイヤガラセ一択!? アッシュも真剣に思案するのやめて!?」


他に何かすることあるでしょ。噂する人を殲滅するとか、密偵探すとか、記憶を抹消するとか。

器用に腕を組んで悩み、何か思いついたアッシュ。


「着飾るのをイヤがるな。だから、煌びやかで身動きしにくい繊細な生地のドレスを着せて、傷つけると価値の下がる高価な宝石で飾れば人形みたいに固まるぞ。きっと凄く疲れる」


それは物凄く効果覿面。正しくその通りだよ。

おしゃれは嫌いじゃないけど、面倒臭がる性格が災いして前世でも手抜きが常。フルメイクでバッチリ決めるのは特別なときだけだった。

ケイが楽しげに微笑む。


「メイドたちも、いつも世話し足りないって言ってたから、それでいこう」

「ぅげっ!? 待って、総額いくらにするつもり!? 心臓に悪いからやめよう!!」

「気にするのそこなんだ」


生暖かい視線にイラッとして、わたしは従兄弟が忘れている伝家の宝刀を抜いた。


「それにケイだって女装があること忘れてないよね?」

「うッ!! ……リフィも、完璧なお嬢様姿を楽しみにしてるね」

「ふぐぅっ!!」


笑顔で睨みあうケイとわたし。お互いに殴り合う不毛な泥仕合のように言い合う。呆れたアッシュが、はふーっと嘆息した。


「どっちもどっちだな」


尤もな言葉に、わたしたちは肩を落として、無益な争いをやめた。

……今日は何だか、訳がわからないけど疲れる日だ。

しみじみ思いつつ、勝手に口元が綻んだ。




・*・*・*




その後、わたしは大人しく身を慎んだ。

ケイはすぐ計画を実行したらしく、難病の薬を作った救世主はソール先生と話が流れ、宗教国家トレアから迎えが来たらしいが、「歳だから」と辞退したらしい。それなら薬を広めた先生の弟子たる知り合いのイル医師の名が上がったが、これも辞退。


トレア国家の使者は粘ったが、ルドルフ地方をまとめる大貴族(元ルドルフ国王族)デネシャ・ルドルフ侯爵とシルヴィア国の高官に説得されて、渋々戻った。最後まであちこちで、ソール先生とその弟子に関する話を集めながら。


それはルドルフ地方の人も同じで、一段落した後もしつこく王都で情報を集めていたらしいけど、ラカンさんと『国の闇』たるサンルテアの強力な支配下では目ぼしい情報を集められず、少し人を残して冬になる前に引き上げた。


そうしてケイの企み通り、両者は薬の流通と販売を一手に握ったギルドマスターのクルド・ダッカに目を向けた。何とか会って話を聞こうとしているが、多忙を理由に断られているようだ。


わたしはラカンさんとソール先生、フロースへの依頼以外はギルドとの接触を一切断ち、二人とは時々『影』を通して月に一度文通するだけになった。申し訳ないと謝れば、二人とも世間が騒がしくなるのは気づいていたようで、気にするなと返ってきた。


先生の方では医者になりたいと弟子が増え、ラカンさんの方でも薬関係を扱う部署の利益が上がって人が増え、どちらも忙しくしているらしい。ちょっと寂しいけど、わたしは静かに見守り、距離を保つことにした。


そんな騒ぎの間、わたしはサンルテアの早朝訓練に参加する他は、普通の商家の娘らしく、過ごした。

ある日、久々に参加した早朝訓練の後。従兄弟に見事に嵌められたけど。


いつもなら簡単にお風呂に入って汗を流して、着替えて朝食なのに。どこぞの令嬢よろしく頭から爪先までメイドに磨かれて、マッサージされ、髪をきっちり複雑に結われて、がさつに動いたら破れそうな繊細か生地の綺麗な濃い緑のドレスを着せられ、値段を考えるのが恐ろしい宝石で飾られ、お人形みたいに動けなくなった。


ちなみに、すべてが終わったのはお昼過ぎ…。

ご飯食べたい、おやつ食べたい。でも汚すのコワイ…!!

恨み言と空腹と恐怖と疲労が蓄積される苦行。


満足げに絶賛したのはいつもお世話になっているメイドたち。悟りを開いた微笑みで固まるわたし。訓練不在だったのに、任務から帰って来たケイにドッキリ嫌がらせ大成功とばかりに微笑まれて、写真を撮られた。


なので。

お返しにわたしも遊びにきたケイを、お母様とメイリンと捕獲して、サリーから借りたドレスを含めて散々アッシュと共に着飾って写真に収めまくりました!


魂を飛ばしたケイに「おねーさま、可愛い!!」と抱きついたわたしは悪くないです。お母様とメイリンも生き生きしてたよ。大人げないのではなく、可愛いは正義です!!

アッシュ曰く「どっちもどっち」らしいけど。


わたしの家もサンルテア家もドラヴェイ家も、特にこれといって変わりはなく、いつも通り。

ただ、家族でマメに手紙のやり取りをして意志疎通してる。時折、母は伯爵家に足を運んでいるようで、「リフィちゃんも一緒に行きましょう?」と誘われるけれど、丁重にお断りしている。……お母様、娘を巻き込むのはお止めください。それと、わたしはまだ赦してません。


最初は顔を会わせても同じ空間にいるだけで、目も合わせずに一言二言の会話で終了していたようだけど、そこに叔父様やメイリン、クーガやラルゴが仲立ちして、ぎこちなくも話すようにはなったらしい。


大抵、わたしかケイか叔父様が共通の知り合いだから話題に上るようで、特にわたしの話に事欠かないと聞いた。『影』の報告で、わたしが街でいちゃもんつけて絡んできた酔っぱらい相手に賭けポーカーをして身ぐるみ剥いだとか、猫と追いかけっこして坂道で捕まえて転がって川に落ちたとか……。…忘れてください、お母様。


メイリンからその話を聞いたわたしは、話した『影』を突き止めて八つ当たりがてら、しっかりとっちめた。

ごくたまに、伯爵から『元気か?』と短い手紙が届いて読むけど、返事は書かない。

伯爵とは、一年くらい過ぎてもう少し落ち着いたら、母と一緒に祖母の墓参りなら行くのもいいかもしれない。



そんな風に穏やかに日々は流れ、月に二度、少女の実践行儀見習いを教える夫人の屋敷に通い、ケイもケイで忙しく、一週間に一度会えるかどうかといった日々を過ごした。


会えば街でカルドやサリーたちと遊んだり、雨の日はわたしの家で本を読んだり、たまにアッシュと遠出したり。

初冬になると、アッシュがケイについて出掛けることが多く、わたしは街で遊んだり、誘拐されかけたり、友達の家で遊んだ帰りに変なのに捕まり馬車に乗せられたり。


人拐いをフルボッコにしたかったけど、目立たない騒がないを約束させられていたので、『影』か警備隊の迎えが来るまで寝て過ごしたら、ケイとアッシュに怒られた。


油断しすぎとか、呑気すぎるとか、せめて逃げるか怯える演技して、と。目立たず騒がしくしないようと言われたから静かに迎え待っていたのに理不尽と言えば、倍になってお小言が返ってきたので、大人しく聞いて謝りました。

それにしても、春になったせいか変質者が増えている気がする…。


何だかんだ毎日を忙しく、時々のんびり過ごし、ケイともアッシュとも喧嘩をし、サリーやカルドと遊んだり学んだり。そうして思うのは、友達やアッシュ、従兄弟と知り合えてよかったということ。


季節はあっという間に初夏で、放熱病が猛威を振るい始める季節になる。南西部では罹患者が去年よりも出たが、広がる規模は小さく死人も出ず、順調に回復しているらしい。


トレア国もルドルフ地方も薬の制作者はソール先生、それを広めた彼の弟子であるイル医師を功労者として感謝し、深く探るのはやめて、国や領の史実に残すに留めた。


そんな中でわたしは、放熱病の話が出始めてから、母やメイリンの行動や日程を確認する日々。

━━そうしてわたしは、八歳になった。







お疲れさまでした。

これで七歳編は終了です。


ここまで伏線張って盛大に引っ張った割に、文章力なく活かせず、しょぼい内容に……グダグダですみません。


番外編挟んで、母死亡!?の八歳編をさらりと流していきたいです。来月載せられるように頑張ります…

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