12, 6才 ⑦
シリアス(?)の回、終了です。
一万五千字近いです。
ケイトス視点 → リフィ → ケイトスです。
多少修正しましたが、内容に変更はありません。
・・・ *** ・・・ (ケイ)
城の回廊を歩きながら、青と赤の空が混じり合う綺麗な様子を僕は窓越しに見ていた。
少し先にはこの国の第一王子と、その友達という名の側近候補の一団。その後に王子と従兄弟であり、現宰相の息子であるイナル・エンデルトが続き、少し遅れて僕が歩いてついていく。
どうしてこんなことになっているのか。ため息を禁じ得ない。
今日は王妃様が主催のお茶会があった。
王子たちと交流する一環である勉強や魔法訓練に参加しなくていい権利をもぎ取ったのに、お茶会やら訓練視察やら、王子たちとの訓練に参加しなくていいから、指導して見てほしいとか、王様と周囲の思惑があるのか、あの手この手で、スピネル第一王子と僕を関わらせようとしてくる。
今日も今日とて、ようやくお茶会から解放されると安堵したのに、王子と皆から僕への誕生日プレゼントを用意したから受け取ってほしいと、適度に人のいる前で言われたら断れない。
そのせいで、お茶会が終わった午後五時半過ぎに、王子とその取り巻きの後に続いて、廊下を歩いていた。
……誰が王子に入れ知恵したのかな。気弱そうな取り巻きの伯爵子息がさっと目を逸らしたから、ちょっと後で釘を指しておこうと決めた。
現実逃避ぎみに窓の外を見ながら思うのは、この頃会っていない従兄弟のこと。
出会った当初は仲良くなる名目で頻繁に会ったし、誕生日を祝った。けれど、サンルテアの動向を窺っている城の重鎮たちに、僕が気にしている存在だとリフィを知られるのは好ましくない。
調べられて、どこから従兄弟の能力の高さと貴重さが露見するかわからないから尚更だ。
僕が公式に門から馬車でリフィを訪ねたのは、会ってから誕生日までの一週間。その後は週二、週一と減らしていった。
実際は移動魔法で頻繁に訪ねていて、早朝訓練をしたり、勉強したり、町に出て遊んだり、会わない日は殆どないけど。
会わない日は殆どなかったのに、この一週間は僕の任務や誕生日にお茶会、リフィの用事が重なって会えていなかった。
ただ、僕の誕生日前にアッシュから土の下級精霊を通して、「リフィの様子が落ち着かない」と連絡があったことが気になっていた。だから、お茶会の後に連絡を取って明日の訓練とか遊びに誘いたかったのに━━早く用事を終わらせよう。
そう思って、窓から視線を離そうとしたら、声がした。
「……すみません、殿下。少し失礼いたします」
僕は上げ下げ窓を開けて、そこから外に跳び出した。イナルや王子たちが驚いていたけど、放っておく。僕は「ケイトス様」と呼ぶ土の上級精霊ノーム駆け寄った。黒ウサギ姿のノームは赤い目に僕を映して、ほっとしたようにアッシュからの伝言を話し始めた。
聞いた話に僕は顔を顰めた。
父親の訃報を聞いた従兄弟が転移魔法を使って、館から去ってしまったらしい。それもアッシュを残して一人で。
転移魔法は苦手って、町に行けるくらいだと言っていたから、ジャックが急いで港町に向かう馬車を押さえたのに、リフィはいなかった。アッシュが探ると、マリーナにいると土の下級精霊から報告があったが、リフィに内緒にと言われてしまったのか、それ以上は何も教えてくれないらしい。━━次代の土の精霊王の命令でも口止めできるって、君、どれだけ精霊に好かれてるの、リフィ…。妙なところで脱力したよ。
「報せてくれてありがとう、ノーム。悪いけど、このままお父様にも報告して貰える? 僕は先に後を追うから」
「畏まりました。アッシュ様は先に追いかけられています。ケイトス様、リフィ様のことお願いします」
ぴょこんと頭を下げて、ノームがその場から消えた。
僕は焦燥感を隠し、息を一つ吐いて表情を取り繕った。様子を窺う殿下とイナルの元に戻り、窓越しに急用が出来たこと、直ぐにこの場を辞去する旨を伝えた。
王子の取り巻きたちが目を三角にして、口々に罵る。それを無視して、僕は困惑顔のスピネル王子を一瞥して、その横にいる親友のイナルに目を向けた。イナルがじっとこちらを見て、一つ頷いた。「後で説明してくれますよね?」と言われたけど、リフィのことを教えたくないから「気が向いたらね」と返しておいた。イナルが苦笑する。
僕は王子に黙礼して、窓に背を向けると風の上級精霊ウィンを召喚した。
白金の柔らかな羽に黄色い嘴。両翼を広げると二メートルになる。極彩色の尾羽がひらひら揺れ、ウィンは橙の瞳で僕を見ると用件を聞いてきた。
周囲に聞こえない声で、「リフィのいる港町マリーナに行く」と告げると、ウィンが「精霊たちがざわついているから、あれを宥めろ」と風を僕に送ってきた。「もちろん」と僕は笑って返して「けれどその為には協力してくれるよね?」
僕はにっこり笑って、転移魔法を起動した。ウィンが震えたけど、逃がさないよ。
空はすっかり夕焼け色から宵闇へと移り変わりかけていた。
・・・ *** ・・・ (リフィ)
赤い夕焼け空に、逆光で黒い一組の男女のシルエットが浮かび上がる。潮風が吹いて、わたしの髪を遊んで駆け抜けていった。
わたしは見つかってしまった驚愕と恐怖に固まる父とその秘書をぼんやり見ながら、何の感情も浮かんでこなかった。
ただ頭の中が真っ白で、心はざわめきながら黒く黒く塗り潰されていく。その内、全部真っ黒に染まって醜くなりそうな気がして、それはやだなと思った。何も考えていなかったはずなのに、視界が歪んできて、無意識に悲しさを感じているのか、怒りを感じているのか、よくわからなかった。
徐々に頭が痛くなってきて、気絶してしまいたかった。
茫然自失のわたしより先に父が我に返り、組んでいるアイリーンの手を離して、わたしに駆け寄ってきた。いつものように抱き上げて、わたしの背をあやすように撫でながら暫く歩いて、気がつくとわたしは、大通りから一つずれた通りの宿の一室に、父とアイリーンと向かい合うように、ソファーに座っていた。
父の隣でアイリーンが不満顔で俯き、時折わたしを目障りだと睨んでは視線を下に向けた。父は当惑顔でどう話そうか迷っているらしく、眉尻を下げた情けない顔になっている。それすらも記憶の大好きな父と重なって、胸が苦しい。
「……まずはよく、ここがわかったね。たしか今頃、館の方に遺品と訃報が届いているはずだけど、きみはそれを知った上でここに来たんだろう?」
その一言は、わたしを突き落とすのに十分だった。
なんで、そう口にしたはずなのに声にはならなくて、わたしの顔を見ていた父が困ったように、泣きそうに笑った。
その表情にじくじくと胸が痛み出す。
「……きみがぼくを見て、安心したように笑ったから。だから、訃報を聞いて駆けつけたんだと思ったんだ。……正直とても驚いたけど嬉しかったよ」
「…そ、それなら、帰ろう。……わた、わたしが治療したことにして、商談がうまくいかなくても、大丈夫…。お母様が社交してツテを作って、宣伝してくれているし、わたしもギルドの依頼をしてお金を貯めてあるよ。新商品も、もうすぐ販売出来るから…っ」
声が震えそうになって、ぐっと唾を飲み込んだ。落ち着けと言い聞かせて、ゆっくり深呼吸を繰り返すけど、心臓はバクバクドクドクうるさい。
まだ誤魔化せる。━━優しい母のおっとり笑顔を思い浮かべなからズル賢く計算して、チクチク痛む胸を見ないふりして、元に戻って家族三人で過ごす情景を、幻想にすがるように思い浮かべた。
だが、どれだけ待っても言葉は返らず、心が黒い海に沈んで行く。返事がないことが、答えだった。
顔に熱が上って暑くて、頭痛も増してきた。興奮しているからか、体温も上がって汗ばんできている。じわりと滲みそうになる涙を堪えて俯いた。妙なプライドが顔を覗かせ、見られたくないと強く気にしていた。
それでもこれ以上、取り繕うのが無理になり、わたしは肩で荒く呼吸をし、相手にそれが聞かれるのを悔しく思いながら、涙と震えと悲しみと怒りとやるせなさと絶望に似た黒い色んな感情を必死に呑み込んだ。
それが喉や胸の奥につかえて、どうしようもないほど余計に痛くて息苦しくて。両の手をぐっと握り締めては、何度も呑み下そうと、嗚咽にならないよう深呼吸をしながら、喉を嚥下した。
冷静に、冷静にと、暗示をかけるように言い聞かせる。━━わたしは、大人。大丈夫、受け止められる!
そうしてようやく、父……エアルドの話を聞くことができた。
商会の運営がうまくいかず嫌気がさして落ち込む毎日の中、側で献身的に支えて優しくしてくれたアイリーンに感謝し、好ましく思っている内に、関係をもったこと。
母もわたしも家族として愛しているけれど、アイリーンも大切であること。裏切ったことが心苦しくてもう耐えられず、限界だったこと。それでアイリーンとの関係と商会運営に力を貸してくれた、副商会長であり友人のクラウスが今回の計画を立てて、アイリーンも賛同して、実行に移したこと。━━死亡したことにして商会の財産の内、半分を貰って隣国へ渡って心機一転、アイリーンと二人で新しく生活を始めるつもりだったこと。明日の朝一に隣国行きの船に乗る予定であること。
「……そう」
全てを聞いて、知って、わたしが返したのはそれだけだった。自分でも聞いたことのない感情のない声。
動揺しまくっていたのに、いざとなると何もかも突き抜けて、凍てついて心も顔も冷徹、頭は極めて冷静だった。
わたしとは対照的に驚いたのは目の前の二人の方で。それを見て、ナニを今更と鼻で嗤ってしまった。
「つまり、色々と疲れたあなたは愛人に逃げ、妻子どころか国すら騙して商会のお金を盗み取り、隣国に高飛びするのですね」
身も蓋もない言い方だけど、簡潔にまとめるとそういうことだよね。いくら綺麗な言葉で取り繕っても、傷つき疲れた顔で相思相愛風に見つめ合っても、こちらからしたら、ナニ寝言言ってやがる、この泥棒色ボケどもが! だよ。
はん、と嗤ってやると、どうやら口していたらしく、二人が衝撃を受けていた。わたしがこの裏切り者二人の前で、泣くわけがないのに。
イイトシした大人に冷たく怒る六歳児。我ながら、シュールな光景を作ってるなぁ。言葉遣いもかなり悪くなっている自覚はあります! けれど、そんなの気にしちゃいられねぇっすわ。マジふざけんな、コイツら!! 淑女なんて知るかっ!!
我に返ったアイリーンがきっとわたしを睨んで言い返す。
「ナニを言っているのよ! 旦那様はあなたたちの生活のために働いて、毎回ドレスを新調しているあなたたちと違って自分のためには浪費しない方だったもの、このくらいの給金は貰って然るべきだわ!」
「見当違いも甚だしい。この二、三年はわたしもお母様もドレスを新調してないよ。どれもちょっと手直ししたり、リメイクしたり、メイリンやお母様が型から作ってくれたものだけど、それが何か? むしろ、多くの人に会う夫のためにと、その人の服だけを新調してたよ…」
全部事実だよ。お母様を貶すのなら、わたしを倒してからにしてもらおうか! 本当になんて失礼な! あの素敵お母様を侮辱するなんて。━━なんで、どうして! ……この人がお母様を差し置いて選ばれたの…っ!?
どうしてもどす黒い怒りと恨みと殺意が、この人がいなければという思いが抑えられずに、溢れてくる。それを感じ取ったのか、アイリーンが青ざめて怯えた。それをエアルドが震えながらも背に庇う。……わたしが悪役デスカ。
「やめなさい、リフィ。全て弱くて不甲斐ないぼくが悪かったんだ。アイリーンのお腹には子供がいるんだよ」
「っ!?」
わたしはあまりの衝撃に、言葉が出なかった。
たくさん、言いたいことがあるのに。怒っているのに、出てきたのは涙だけ。ただ涙を流して、言葉にならずに今度こそ嗚咽が漏れて。━━さっきまで悲しみを怒りに変えて、必死に取り繕っていた矜持が、崩れ去ってしまった。
━━こんなのってアリ?
わたしが勝手にやっていたことだけど、事故で亡くなる父を救おうとボロボロになるまで追い詰められて、死に物狂いでした努力は、身につけた力は無意味で……。
怒り狂いたいのに、八つ当たりして罵って詰りたいのに、この男は娘━━わたしを愛していると言った通り、今も慈愛に満ちた辛そうな顔と悲哀の目をしているから。
━━なんなの、コレは?
わたしは涙を止められず、それでもこの二人に惨めな姿を見せたくなくて、俯いて唇を噛み、きつくきつく掌を握った。
エアルドは何か言いたそうにしていたけど、結局「愛してる、すまない」とだけ。━━なんなの、それは…。
堪えきれず、爆発した。
「そんな言葉が聞きたいんじゃないっ!! なんなの!? 置いていくなら、愛してるなんて言わないで!! わたしもお母様も捨てると勝手に決めて、勝手に消えようとしたくせに!!」
自分でも驚くくらい大きな声だった。
感情が高ぶって、抑えられなくて、魔力が溢れ出て、室内にごうっと風か吹き荒れた。
「悩んで苦しんでいるのならっ、わたしやお母様に相談して欲しかった! わたしもお母様も力になりたかったのに! 全部一人で決めて━━大っキライ!! もう勝手に逃げて、死んだことにでも何でもすればいいっ!」
感情の高ぶりのままに叫んで、魔力の風が室内を荒らして、わたしは部屋を出て、宿も飛び出した。
あの場にいたくなかった。もう限界だった。二人の前にいる自分がどんどん邪魔者になっていると感じた。エアルドがアイリーンを背に庇う姿を見せられて、悪者になった気がして、惨めになって。━━もう何も見たくなかったし、聞きたくなかった。
どう走ったのかは覚えていなかった。次々と溢れる涙を乾かすように目茶苦茶に知らない港町をあちこち走って。空が宵闇に変わっていることにも気づかずに疲れるまで、ひたすら走って。
何度か誰かに呼ばれた気がしたけど、止まれなくて。
手足が震え、喉はからからで声も出なくて、もう一歩も動けなくなって、ようやく我に返った。
どこだかわからない暗い静かな路地裏で、わたしは崩れるように踞り、荒い自分の呼吸音と、バクバク暴れる心音を聞いていた。
どのくらいそうしていたのか、すぐ近くで足音がして顔をあげると、知らない男がいて、声を出す前に手で口を塞がれた。そのまま男の横に抱えられる。人拐いという突然の事態にパニックになり、わたしはじたばた手足を動かして暴れた。━━ナニコレ、怖い!
「ぅぐっ」
恐慌状態に陥りかけ、恐怖のままに魔力を放出して暴れようとしたら、呻いた男がそのまま倒れて動かなくなる。拘束が緩んだ瞬間、さっと抜け出したので、わたしは巻き込まれて倒れずに済んだ。
人拐いを見ると、体に蔦が巻き付いている。
「リフィ」
掛けられた声に、体が震えた。
ゆっくり振り向くと、灰白色の毛並みの狼に似た犬の姿。耳も尾もピンと立っていて、荒い息を呼吸を繰り返している。
その後ろに小さな人影が、走って現れた。青緑の髪がすっかり乱れた絶世の美少年。
「アッシュ、間に合ったんだね。よかった…」
つい先日、七歳になった従兄弟が、わたしを見て安堵した。
わたしも二人の姿を見て安心して、けれど戸惑いも大きくて、近づいてくる二人を困惑しながら見やると、ケイに手を掴まれた。
「話は後で。とりあえず、ここを早く離れよう」
手を引かれるままに早足で歩き、わたしの後をアッシュが辺りを警戒しながら、ついてくる。
考えなくちゃいけないのに、色々と事情説明というか、誤魔化して上手いこと言わないといけないのに……。でも何だかもう何もかもがどうでもよくなって虚脱していて、わたしは俯き、動く自分の足を見ていた。
喧騒と人の気配と灯りを感じ取り、ぼんやり顔をあげると、大通り近くにきていた。仄かな暖かい光と人のいる雰囲気にほっと息をつく。そこへ、肩で息をしながら走り寄って来た人が一人。アイリーンだった。わたしの体が強張る。
固まったわたしに気づいたケイが、目の前のアイリーンを見て背中に庇うように間に立った。
荒い呼吸を整えながら、アイリーンが肩をすくめた。
「安心して。何もしないわよ。とりあえず、何もなかったようでよかった。……旦那様も心配しているわ」
わたしは唇を噛んで、俯いた。ケイとアッシュの視線を感じたけど、二人は黙って様子を見ることにしたようで、固く口を引き結んでいた。
このままだと二人にも、今回の件が知られてしまう。けれど、うまく事態を回避する方法が思い浮かばず、彼女と二人きりになるのは胸がじくじく痛むから嫌だった。そして少しヤケッパチだった。
「お嬢様、あたくしはあなた方が嫌いだし、とても羨ましいわ」
わたしが眉間に皺を寄せて顔をあげると、アイリーンは寂しそうな、けれど仕方ないと諦めた様子で穏やかに微笑んでいた。
「こんなことを言うのは本当に悔しいし、敗けを認めるみたいで本気で嫌だけど……旦那様が本当に愛しているのは奥様とあなた。最後まであたくしは旦那様の一番になれなかったわ」
嘘だ! そう叫んで否定しようとしたら、アイリーンが苦く自嘲した。
「あなたも聞いたでしょ。旦那様はご自分が悪いと、出来た子供の責任をとろうとしてくださっているだけなのよ」
アイリーンは自分が地方出身で、両親が亡くなり、財産を親戚たちに奪われて放置されたこと。年の離れた体の弱い弟と二人で貧民街を過ごし、どうにか生きてきたこと。
エアルドが本当にお人好しで、誠実な素敵な人で、全うに人として扱ってくれたこと。そんなエアルドにアイリーンがどんどん惹かれて、気持ちを押さえきれずに告白して、何度断られても諦めきれずにいたこと。アイリーンの病弱な弟がいる事情を知って気にかけつつ、高価な弟の薬代のために辞めさせる真似はしなかったこと。
副商会長のクラウスに協力してもらい、強引に無理矢理エアルドと関係をもったこと。それで彼を悩ませ、アイリーンを選んでくれたものの辛そうな様子に耐えられず、今回の計画を立てたこと。
「始めは誰でもよかったのよ。楽して暮らせて弟の面倒も見てくれるなら、愛人になってもよかった。それでお人好しだと言われている旦那様に目をつけて、惚れさせようとしたのに、楽勝と思っていたのに、どんどん深くはまっていったのはあたくしの方だったわ。……だから、お嬢様。恨むのならどうか、あたくしだけを」
アイリーンが穏やかな表情のまま、目を伏せて懺悔するようにその場に跪いた。
「奪ってやろうと思ったわ。本気であたくしが欲しかったのは、旦那様だけ。でも旦那様が気にかけて見ているのは奥様とあなただけだった。振り向かせようと躍起になって、悔しくて奥様を傷つけて、用事を作っては旦那様を仕事に……あたくしの側に縛りつけて繋ぎ止めようと必死だったわ」
結局、虚しくなっただけだったけど止められなかったと、苦く嗤ってアイリーンが嘆息した。そして羨望の眼差しでわたしを見て来た。
「……あたくしに子供ができたことで、旦那様に迫ったのよ。それで今回のようなことになったの。悪いけど、どんなに恨まれても手離さないわ。勝手に決めてと旦那様を責めたけど、あなたたちだって旦那様に何も訊かなかったわ。大丈夫かとも、何かあるのなら言ってとも、側にいてとも言わなかったわ」
「…………」
「旦那様の一番があたくしじゃなくても、あの人の側にいられるのならそれでいいの。あたくしはあたくしと弟の幸せを手離さないわ。だから、恨むのならあたくしを恨んで下さいな」
じっと見つめてくるアイリーンに、何か言いたかった。言ってやりたかったのに、ぐちゃぐちゃだった。考えがまとまらない。アイリーンがどんなに恨まれても自分の幸せを手離さない、と宣言したその気持ちが強く伝わってきた。
わたしだって、そうだよ。
彼女の生い立ちには普通に聞いていれば、同情したと思う。生まれや育った環境はアイリーンのせいじゃないから。
でも、自分の幸せかアイリーンの幸せかだったら、わたしはきっと自分の身を可愛く思うかな。でも、それももう意味がない。もうあの人…エアルドの結論は出てしまったから。
━━もっと一緒にいたかったなぁ。お母様とわたしとお父様の三人で。これからもあの穏やかで幸福な時間がそのまま続くものだと思っていたのに…。
「……自分の幸せのために、リフィたち親子の仲を切り裂いておいて、リフィたちも悪いとあなたが責めるのはおかしいんじゃないの?」
静かなケイの声がして、わたしは項垂れていた頭をあげて、従兄弟の小さな背中を見た。
今更ながら、子供にこんな話を聞かせてよかった!?
わたしは焦った。アッシュもまだ子供なのに、二人に生々しくどろどろと醜い家庭の事情を聞かせて……いや、わたしも子供だけど…えーと、……。ああ、もうっ!!
混乱しているけど、このままじゃ駄目だ! しっかりしろ、わたし! ……もう、どれだけ思っても、言葉を尽くしても、あの人は戻ってこないし、修復は不可能になっているのだから。
どんなに弱くて情けない姿でも、あの人が決めたら簡単に覆さないことは、わたしもよく知っているのだから。
目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をした。
眼裏に、かつての幸せだった情景と笑顔が思い浮かび、また出そうになる涙を堪える。奥歯を噛んで、それを断ち切るように目を開けた。━━勝手に決めてごめんなさい、お母様…。
「……父とあなたはもう故人です。あのお金は手切れ金ですから。今後一切、わたしたちには関わらないで下さい。お葬式の用意があるのでこれで失礼します」
アイリーンが目を見開き、泣きそうな顔になって、深く頭を下げた。こんなところで土下座はやめてほしい。この辺にはわたしたちだけだけど、遠くに人がいるから。
アッシュと視線を合わせ、ケイの手を引いて立ち去ろうとしたわたしに、アイリーンから声がかかった。
「……信じられないかもしれないけど、あなたと…奥様の周り……身内には気をつけて。旦那様の友人であり、共に商会を立ち上げた副商会長のクラウスは、ギャンブルにはまってお店のお金を横領しているわよ。その弱味を握って、あいつには旦那様との仲を取り持つように仕向けたのだから。それに……いえ、何でもないわ。━━さようなら。もう二度と会わないわ」
アイリーンが立ち上がり、埃を払って一礼すると、そのまま振り返ることなく、歩き去っていった。それをケイがじっと見ていたけど、わたしに背を向けている従兄弟が、どんな表情をしているかはわからなかった。
とにかく、これでもう二人に会うことはないね。そう思うと、わたしも限界で涙が溢れた。
あの二人に怒りがあった。裏切られたと傷ついた。けれど何よりも一番強く感じたのは、悲しみだった。
父が大好きで、母も大好きで、二人が一緒にいるところも、そこに自分も加わって三人でいることが一番大好きで、幸せな時間だった。
そんなささやかな一時を守りかったのに、全部無意味になった。予兆はあったのに、もっと早くに気づけていれば、父と母の間を取り持つことだって出来たかもしれないのに、守れなかった。
大声で盛大に泣きわめくわたしを、ケイが大通りからそっと離れて、古びたベンチに座らせた。泣き止まずにひたすら顔を赤くして発散させるわたしの両隣にアッシュとケイが座り、二人は静かに側にいて慰めてくれた。
散々泣いて疲れて、目をしょぼしょぼさせて眠くなったわたしに、ケイが「帰ろう」と手を差し出した。
わたしはその手を握って、安堵した。ここで眠らないように、まだ色々と話すこともやることもあるから頑張ろうとしたけど、膝の上に頭をのせたアッシュの温かい体温と、ケイの頭を撫でる手が心地よくて、余計に眠くなる。
「寝ていいよ、僕とアッシュが連れ帰るから」
その優しい声に甘えそうになる。うんと頷いて意識を手放しかけて、これだけは言っておかなくてはと、口を動かした。
「今日のこと、二人は忘れて……。誰にも言わないで」
ケイの撫でる手が少し止まって、息を呑んだ気配がした。珍しいとうっすら目を開けると、眉間に皺を寄せて苦い顔をしたこれはまたレアな従兄弟の表情。
「……どうして?」
「わたしが動かなければ、事故死として処理されて終わることだったの。勝手だけど、お母様は望まないかもしれないけど、裏切ったあの人にお母様が今後も傷つく必要なんてない。あの人は事故死。それでいいの」
もしかしたら母は薄々気づいているかもしれないけど、わざわざ教える必要はないよね。だから、内緒にしてと二人にお願いした。
アッシュが「……お前がそれでいいのなら」と、慰めるようにわたしの手に頭を擦り付けた。暖かくてもふもふ。癒される…。
ちらりとケイを見上げると、口をへの字にしていた。目が合うと吐息して、呆れたように苦笑した。
「当事者のリフィにお願いされちゃ、仕方ないね。本当は不満だけど」
ケイが不満というよりも不安そうに瞳を翳らせた。一瞬の瞬きでそれはすぐに隠されたけど、見間違い…?
「眠って」
ケイに促されて、眠気が一気に襲ってきた。わたしは伝えることは伝えたと意識を手放し、ふと、お礼がまだだった気がして、「ごめんね。二人ともありがとう」と口を動かしたけど、きちんと言えたかはわからない。明日改めて言おうと決めて、今はただ眠ろうと今度こそ意識を手放した。
・・・ *** ・・・ (ケイ)
眠り際に「ごめんね。二人ともありがとう」と呟く従兄弟に、僕は苦笑した。ベンチに座った状態で傾いだ体をそのまま僕の膝に倒して、頭をのせた。顔にかかる髪を撫でるようによかせる。泣いて腫れた目蓋に赤い顔が痛々しい。
リフィを見つけたことは、既に伯母様やお父様、クーガにも風魔法で伝言を送ってあった。落ち着かせて、宥めてから帰ると言ってあるが、きっと全員やきもきして心配しているんだろうなと思う。
懐の内ポケットから、リフィに貰った懐中時計を取り出して時間を確認すると、午後七時半過ぎ。暗くなった空には星が瞬き始めている。連れて帰ろうと思うけど、このまま連れ帰っても大丈夫か、と思うと不安だった。
リフィの行動と、彼女と死亡したことになる二人のやり取りは知っていた。アッシュと二人でウィンが知らせてくる様子を見ていたから。まさか、こんな事態になっているなんて……。
リフィの指示で下級精霊たちは、僕とアッシュに知らせることを困ったように、けれど頑なによしとしなかった。知性はあまりなく、ぼんやりとした辺りに漂う意識の存在である下級精霊たちをすっかり掌握している従兄弟。
毎回驚かされるけど、本当に高い能力を持っているよね…。
この港町にはアッシュの方が先に到着していた。けれど、教えてくれない下級精霊に頼らずに、自分の鼻でリフィを追い、見つけたときには面識のあったリフィの父親が、彼女を抱えて宿へと歩いていた。アッシュ自身、ついさっき訃報を聞いた相手が生きていることに困惑したものの、その後を追って宿の屋上で僕を待ちつつ話を聞いていたようだ。
その頃の僕は伯父…エアルドとリフィの再会の様子を見聞きしつつ、ウィンに力を貸して貰って初めての長距離移動にごっそり気力に体力、魔力を持っていかれ、すぐに動けず港の灯台で回復を待っていた。とりあえず、従兄弟が無事なことに安堵したよ。
一度マリーナに訪れたことがあり、精霊王との契約のお陰か、僕の魔力は大体三分の一を消費で済み、貰った懐中時計の効果か諸々鍛えていた成果か、三分程で体調も通常に戻った。
魔法で下級精霊の目を借りてアッシュを一分とかからず見つけて、すぐにそこに転移した。万全じゃないからくらっと目眩がしたよ。その間もリフィのやり取りは聞いていて、盗み聞くことに罪悪感はあったけど、知らなくちゃ動けないからね。後はリフィなら何てことなさそうに隠すと思ったから。
アッシュと合流してからは、二人で部屋に乗り込んで今すぐリフィの耳を塞いで連れ帰りたくなったよ。
時々そう見えないときもあるけど六歳の女の子に、この大人たちはナニを言ってるのかな。自分の耳を疑ったし、不安げなリフィが泣くのを必死に堪えて怒ったのも全部、知っていたから余計に腹が立った。けれどその一方で、もしかしてと嫌な予感に胸がざわついた。
僕は転移魔法で疲れていた体に鞭打って、風魔法で伝言を伝えた。父と伯母様やクーガたちに、リフィを見つけたこと、興奮しているから落ち着かせて帰ることだけを伝えた。他にどう言っていいのかわからなかった。ついでにこの町に配属している『影』にも連絡を取っておいた。そこでやっと少しだけ肩から力を抜いた。
アッシュも僕と同様に長距離の移動に疲れていたようだったから、帰るにしたって魔力が回復しないと難しい。あと二度なら何とか発動できるけど、リフィも一緒となるとギリギリで、アッシュと力を合わせないときつかった。
そう考えると、知らない場所に移動してこられたリフィは本当に凄い。ちょっと後でどういうことか確認しておこう。━━確か神殿の報告では、魔力保有量は僕が今のところ一番だったはず。それなのに、いくら精霊王たちに力を借りたとはいえ、この町まで転移して普通にしていられるなんて…薄々思っていたけど、僕よりも多い?
そうしてアッシュと屋上で体を休めながら様子を窺っている内に、とんでもない事実がエアルドの口から出てきて、その衝撃内容に唖然と僕とアッシュが固まっている内に、リフィは感情を爆発させて宿を出ていってしまった。
慌てて追いかけて、アッシュと二人で何度も呼び止めたけど、気づかないのか、もう何も聞きたくなかったのか、従兄弟の姿はすぐに見えなくなった。
アッシュも僕もまだ本調子じゃなくて、体力も魔力も僕よりまだ回復していたアッシュに先に行ってもらった。
見つけたときは人拐いに肝を冷やしたから、間に合って本当に良かったよ。ついでに『影』も来たから、後始末を任せてリフィをつれて離れた。色々と聞きたいことがあっても、そんな状況じゃないことはわかっていたから、一先ず連れ帰ろうと考えていたら、アイリーンが現れた。
勝手な彼女の言い分に腹を立てながら、僕は口を出すべきじゃないと黙っていた。最後にどうしても我慢できなくて口を出したけど。でも、リフィは呑み込んだ。赦した訳じゃないだろう。だって諦めた顔をしていた。もうどうにもならないと、これまでの二人との会話から結論を出して、どうするのが一番収まりどころがいいのか考えたんだとわかった。死の偽装は国を騙す罪に問われかねないからね。
そして、アイリーンの言いたいことや忠告めいた内容に、僕ははっとさせられた。彼女は僕を何度か見てきて、反応を窺っているようだった。当たってほしくはないけど、それならリフィの家で出会った当初の僕と父への反応も納得がいく。━━帰ったら、調べてみよう…。どこまでできるかわからないけど。
そんなことを考えていたら、ぼろぼろと従兄弟が盛大に泣き出したので、慌てて宥めた。ずっと我慢していたのだろう。だから気の済むまで、そのまま泣かせておいた。
泣き止んだので「帰ろう」と促せば、僕の手を握って。眠るようすすめたら「今日のこと、二人は忘れて……。誰にも言わないで」と言われて、驚いた。━━っ、だってそれじゃ…リフィだけが誰にも言えず苦しむだけ…。
うっすら目を開けたリフィと目が合った。きっと僕は困惑した苦い表情をしているに違いない。リフィの考えはわかったけど、納得がいかなくて「……どうして?」と疑問を口にしていた。
それに対する答えは、やっぱり予想通りだった。一番丸く収まる穏やかな解決方法。
あの二人を事故で亡くなったことにすれば、伯母様は傷つかずに済む。社交界の華と謳われた貴族の人が、愛人に負けた、旦那に裏切られたのだと、貴族を含めた周りから囁かれ後ろ指を指されずに済む。事故死なら伯母様の心も世間体も傷つかない。
伯母様の実家━━僕のサンルテア男爵家も祖父のドラヴェイ伯爵家も家名に傷がつかず、それどころか事故による保険金が入れば、商会の役に立ち、周囲も同情的だ。おまけにあの二人も遠慮なく自由になれる。……知っているリフィが事実に蓋をすれば。
伯母様も、ジャックも、メイリンも、下手したら僕たちすらもリフィが傷ついていることに気づかずにいた可能性もある。
そして生存がバレたとしても、責められるのは事情を知らない伯母様やジャックたちじゃなくてリフィだけ。
アッシュが「……お前がそれでいいのなら」と、慰めるようにリフィの手に頭を擦り付けた。
ちらりと僕を見上げるリフィ。僕は不貞腐れたように口をへの字にしていた。子供っぽいってわかってるよ。けど、納得がいかなくて、モヤモヤするんだから仕方ない。でも真っ直ぐな星色の目が合うと、この従兄弟の為なら仕方ないと思ってしまう。吐息して、呆れたように苦笑した。
「当事者のリフィにお願いされちゃ、仕方ないね。本当は不満だけど」
もし、僕の考えが正しければ……リフィはどうするんだろう。不安に思うけど、確証は何もない。勘違いであってほしいと思う。
泣き腫らした顔で眠るリフィの頭を撫でて、僕は魔力が大体回復したのを感じた。これなら、リフィを連れてムーンローザの家に帰られる。
「アッシュ、ありがとう。君が居てくれて良かった」
「いや、もっと近くで見ていればよかった…。お前が来てくれて助かったぞ、ケイ」
お座りした姿のアッシュがリフィの顔を見て、悲しげな顔になる。座った状態でベンチの座面より顔が出ているのを見て、初めて会ったときより大きくなったと感じた。
そんな大人びたアッシュが嘆息した。
「本当にこいつは、いきなり突拍子もないことをやらかすからなぁ。本人は冷静なつもりだろーが、バタバタしていつの間にか動いているみたいだ」
「ああ、うん。すごくよくわかる。お陰でいつも驚かされて、周りが…僕たちがハラハラしてるんだよね」
「その通りだ。……こいつ、報せが届く前から落ち込んでた。それと嫌な匂いがした。時々、商会のおつかいで来るカールとかいう奴の匂い。オレ、あいつ嫌いだ!」
「それは僕もだけど……」
鼻の頭に皺を寄せて牙を剥くアッシュ。ここまで嫌悪を露にするのも珍しい。
「あいつ、いちいちリフィの視界に入って、色々と嫌味を言ってくるんだ。リフィがぐっと耐えたり、その目が自分に向いてるのを喜んでいる変態だ! 気色悪い!」
「……ふぅん。そうなんだ?」
「………」
あれ、僕は笑っているはずなのにアッシュが下がったのは何でかな?
それにしても、リフィに会った初日の時以来あの元従僕に会っていなかったし、辞めたからもう関わりないと思っていたのに。そんな変態が周りにいたなんて…。
それに今日の昼に会ったみたいってことは、そいつに何か言われて落ち込んで、アッシュのもふもふを堪能して癒されたってとこかな。でもおかしいね。リフィが今日、外出したという報告は受けてないし、館を訪問したのは通いの使用人たちと訃報を知らせた郵便屋だけのはずなのに、そいつとはいつ会ったんだろう?
「本当にリフィには驚かされるよね?」
「……そうだな」
「ところでアッシュ、君はリフィが普段どこで何をしていたのか本当は知っているとか?」
ぶんぶんとアッシュが頭を横に振った。
「……リフィは……一人で抱え込むところがあるみたいだからな。好きにさせとくしかないだろ」
「………そうだね」
こればかりはリフィに話してもらうしかない。突っ込みすぎて変な方向に暴走される方が怖いから。
「でも、今回の移動と外出の件は問い質してもいいような気がするんだ。そう思わない?」
にっこり笑って問いかけたら、アッシュが下がってこくこく頷いた。
「さて、帰ろうか。伯母様やお父様たちが色々と聞いてくると思うけど」
「リフィの要望通り、余計なことは言わないでおく」
二人で頷きあってリフィをおんぶすると、僕は移動魔法を発動させた。アッシュがそれに便乗して自分の移動分の魔力をくれた。
一瞬後には、見慣れたムーンローザ家の玄関ホールに立っていた。魔法の気配を感じたのか、リビングからはお父様と伯母様やジャック、メイリンが勢いよく出てきて、僕たちの姿を見て一様に安堵の表情を浮かべた。
駆け寄ってくる四人を見て、僕は微笑む。
今日はまた大変な一日だったけど、無事に終われそうだ。
とりあえず、尋問はリフィが起きてからするとして、まずはこの百戦錬磨な大人たちを従兄弟の要望通り、どうにかして誤魔化さなくちゃ。
僕も疲れたし、明日は王子たちやイナルが、急に退城した件についてしつこく問い合わせてきそうだから、一先ずここに泊まっていこうかな。
お父様たちには悪いけど、詳しい話は明日ってことにして、今日は乗り切ろう。
僕一人が質問攻めにあうのは割りに合わないよね。ここは従兄弟も巻き込んでおくべきだと思うから、明日、起きたらリフィと対策練ろう。
僕は眠るリフィをジャックに渡しながら、一つあくびをした。
テンション低いとなかなか進みませんね。お疲れさまでした。
あと一話で六歳編終わって、番外編挟んで七歳に入る予定です。希望的観測なので、未定です。
番外編は誰にしようか、なしで次に進むかまだ考え中です。
恐らく次回、ケイの尋問の回ですね。天使の笑顔と淑女の微笑みの無言対決になりそうですが。まだ謎です。
それでは、お付き合い下さり、ありがとうございました!