7, 6才 ②
誤字脱字修正しました。
番外編割り込みのため、多少加筆しましたが、内容に変更はありません
副正神殿長の後ろをついて歩き、わたしは近くの誰もいない部屋に足を踏み入れた。
一応、風魔法で罠や他の人がいないか軽く確かめる。大丈夫みたい。ここには正真正銘、二人だけで閉じ込められたりする罠もなし。他で盗み聞きされる心配もなく、それでも念のために風魔法で部屋の外に音が漏れない結界魔法をかけた。
……うぅ、緊張する。子供だからと舐められないように、侮られないようにして交渉しなくちゃ。
まずは深呼吸。す~は~。よし、少しは落ち着いたかな。
すすめられたソファーに座って、木製のローテーブルを挟んで一人がけの椅子に座る副正神殿長のルワンダさんと正面から相対する。
……怖いよ。子供に向ける顔じゃないよ。何だろうこの、捕獲される一歩手前みたいな感じ。わたし、食べてもオイシクナイデスヨ。
でも負けないよう、じっと焦げ茶色の三白眼を見返す。お互いに無言で見合っていると、先に逸らしたのはルワンダさん。よっしゃ、勝った!!
小さく拳を握ると、正面からは疲れたような吐息。
「リフィーユ嬢、それで取引とは?」
はっ、そうだった! わたしの目的はにらめっこじゃなくて取引だった! でも、どう切り出したものかな。考えていたけど、すっぱり忘れてしまった。やっぱりここは、「本日はお日柄もよく~」の口上から始めるべき? う~む…。……まぁわたし変化球苦手だし、ここは全部全力の直球勝負でいこう!
まずは疑問に思ったことから。
口を開きかけて、にっこり微笑む母が思い浮かんだ。出かかった「何で話聞いてくれる気になったの?」という声も寸でで止める。━━あ、っぶなかったー!! ここは淑女らしく優雅に上品にだよ。始めから子供らしく無邪気に問いかけてもいいけど、バレたらお母様に淑女教育が足りなかったのねなんて言われる! 落ち着け、わたし!!
「……まずは、貴重なお時間をいただきまして誠にありがとうございます。わたしの言葉を戯れ言と一蹴することなく、このように配慮していただいて感謝します」
謝意として座礼すると、ルワンダさんが軽く目を丸くして、困惑したように曖昧に頷いた。よし、動揺している今がチャンス!畳み掛けるぞ!
「取引内容としては簡単です。わたしの魔力量を王家にも貴族やその他にも黙っておくこと、場合によっては王家から保護すること、わたしが望んだときは戸籍を融通すること。主にこの三点です。他にも細々としたものがございますが、大きくはそれだけですね」
「なぜそのように、場合によっては王家を敵に回すような真似を我々がする必要が? それでこちらにはどのような利点があるのですか?」
切り返しが早いな。もう立ち直ってるよ。しかもそのギラギラした目はやめてほしい。うー、恐い…。怖いけど、女は度胸! ここで負けてなるものか!!
にらめっこリベンジマッチですね! 受けて立ちましょう!
「ご推察されているとは思いますが、わたしは王家や貴族に極力関わりたくないのです。とにかく必要最低限で済ませて、王族とは一生会わないでいたいくらいなんです」
拳を握って力説するわたしに気圧され、若干身を引く副正神殿長。おぉぅ、つい熱が入ってしまった。この熱い思いが届いているといいな。
「……なぜそこまで…。普通の少女であれば王子さまや貴公子などに憧れるものではありませんか? 商家にとっても上との繋がりは喉から手が出るほどほしいものでしょう」
至極ごもっともな意見ですね。ははっ、憧れですか。ソウデスネ、何も知らなければ無邪気に夢見ていたかもしれませんね。
実際会ったら、厄介なイベント発生のフラグ立ちまくりで、シナリオの強制力でハーレム状態とかになって、婚約者いる他人の恋路を邪魔しまくり、虐められて健気なヒロイン頑張る状態とかになったらマジ面倒くさい。そんな道化やりたくない。喉から手が出るほど欲しいどころか、胃から吐き気しか出てこないから全力でそんな関わり遠慮したいよ。……まぁ、本当にそうなるかはわからないけど、可能性があるのなら潰しておきたい。
わたしが好きだったのは、二次元イケメンキャラとの非現実の恋愛模様で萌えて、にへにへ笑いながら先の展開を傍観者として読むことであって、その立場になりたい願望はとっくに卒業してるよ! たぶん十歳くらいで。ここは開き直って、多少変人でも構わないです!
「詳しいことは話せませんが、とにかく関わりたくないのです。正直に申し上げれば、母方の古い貴族の血筋のお陰かわたしの魔力量はとても多い方だと自負しております。その上、六属性全て使えますし、無属性も持っております」
「━━っ! 全属性持ち、ですと?」
「はい。とても希少で珍しいですよね。魔力量も膨大となれば、間違いなく王家や貴族議会に、重要人物として報告しなければならないほどに」
主人公が学園で攻略対象者たちと、関わるようになるきっかけがまさにそれ。能力の高い重要人物リストにある名前を見て、部下として側近にいたら心強いから。
実際に直接関わる始まりは、入学後の最初の精霊契約の練習時に、膨大な魔力が溢れて上位精霊をたくさん召喚して周囲を驚かせ、更に興味を持たれて監視対象になる。
そうして主人公を注意して見ている内に、気になって仲良くなって惹かれていく展開。そして実は過去に面識があり、ますます入れ込んでいくというパターン。
読んだ漫画では四人の攻略対象者が全員そうだったから、他もその筈。━━っていっても、続き読んでないから対象者は、第一王子と第二王子、宰相の息子と騎士団長の息子━━その四人しか知らないんだけど。
そんなわけで主人公は攻略対象者たちと仲良くなりながら、全属性の魔法を強くして極めていく。━━だから、そのシナリオ壊すためにもわたしは早めに精霊王と契約して魔法をマスターしようとして、魔力の制御も今の内にこなそうとしている。
全属性持ちと驚愕している副正神殿長のルワンダさんに、わたしは話を続けた。考えるのは取り敢えず後にして貰おう。
「取引に応じていただけるのであれば、わたしは個人的にこっそりあなた方正神殿に力を貸すことも吝かではありません。…神殿の頂点にたってまとめている正神殿が、昨今では随分と大神殿におされてその立場が危うくなっているようですね」
ルワンダさんが眉間に皺を寄せた。母との会話はバッチリ聞いてましたから、今さらそんなことないは、わたしに通じませんよ~。
「正神殿を蔑ろにして秩序を乱す大神殿。それを支持して守る王候貴族。そもそも大神殿が約三十年前に建てられたのは、今は亡き先々代王陛下の我が儘でしたよね。そのせいで正神殿が大神殿に見下されて、あわや取って代わられようという危機的状況に陥っています。今の王家も貴族たちも現状を知りつつ見て見ぬふり。それどころか彼らの寄付や大神殿よりの考えのお陰で、ますます正神殿の力が削がれています。それでも王候貴族に義理立てする義務がありますか?」
腕を組み、瞑目して黙考するルワンダさんをわたしは見つめて答えを待った。
話したことは全部事実で、正神殿側が苦々しく思っていることだった。
先々代王、現王の祖父はよく言えば家族愛の強い人だった。だから民のため国のためというよりも、家族のために王をしていた。
王都には元々、正神殿のみで王候貴族と平民が分け隔てなく、地方の神殿と同様にここで魔力測定を行っていた。
だが、家族愛の強い先々代王が平民と一緒なんて、孫に悪影響があったり、暴力を振るわれたりしたらどうするんだと、じじバカを発揮した。
それで王候貴族用にと、建てられたのが大神殿である。
ちょうどその頃から、商人や資産家といった平民の成金が増え始めて、落ちぶれる貴族が跡を絶たなかった。その選民意識が起こした暴走とも言える。
因みにそのバカ王は側近が優秀だったお陰で、国は辛うじて存続していた。実は即位して間もない頃、他国の王に不敬を働き危うく戦争になりかけた逸話があるが、それを回避できたのも重鎮たちのお陰。賢王と良妻賢母の王妃から何故あんなのが生まれたのかと心底不思議がられた。
歪ではあったが、正神殿が頂点なのは変わりなかった。それがここ三十年で徐々に変化した。
神殿を運営するにあたり潤沢な資金源である貴族たちの寄付は全て大神殿に。何かあった際に外部━━多くは魔力測定した自分の関わりがある神殿に協力を求められて応じるのだが、王候貴族と平民ではそもそも魔力量が違うので、優秀な人材も全て大神殿に取られた。
そんな状態が約三十年。自分達の力ではないのに、大神殿側が勘違いをして天狗になるのも無理はない。
「副正神殿長、御身自らわざわざわたしを出迎てくださったのは、わたしの力に期待していたからでしょう?」
魔物討伐などで神殿の騎士以外に、他から力を借りたくても魔法に長けていないどころか魔力の少ない平民では、足手まといだから協力を求められない。大神殿に力を借りるのも癪に障る。
平民でも例外なのは貴族の血筋に連なる者。
「あなた方は現状を憂い悩む段階はとうに過ぎて、激しい怒りを抑えているのですよね。少しでも大神殿に一泡吹かせられる力を欲して、古くから続くサンルテア男爵家の血筋に期待して、お忙しい中、わたしを出迎えてくれたのでしょう?」
「……」
「わたしの実力は誇張していませんよ。実際に、仮契約魔法は全て使えますし、上級精霊を喚べます。契約は今のところある精霊のみですが、契約なしでも精霊王の側近たる各属性の上級精霊が必ず応じてくれます」
動かない副正神殿長にわたしは売り込む。魔法に不安要素はあるしまだまだ未熟だけど、ハッタリでも何でもいいから強気に出た。
ルワンダさんの焦げ茶色の片目が開いて、じろりとわたしを見てきた。……だから怖いって。負けていられないけど!
「契約している精霊は何ですか?」
「地の精霊王です」
「はっ?」
目を丸くするルワンダさん。あ、これなら怖くないかも。二日前にやっと契約結んだばかりだけど、余計なことは言わない。自信たっぷりに微笑んでおく。
「お疑いでしたら、ここに召喚しましょうか? まぁ疑問に思うお気持ちもわかりますが、事実です。それで、わたしと取引しますか?」
「……精霊王の召喚は、結構です。その歳で精霊王の召喚は史上最年少ですが、聡明なあなたなら納得できます。それより、あなたは我々正神殿に力を貸すとおっしゃいましたが、具体的にはどのようにしてどこまで貸していただけるのですか?」
食いついたと、わたしは内心でガッツポーズ。逃げられる前に釣り上げて、ここぞとばかりに捕まえよう! 引き込んでしまえばこちらのもの!!
「具体的に申しますと、正神殿長や副正神殿長が威厳や人気取りなどで奇跡の御業として派手に力を見せつけたいときは、わたしが力を使ってご希望通りに演出します。正神殿が必要としたときは、癒しの力なり魔物退治なり、力をお貸しすることをお約束しましょう。━━但し、わたしを担ぎ上げて正神殿の聖女か御使いの手駒ように扱うのは止めていただきます。またわたし自身に神殿に身を置くことを強制したり、わたしの力を欲して従わせようとするのも無しです。もしそうなったら」
「そうなったときは?」
「取引はやめます。各神殿を潰して壊滅に追い込んだ上で、わたしのこの類稀な力でもって聖女でも巫女でも演じてみせましょうか。そうすれば、実力的に民が頼って信じるのはどちらでしょうか? 上級精霊の召喚もままならない神殿か、全属性を使いこなすわたしでしょうか?」
ここで母直伝の淑女の微笑みを発動! 優雅ににっこり微笑んで━━脅す。胸中は混乱して、心臓はバクバクドキドキ、冷や汗だらだらだけど、笑顔で誤魔化して押しきる!!
硬直していたルワンダさんだけど、はっと我に返って青ざめていた。因みにわたしの心臓も荒れ狂っていて、それでも笑顔を保ったよ。
「王家にバレないように我々に頼んできたのに、そのように目立つ真似をするのですか? 本末転倒では?」
「違います。あなた方がわたしをここに留まらせようとしても、聖女と祭り上げても結局は目立って知れ渡るので、その時はせめて嫌がらせをして追い込もうかなと。それが嫌ならわたしの取引に応じて下さいねというお願いです」
戦々恐々とビクビクする内心を必死に押し隠して、わたしは無邪気に微笑んだ。
「あなた方にとっても悪い取引ではないでしょう?」
「……それでもあなたに連絡を取って力を借りていれば、いずれ周囲に知れ渡るのも時間の問題ではありませんか?」
「大丈夫です。六歳になったのでギルドカードが作れますから。わたしこの後、ギルドに行って登録してくる予定なんです。登録名はフロース・メンシス。わたしの力を借りたいときはギルドでフロース・メンシスに依頼という形で申し込んでください。格安でお引き受けいたします」
ここで必殺の営業スマイル!
ルワンダさんが呆気にとられているけど、気にしな~い。笑顔で押し通せ!!
取引上、無料かとも考えたんだけど、黙っていてもらうだけにしては、わたしの支払う対価が釣り合っていないというか、多い気がするんだよね。
わたしも商人の娘! 自分の能力を安売りしないよ!
ただの口止めと命懸けの魔物退治、内緒にして貰うことと大きな魔法を使うこと。━━うん。面倒くさいわりに、やっぱりわたしが疲れるだけだ。
等価じゃないし、わたしは最悪、魔法で記憶操作してルワンダさんに嘘の証言させて報告書に書かせることもできる。
脅しておいてなんだけど、そもそも元が対等じゃなくて、わたしの気持ち次第でどうとでもなる…はず。でもそれをするのは……魔法で操るのは嫌というか、失敗して廃人にするの恐いし、何かやりたくないんだよね━━なんて自分でもよく分からない言い訳を考えてみるけど、色々言っていてこんがらがってきた!! っていうか、本当にそんなことしたらこわっ!! 自分で自分が恐ろしすぎる!!
もうどうにでもなーれ!
やけっぱちでいると、ルワンダさんが笑い出した。
「そこはただで引き受けてはくれないんですね。でも当然ですかね。あなたの支払いばかりか大きく、対等な取引ではなくなってしまう」
「と、特典なら付けますよ? 例えば、大神殿の依頼は引き受けないとか! 正神殿の依頼を優先的に引き受けるとか!」
「ははっ、それはいいですね」
「えっ!? それじゃあ」
「はい、取引いたしましょう」
ルワンダさんの言葉がじわじわと染み込んできて、あまりの嬉しさに叫びたくなる! ━━そんなことしたら、母に怒られるからやらないけど。
でもでも。
━━やった!! 夢じゃないよね!? どっきりでもないよね!? 取引相手だけど、王家に対抗できる心強い味方が出来た~!
心の中で快哉を叫ぶのはいいよね! 取り敢えず番狂わせ起こせるかもしれない可能性に喜ぶのはアリだよね!!
「ところであなたからの取引条件は、他にありますか? あるなら先におっしゃってください。それと取引の契約書をかわさなければいけませんね」
「わたしの他の条件は、母やわたしたち以外にはこの取引を黙っておくことと、大神殿の関係者をわたしに近づかせないこと」
「それなら別に構いませんが、本当に関わりたくないのですね」
「もちろんです! 因みに契約書は既に作成、わたしのサインも記入済みです。細々とした条件の詳細と違反した場合のペナルティとか、取引条件の追加についてとか色々書いてありますから」
無属性魔法で今お試し中の魔法を使ったポシェットの中から、到底入らない大きさの書類を取り出した。わたし自身どうやって入っていたと思わず突っ込みたくなる。
テーブルに置くとルワンダさんが唖然として、呆れたような困った笑いでわたしを見てきた。……何ですか、苦情は受け付けませんよ。六歳児らしくないと言われても、取引持ちかける段階で自覚してましたよ。鍛えたスルー能力で自分への突っ込みも省きましたが、何か?
「本当に色々と規格外で、とんでもない我々の救世主が現れたものです」
しみじみとそんなことを言われました。えーと、褒めては…いないよね? てか、救世主って嫌な響きだね! おだてても何も出ませんよ?
てっきり悪魔の取引とか罵られる覚悟をして来たのに、半ば脅してもぎ取った取引なのに……なんか変な感じ。あっ、わたしへの新手の嫌がらせ!?
食い入るように見ていると、ルワンダさんはさらさらと流暢にサインした。ふふふ、これで返品不可です。クーリングオフは受け付けません!! ━━なんかわたし、悪徳商売人?
……気のせいかな。まぁ、無事に終わったってことで! 帰ったら、頑張ったご褒美にたくさんもふもふ堪能しようっと!
二部あった五枚に渡る契約書の内、片方をルワンダさんに。もう一部はサインを確認して、再びポシェットにしまう。
母たちの前で契約書を持って見られるのも困るから、ついコレで来ちゃった。
「そのポシェットは」
「企業秘密です。無属性魔法で試しに作った物なので」
そう答えたら何故か感心された。……あげませんよ? この実験がうまくいって商品になったら、購入してください。
ふと、何か引っ掛かりを覚えたけど、この時のわたしはドキドキバクバクの緊張から解放されて、うまくいったということしか頭になくてある人との約束事を忘れていた。
「さて、魔力測定にいきましょうか」
「はい! 測定器は神殿と一部の魔法を学べる学園にしかないんですよね。実物を見るのは初めてです!」
ルワンダさんに続いて部屋を出た。廊下を歩いてそう返したら、ルワンダさんが戸惑ったようにわたしを見て、苦笑した。
「よくご存知で。さすがと申しておきましょう」
「? ありがとうございます?」
「リフィーユ嬢、一つ忠告を。能ある鷹は爪を隠すと言います。あなたのその聡明さは、自分の首を絞めるかもしれません。王家や貴族や変な輩に目をつけられぬように用心なさい」
「……ご忠告痛み入ります。気をつけます」
神妙に頷くと、ルワンダさんに頭を撫でられた。ちょっとビックリしたよ。
その後、すぐに測定の部屋に二人で入って、金に輝く乳白色の水晶玉に魔力を流して測った。今年の最高数値の五倍を叩き出しました~。なんと過去最高数値みたい。ふふふ、実はまだ少し余力があるって言ったら、顔面蒼白のルワンダさんが倒れそうな気がして内緒にした。
ただでさえ、測定器を壊しかけて遠い目をした彼に、追撃を与えるほどわたしは鬼じゃないからね! ……取り敢えず、謝ってはおいたよ。わたしは全力で自分に突っ込んだけどね!
━━本当に、チートかよ!? いや、うん、知ってたけどね! 自分でも少し引いたよ…。はぁ…。
因みに半分くらい差があるけれど、次点はケイでした。━━さすがわたしの天使! もうこれはうちの家系ってことで無理矢理まとめた。
魔力測定の結果はもちろん偽装して、普通の貴族より少し多く魔力がある程度。母たちには全属性適正を告げて貰ったが、神殿の公式記録には土、風、水の三属性のみが記載された。
測定後は母とメイリンのいる保護者控え室に戻って、少しお茶を飲んでから正神殿を出発した。
本来なら真っ直ぐ帰路につくが、以前お願いしていた通り、ギルドの本部に寄ってフロース・メンシスの名前で冒険者の登録した。━━よし、これで仕事の依頼受けて稼げるね! そしてギルドでの販売も可能。
わたしはすっかりご満悦で、上機嫌に馬車で揺られていると、極度の緊張から解放されたこともあり、馬車の振動が心地よくてうとうと微睡んだ。
*・*・*・
気づくと既に自分の家で、見慣れた自室のベッドで寝ていた。
ぼんやりまだ日の高い青空を窓越しに見て、枕元に置かれたポシェットから契約書を取り出して、サインを確めた。━━夢じゃない!! 本当に取引できたんだ!
わたしは両手で拳を作った後、枕を抱き締めて喜びを噛み締めた。
━━これでまた一歩、望む未来に近づいた!!
控えめなノック音に答えると、ケイとアッシュが顔を覗かせた。朝会って以来で、わたしはあまりの嬉しさにベッドからおりて、二人に抱きつく。
二人は訳がわからず困惑していたけれど、わたしが上機嫌なのを見て、苦笑した。
すると、わたしのお腹の虫が騒いだ。
……時が瞬間、止まった気がしたよ。居たたまれなかったデス。
アッシュが遠慮なく笑って、思わず恨めしげにもふもふを見たけど、ケイは「ちょうど昼食が出来たから、呼びに来たんだよ」と頭を撫でてくれた。━━さすがわたしの癒し! アッシュは後でもふもふの刑しよう。
わたしたちは三人で部屋を出て、食堂に向かった。
何だかよく分からないテンションで、自分でも書いていて意味不明になっていきました。(-_-;)
楽しんでいただけたら、幸いです