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有染ブレードファイト

どうもぉ。チョコチョコ更新の双月です。よろしくでぇす。

香蘭に午後のための準備を言いつけてから、さて昼食までの時間をどう過ごそうかと聖堂内を徘徊していると、

シャンッ、パンパンッ

「んぅ?」

締め切られた扉の向こうから、何かを擦るような音と、叩きつけるような乾いた音が聞こえてきた。

「耳慣れない音だな」

それに扉も鍵の無い、ただの引き戸だ。常時開放されているとは少し珍しい。

「ふむ」

覗いてみるか。

鍵が無いってことは、見られて困ることはないってことだ。

「お邪魔しまぁす……」

俺はそう小さく呟きながら、静かに引き戸を開けた。

「ほぅ……」

そこに広がっていた光景は、まさに夢見たテーマパーク!……ではなく。

「道場か」

目測で二十×三十メートルといったところか。領域が丁度半分に分割されており、向かって右側には焦げ茶色の木目がキュートな板の間が


。左側には地続きで板の間が広がっているものの、中央にでんと置かれた巨大なマットがその殆どを覆い尽くしている。

「あっ、終酔先生」

「これはこれは、王子様」

その板の間の方から声をかけてくる少年。彼はこの聖堂に住まう王家のおぼっちゃま―――有染ようらんだったか。

「セヴェガの王子はお父様だ」

そう偉そうな口調で返してくる。細かいことを気にするってことがよりガキに見えることを誰か教えてあげないのだろうか。

どうやら稽古中だったらしく、白い道着に黒いプロテクターを着けている。少し汗臭いが、ロイヤルブラッド特有なのか、あまり嫌な臭い


ではない。

「お邪魔でしたかね?有染様」

「いや、丁度休憩だ」

彼が振り返るのに合わせて、部屋の奥に視線を移す。すると彼の指導係らしい壮年の男性が歩み寄ってきていた。

「いらしたのですか、終酔先生。お噂は兼ね兼ね」

肩の位置が一定で、安定した摺り足。手に持った細い金属製らしき棒。

「細剣道ですか」

「はい。あまり有名ではない筈ですが、ご存知でしたか」

少し驚いた様子の男性。確かに、画家が知ってるような競技じゃあないかもな。

「セヴェガ東部の農耕基地が発祥だとか」

「本当によくご存知だ」

男性は人の良さそうな笑みを浮かべた。王家に招かれたにしては、あまり堅苦しくなくていいね。

「ところで、今日はどんな御用で?」

汗を拭いながら、男性が訊ねてくる。俺はそれに苦笑しながら返した。

「その前に、お名前を聞かせて下さいな」

「あぁ、これは失敬」

彼はそう断ると、少し固い口調で自己紹介をした。

「私は細剣道教士七段、輪慈りんじと言います」

「はい、輪慈さんですね。覚えました」

七段とは。それは凄い。

「僕はまだ一級だ」

少し恥ずかしそうに言う王子様。嫌なら言うなよ。まぁ可愛いけど。

「始めて何年なんですか?」

「今年で丁度二年目だ」

二年か。あまり遅いペースだとは思わないんだが。

「筋はいいです。ただ本人は納得していないらしくてですね……」

どうやら輪慈さんも俺と同じ感想らしい。

「僕はもっと強くならなくちゃいけないんだ。だから―――」

何やら焦る理由がありそうだ。まぁ知ったこっちゃないが。

それにしても細剣道か……。昼飯まではまだ時間があるし、暇潰しには丁度いいかな。

「ねぇ輪慈さん。良ければ手合わせしてくださらない?」

「えっ、手合わせ……ですか?」

輪慈は戸惑ったように聞き返す。難聴じゃねぇんだから聞こえてるはずだろうが。とか思ったが苛つかない私理性的。

「はい。経験はありませんが、実戦こそ何よりの経験だと言いますし」

「貴様!輪慈先生を舐めているのか!」

王子様はどうやら気に入らないらしい。彼のことを尊敬しているのだろう。

だがしかし、そんな茶々などそれこそどうでもいい。

「お願い出来ますか?先生」

「は、はぁ……。道具は一応ありますので、隣の部屋で着替えてきてください」

俺は有染の頭を一撫でして黙らせると、受け取った道具一式を手に道場を後にした。

さて。気晴らしといきますか。

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