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Gilbert side 1

 ホールから、女性客の華やいだ笑い声が聞こえる。そのテーブルの側で接客しているのは、兄のダリルだ。

 「え~?じゃあ、おにいさん、このお店のマスターなんですか~?」

 「はい。お嬢さんたちは、観光?この街初めて?」

 「そうなんです、お薦めの見所ってありますか?」

 「ていうか、マスターさんが案内してくれたら、嬉しいなぁ」

 「ははは、俺は店があるから、残念ながらご案内するのは無理だけど、これから観光するなら―――」

 また、ダリルが女達にモテている。オレは独りため息をついた。


 甘いマスクに、長身で引き締まった身体つき。肩より少し長めでクセのない黒髪は、スッキリと後でひとつに結わえられている。低すぎない、張りのある声も、女達を惹き付けてやまない。

 あの髪をほどいた姿で、耳元で囁かれたい―――なんていうのが、この街の女達のダリルに対する評判だと、店を手伝ってくれている友人の妹、ポーラから聞いた。

 とにかく、始終モテてるが、本人にあまり自覚がない上に、普段、女っ気がないものだから、それがまた、女達を騒がせる原因になっている。


 「今日もモテモテですね、ダリルさん」

 厨房で洗い物をしてくれているポーラが、ホールの様子を伺って言った。

 ポーラ自身も、華奢で愛らしい顔立ちをしているから、店を訪れる男性客に人気だが、ダリルが女達に囲まれているときは、厨房に入ってなるべく姿を見せないようにする。中にはポーラに、妙な対抗心をむけてくる女性客もいるからだ。そういうところ、ポーラは要領がいい。


 「ギル、オーダーよろしく」

 10分もかけて、ようやくまとまった女性客の注文表を、ダリルがカウンター越しによこす。

 受けとるためにカウンターに近付くと、女性客から声がかかった。

 「そちらが弟さん?」

 「あら、可愛い~」

 「これでいて、腕のいい料理人だから、楽しみにしててください」

 ダリルが愛想よく応える。

 「・・・どうぞ、ごゆっくり」

 オレはダリルの手前、挨拶だけはする。ただし、ニコリともせずに。

 シャイなのね~とかなんとか、囃し立てられて、またダリルが相手を続けている。


 「ギルバートさん、眉間にシワ」

 注文に取りかかったオレに、ポーラが可笑しそうに言う。

 オレは眉間を撫でながら、作業を進めた。




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