魔法の
ルウはエルシーの手を取って、お祖母さまの鏡台の前まで連れて行きました。
そして、銀の鏡にそっと手を延ばしました。
ルウの指先が触れると、鏡全体から柔らかな銀色の光が溢れだしました。
不思議な光は2人を優しく包み込み、屋根裏部屋全体を照らしました。
ふと気がつくと、ほこりまみれだったエルシーの服はシミ一つ、シワ一つない綺麗な状態になっています。
縺れていた髪も、ブラシをかけたばかりのように、さらさらです。
さっきからルウは、澄んだ声で歌を歌っていました。
言葉の意味は解りませんが、ルウの声は高く低く響いています。
歌が進むに連れて、不思議なことがたくさん同時に起こり始めました。
古いテーブルに真っ白なテーブルクロスが掛かります。
ルウが持っているティーポットとおそろいの、ティーカップとお皿がどこからともなく現れて、2人の周りを踊りまわって、テーブルに並んでいきました。
エルシーは声もなく、その光景に驚くばかりです。
ティースプーンとシュガーポット、ミルクピッチャーがくるくると廻りながら、テーブルにセットされてゆきます。
どこからともなく、羽根の生えた小さな妖精たちが現れ、焼きたてのクッキーやスコーン、美味しそうな果物のジャムやクリームを運んできました。
ルウが歌い終えたとき、薄暗かった屋根裏部屋には、銀色の優しい光が満ち溢れ、テーブルの上にはお茶会の用意がすっかり出来上がっていました。
最後にルウは、自分が持っていたティーポットに向かって、小さな声で話しかけました。
エルシーは、淹れてたの紅茶の香りを感じました。
ルウのポットから、暖かな湯気がたちのぼっていました。
「エルシィ、お待たせしました」
ルウはポットをテーブルの上に置いて、エルシーの正面に立ちました。
右手を胸に、左手でお茶の準備が整ったテーブルをさして優雅にお辞儀をします。
「エルシィ、ようこそ、僕らのお茶会へ」
いよいよ、楽しいお茶会の始まりです。




