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エデンの園  作者: 北東
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第五話【ニート】

ほんの少し短めですが投稿します。

とある街の一角にある宿屋竜の止まり木、その一室で全身が真っ黒な服に覆われた、1人の男が寝ている。


名前はクロウ=L=スルト、恐らく世界最強の男。彼は数日前に、異世界で68年の人生を終えて【エデン】の世界へと転生した。


そんな彼が滞在する宿屋は朝から賑やかだった、何故なら―――。


「働きたくないでござる!働きたくないでござる!大事な事なので2回言いました。」


「何をふざけた事を言ってるんですか?ちゃんと働いて下さい!」


「嫌でござる!レフィ殿、拙者は働きたくないでござる!」


「嫌でも働いて下さい!お父様は強いんですから、冒険者になれば楽に稼げるでしょう?」


「拙者は今年で568歳でござるぞ!そんな老体に鞭打って働かそうとは!レフィ殿は鬼畜生でござるな!」


―――バカ(クロウ)が(レフィ)と喧嘩しているからである。






俺は今、レフィとの朝の喧嘩に勝利して、宿屋のベットでぐったりニート生活をしている。


何故なら楽しみが無いからだ。昔(ゲームの時)ならプレイヤーと戦ったり、大規模イベントの戦争に乱入したり、チート級のモンスターと戦ったりと楽しみがあったが、今やそれも存在しない。


数日前に居酒屋でレフィと飲んだ時に聞いたのだが、どうやら俺以外の英雄(俺達プレイヤーの事をこの世界の人は、英雄と言っているらしい)は数百年前に忽然と姿を消してしまったらしい。


まぁ全員が全員突然消えた訳ではなく、最初に半分くらいが消えてその後残っていた奴等も徐々に消えていったらしい。


ただし例外もあるらしく、オリジナル称号(レベル3万を越えた記念に、運営側から貰えるオリジナルの称号)を持っていた奴等はこちらの世界で病死したらしい。


つまり、消えた奴等は恐らく元の世界(地球)に戻った、そしてオリジナル称号持ちのプレイヤーは、何らかの原因で俺みたいにこちらの世界に転生、もしくは転移して来たのだろう。


そしてこちらの世界で人生を全うした、と言う訳だ。


オリジナル称号持ちと言えば、俺を含めてたったの15人しか居なかったチート集団だ。


全員最低でもレベル3万を越えており、それぞれ個性的過ぎる性格をしていた。あいつ等との戦いは俺にとっては大きな楽しみだった。


それがもう死んでいるのだ、共に戦う事も磨いた格闘技術をぶつけ合う事も出来ない。ならば何を楽しみに生きろと言うのか?


大規模イベントの戦争だってここ数年前に終結してしまい、当分は起こらないだろうってレフィが言っていたので、戦争への乱入も出来ない。


チート級のモンスターもここ500年の間、一度も発見されてないので最早滅んだのではないだろうか?


つまり人生に楽しみが見出せないのだ。高過ぎるステータスのせいで、何をしても完璧にこなせてしまう。


本来は完璧にこなせるのはいい事なのだが、今の俺にとっては努力する、という楽しみが無くなってしまった様に思えるのだ。


ならば何を生き甲斐に人生を過ごせば良いのか?それが分からないからニート生活をする事にした。


なのにレフィは働け働けと言う。別に働けと言うのが悪いとは言わないが、レフィの働けは、俺がギルドに入れば、今まで溜まっていた未達成のクエストを押し付けられるんだから、ギルドで働け!と言ってる様なものなのだ。


つまり俺に面倒な仕事を押し付け様としているのだ。だから「働きたくないでござる!」と言っているのだ。


レフィの話では近年―――つうか500年前から徐々に人類(ヒューマンやエルフ、ドワーフ等の全ての種族の総称)は弱体化しているらしい。


昔はNPCでも平均レベル2,000はあったのに、今や平均レベル50にまで下がっているのだ。


いくら500年と言う長い時間の経過があったとは言え、平均レベルが1,950も下がるなんてあり得ない。どうやら現在の人類は相当弱いみたいだ。


「それにしても平均レベル50って……余りにも低過ぎるだろ。」


レベル50で倒せるモンスターなんて、ゴブリンやスライム、リビングデット、マウスと言った雑魚の代表格ぐらいだろう。もしかしたらぎりぎりオークやオーガが倒せるか倒せないか、と言った所だ。


よく今まで生き残れたな人類って思ったのだが、どうやら人類の生活圏からモンスターが離れて行っているらしく、滅多に強いモンスターは現れないらしい。


強いモンスターが現れないって事は、経験値を稼ぐ事が出来ないって事だ。そのせいで人類は弱体化しているのだろう。


こんなんじゃあ、大規模イベントの、魔王復活とか起きたら人類は滅んじまうだろうな。あぁでもレフィとかが居るから滅びはしないか。


それに聖教国とやらが聖剣エクスカリバーを保持しているらしい。なんでも【勇者】が死に際に聖教国の教祖に渡したらしいのだ。


【勇者】ってのはオリジナル称号持ちのプレイヤーの1人の事だろう。正式なアバター名はアラン=ディアス、運営側からオリジナル称号【勇者】を貰った聖人君子の鏡とも言える青年だ。


まぁ現実(リアル)でも青年とは限らないけどな……。


まぁ【エデン】では史上最も人助けに励んだ男だった。普段から聖騎士シリーズ(白と金色の輝く鎧)を装備して、腰に聖剣エクスカリバーを提げていた。


イケメンだからと言う理由で一度襲ってみた事があるが、中々強かった。光属性の魔法スキルを中心に、広範囲攻撃や溜め技のスキルを多く取得しており、剣術もかなりの者だ。


レベルは42,803、防御を捨てた攻撃極振りステータスで有名だった。単純な攻撃力のみだったら俺と同格の威力がある。


しかし当然防御を捨てたステータスは、一撃でも食らえば即死する危険性がある、それを補ったのが聖剣エクスカリバーだ。


あの剣は草薙の剣と同じ神級(ゴット)の装備品であるが、草薙の剣とは似て非なる物だ。


草薙の剣が一撃の威力に特化した剣ならば、聖剣エクスカリバーは防御と回復に特化した剣だ。スキル《絶対防御》によりあらゆる攻撃を防ぎ、《自己再生》により毎秒HPを5,000回復する。


攻撃力は草薙の剣には及ばないが、それなりに高い数値だ。防御を捨てた【勇者】からすれば、聖剣エクスカリバーは最も相性がいい武器だ。


そんな持つ者が持てば最強の武器が聖教国にあるのだから、魔王復活が起きても何とか対処出来るだろう。


それよりも、折角【勇者】の事を紹介したんだし、他のオリジナル称号持ちも紹介しよう。流石に1人1人じっくりと紹介していると日が暮れるので、簡単な紹介だけだ。


【勇者】アラン=ディアス、聖人君子の鏡であり人助けをさせたら右に出るものは居ない。level:42,803、得物は聖剣エクスカリバー、防具は聖騎士シリーズ。


【魔王】ガイア=テンプル、【勇者】のライバルとして非常に有名で鬼畜としか言い様がない様なドS。level:42,950、得物は魔剣ダーインスレイヴ、防具は魔神シリーズ。


狙撃者(スナイパー)】リジット=フレアデル、【エデン】内で最も優れた狙撃能力を有するプレイヤー。level:31,460、得物は神弓アルテミス、防具は鬼王(オーガ・ロード)シリーズ。


【紳士】グレイアース=ロセコ、ギルド“紳士会”のギルドマスター。level:49,421、得物は炎剣レーヴァテイン、防具はフィアリィシリーズ。


炎精霊(イフリート)】ジョン=R=ケビン、炎属性スキルを極めた魔法使い。level:31,062、得物は聖剣アロンダイト、防具は炎騎士(フレイムナイト)シリーズ。


神狼(フェンリル)】イサム=クドウ、獣人族(ビースト)派生種神狼族(フェンリル)に転生した唯一のプレイヤー。level:30,008、得物は素手、防具はウルフシリーズ。


【戦車】マッスル=ストロング、筋肉ムキムキのおっさん。level:49,962、得物は素手、防具は無し。


【女神】クリミ=セイラ、黒髪清楚な魔法使い。level:30,510、得物は相棒、防具はマジックシリーズ。


医者(ドクター)】T=V、基本的に謎の多い人物。level:45,000、得物はキッチンナイフ改、防具は白衣シリーズ。


【鍛冶王】カトラー=マスタ、この人に作れない武器は無いと言われているプレイヤー。level:30,210、得物は神鎚ミョルニル、防具はアイアンシリーズ。


【神槍】レベリー=ランスロッド、【エデン】一の槍捌きで有名なプレイヤー。level:30,009、得物は神槍グングニル、防具は天上人シリーズ。


【雷光】ラジー=フィフィロス、雷属性系スキルを極めた魔法使い。level:40,502、得物は聖剣クラウ・ソラス、防具は雷神シリーズ。


竜王殺し(バハムートスレイヤー)】レギィ=クリムゾ、竜王(バハムート)を基本にドラゴン系モンスターばかりを狩るプレイヤー。level:47,012、得物は魔剣ティルヴィング、防具は竜王(バハムート)シリーズ。


道化師(ピエロ)】ソニック=フローク、常にニヤニヤ笑っている為気持ち悪い事で有名。level:45,006、得物はパーティーナイフ、道化師(ピエロ)シリーズ。


【殺戮武人】クロウ=L=スルト、【エデン】史上初めてレベル5万以上に到達したプレイヤー。level:60,027、得物は草薙の剣、防具は常闇シリーズ。



―――ってな感じの15人だ。因みに不本意ながら最後の【殺戮武人】ってのが俺だ。


別に好きでPKをしていた訳でもないのに、いつの間にかPKした数が世界1になっていたのだ。だから【殺戮武人】だ。


まぁオリジナル称号持ちには色々な奴が居るって事が、理解していただけただろうか?基本変人が多いが、皆強かった。


それが今や俺以外は、仲の良かった【魔王】や戦友の【戦車】、ライバル的な存在の【紳士】も皆死んでしまっている。


やる気が起きない。ライバルも友人も誰も居ない、同じ地球出身の仲間も居ない。独りぼっち、孤独だ。平均レベル50の世界で、レベル6万の俺が生きるのは中々難しい。


何をするにしても手加減しなければならないのだから、常に気が抜けない。1人にならなければ素の自分を曝け出せない、窮屈な生活になるのだ。


常に周りに気を配りながら働くくらいならば、ニートでいる方が楽だ。幸い金は腐る程ある、俺が持っているゲーム時代の通貨G(ゴールド)は現代価格で1G=100,000,000K(キルト)に相等するらしい。因みにランチ一食で大体900〜1,500K程度なので、1Gがどれ程の大金なのか分かるだろう。


俺の所持金は79,871,217,924G、つまり798億G。これだけの金があるのに働く必要があるだろうか?


そんなニートな考えを巡らしていると、俺が泊まっている宿屋の一階からドンドンドンッ!と、勢いよく階段を上ってくる音が聞こえてきた。


「この足音はレフィか?」


あの野郎、この宿屋はボロいんだからあんまり雑に扱うなよな。その内床板を踏み抜いちまうぞ?


「入りますよお父様!」


「おぉ〜、鍵は開いてるから入ってこい。それとあんまり大声を出すな、この宿壁が薄いんだから。」


「壁が薄くて悪かったな!」


うおっ!?聞こえてたのか宿屋のオヤジさん!聞こえても精々隣の部屋程度だと思ってたのに、一階のカウンターにまで聞こえていたとは!?


「本当に壁が薄いんですね………。まぁそれはいいです、それよりもギルドでクエストを受けて来たので働いて下さい!」


「しつこいぞレフィ!俺は働かんと言ったら働かん!俺を働かせたいなら、レベル1万を越える様なモンスターの討伐クエストでも持ってこい!」


レベル1万を越える様なモンスターは、ユニークかイベントモンスターくらいだ。どちらも滅多にお目に掛かれないレアモンスターなので、多分討伐クエストとか絶対無いだろう。


「フッフッフッ!甘いですわねお父様!今回私が受けてきたクエストはズバリッ!“幽霊船の調査”です!」


「幽霊船の調査?それのどこがレベル1万以上のモンスターに繋がるんだ?」


幽霊船関係のクエストと言えばゲーム時代に幾つか受けた事があるが、何れもレベル1万以上のモンスターなんて出て来なかった筈だ。出て来ても精々7,000〜8,500くらいだ。


「フフッ!やはり甘いですわねお父様!今回のクエストは、難破船が多く沈んでいる海域“死海”で発見された、幽霊船“アン女王の復讐号”の調査です!」


「なっ、なんだってー!(棒読み)」


ふざけはしたが、心の中では凄く驚いている。何せアン女王の復讐号だ、ユニークモンスターの中でも一際強い“海賊黒ひげ”が乗る海上最強の幽霊船だ。


俺はなんて幸運なんだろうか?本当に奇跡としか言い様がないタイミングで、ユニークモンスターが現れたのだ。内心もう小躍りしそうなぐらい喜んでいる。


そもそもユニークモンスターとは、ランダムでたまに現れる強力なモンスターの事を指す。


レベルは軒並み1万以上、強いものにもなると5万以上のものもいる。そんなユニークモンスターが出現すれば、当然プレイヤー達はより集まって巨大なレイドを組んで討伐に当たる。


しかしユニークモンスターの危険性は、何もレベルの高さだけではない。ユニークモンスターには、通常のモンスターと違う点がある。それは何処にでも移動出来る事だ。


通常のモンスターは、フィールドと言う区切りから外には出れない。例えば古代遺跡の周りにある森に出現するモンスターは、森からは出れない。


しかしユニークモンスターは、何処にでもランダムに出現して、何処にでも移動出来る。そして通常のモンスターが入れない街にまで入れるのだ。


レベル1万〜5万以上のモンスターが暴れれば、当然街などひとたまりもない。


だからユニークモンスターは発見されたら即討伐が当たり前、だから俺も単独(ソロ)でユニークモンスターと戦った事はない。


しかし!今は他のプレイヤーも居ない、つまり単独(ソロ)でユニークモンスターと戦えるのだ。しかもユニークモンスターの中でも一際強い、海賊黒ひげだ。


海賊黒ひげ―――不定期に死海に現れる幽霊船、アン女王の復讐号にて出現するユニークモンスター。level:55,000、海上で最も強いモンスターとして有名だ。


海賊黒ひげが出現したら、海上を拠点に活動しているギルドは全滅する、なんて話は有名だ。海上を拠点に活動するギルドが多数消えれば、海賊黒ひげ出現の合図だ。


まぁ今やギルドなんてレフィがやってる冒険者ギルドくらいだから、出現の合図などないがな。


―――っとそんな事よりもだ、俺はユニークモンスターやイベントモンスターは居ないものだと思っていた。しかし、探せば居ると言う事が分かった。


ならばこんなボロい宿屋でニートやってる場合ではない。冒険者になり世界を旅して、強いモンスターを探そう!そんで戦おう!


「レフィ、俺は今とんでもなく働きたくなってきたぞ!そのクエストを受ける!」


「本当ですか!?ありがとうございます!実はこの依頼を受けた冒険者達では戦力的に不安だったんですよ!」


レフィも俺が仕事をすると言い出したのが嬉しいのか、はしゃいで居る。レフィは面倒な依頼を消化出来るし、俺は強者と戦える、ギブ&テイクって奴だな。






かくしてニート(クロウ)は働く事になったのであった。



ニートから脱出した主人公は海へ出ます。さてさて主人公は海賊黒ひげを倒して、海賊王(笑)になれるんでしょうか?


まぁ海賊王(笑)になんてならないんですけど………。


次回は少々投稿が遅くなりそうですが、これからもよろしくお願いします。

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