第二話【遺跡】
前回はミスが幾つかあったので、今回は気を付けたつもりです。まぁ気を付けてもミスする時はしますが………。
駄文になるとは思いますがよろしくおねがいします。
「……………気合い入れて出て来たけど、大して何かが起こるって訳でも無いのか。」
ちょっと警戒しながら玄関を出たのだが、何も無かった。拠点の周りも大した変化は無さそうだ。
玄関の扉に鍵を掛けてから、少し苔むした石畳を道なりへ進む―――。すると少し小さめの広場の様な場所に出る。
「………“転生碑”は健在か。」
広場を軽く見渡して、苔や蔦に覆われながらも確りとした存在感を放つ石碑に目を向ける。ゲームの時は存在感なんて感じなかったのだが、今になってよく見てみると存在感が凄まじい。
この“転生碑”は転生に必要な条件が書かれている石碑で、各種族の主要都市の教会や広場に奉られている。例えばエルフに転生する条件が書かれた“転生碑”は、エルフの主要都市(村)であるカナリラの広場に奉られている。
目の前の“転生碑”はハイヒューマンに転生する条件が書かれている石碑だ。つまり此処はハイヒューマンの主要都市―――と言う事になるのだが、人は1人も居ない。
それもその筈、此処はかつて栄華を極めたハイヒューマンの都市ラック・スルトの跡地だからだ。プレイヤー間では古代遺跡と呼ばれており、【エデン】がサービスを開始して以来最も攻略に時間が掛かったフィールドの1つとして、非常に有名だ。
このフィールドが発見されたのはサービス開始から数年後だった。当初はこのフィールドはだたの森だと思われていたのだが、いざ攻略に向かうと恐るべき事実が分かった。
それはフィールドの大部分を染める森が、レベル5,000以下のプレイヤーは入る事が出来ない様になっている、と言うものだ。
当時はβテストからやっていたプレイヤーでもレベル5,000以上は数人しか居らず、大規模な攻略が出来なかった。
レベル5,000以下が入れないと言う事は、レベル5,000以下のプレイヤーでは勝てないモンスターが多数居る、と言う事だ。たった数人ではとても攻略出来ないだろうと言う意見が出たので、攻略は持ち越しとなった。
それから一年後、レベル5,000を超えるプレイヤーが150人程に増えたので、レイド(多数のパーティーやギルドが集まった、一時的なパーティー)を組み本格的攻略が開始された。
これに俺は参加しなかったのだが、今だにあの時参加しなくて良かったと思う。何故なら攻略は失敗に終わり、参加したプレイヤー150人の内生還したのはたったの10人だけだったからだ。
理由は単純だ。森の中で出現するモンスターの平均レベルが7,000以上だったからだ。
レベル差が2,000もあるモンスターに挑んで勝てる訳がない。当然レイドを組んでいたプレイヤー全員がそれを理解していたので、即座に攻略を中止して逃げたのだが、相手が猛毒を振り撒く蛾のようなモンスターだったので、レイドの大半が毒でHPを削られて逃げる途中で他のモンスターにやられたのだ。
これにより殆どのプレイヤーは森に近寄らなくなり、完全攻略される迄の8年間誰も入る事が無くなった。
つまりこの古代遺跡攻略迄に9年もの歳月が掛かったのだ。これより長く掛かったフィールド攻略は記憶には無い。
しかし掛かった時間に対して、この古代遺跡は何の価値も無いと言う事でも有名だ。この古代遺跡は隅々までプレイヤーが探し回ったが、見付かったのは錆びた剣一本だけだったのだ。
9年もの間、攻略すれば凄いアイテムが手に入るのでは?と夢見て来たプレイヤーは、一様に肩を落として帰って行った。
でも俺は違った。周りのプレイヤーが酷く落胆していたこの古代遺跡が、俺には魅力的で仕方がなかった。それは俺が所持していたスキル《古代文字学》が起因している。
この《古代文字学》は常時発動型スキルの1つで、【エデン】サービス開始一周年記念に出された特別クエストの景品の1つだ。
一周年記念特別クエストは、帝国VS王国の戦争に介入せよ!と言うクエストで、どちらかの味方について勝利へと導く―――と言った感じのクエストで、勝利国側には報酬を出すと運営側が通達したのだ。
因みに報酬は、魔剣デュランダル、神槍グングニル、神鎚ミョルニル、特別スキル1つ、武術スキル1つ、魔法スキル1つ,の何れかから1つ選ぶ事が出来た。
ただし、デュランダル、グングニル、ミョルニルの3つは抽選で3名に当たるので必ず貰える訳ではないし、特別スキル、武術スキル、魔法スキルは必ず貰えるがランダムと言うリスクがある。
大半のプレイヤーがデュランダル等の装備品の何れかを選んだ。まぁ当然と言えば当然だろう、いくら当たる確率が低くても当たればチート級のレア装備が手に入るのだ。
一方スキル系は余り人気が無かった。今回のクエストの報酬でしか手に入らない特別スキルはボチボチ人気があったが、武術や魔法はほぼ無かった。
何故なら【エデン】では数十万のスキルが存在するが、取得出来るのは初期で500個、レベル1万を超えれば1,000個、課金して最大10,000個だ。
つまりスキルを全て取得する事は不可能、ならば当然良いスキルを手に入れたいだろう。そうなればランダムで1つと言うのは悩む。
当たれば良いが、ハズレればスキルスロットを1つ無駄にしてしまう。装備品は別にハズレても損はない。
なので武術や魔法スキルを選択したプレイヤーは少なかった。因みに俺は特別スキルを選んだ。理由は今回だけしか手に入らないからだ。
他の武術や魔法スキルは何時でも(ゲームを進めて行けば)取得出来るが、特別スキルは今回の一周年記念のクエストの報酬でしか手に入らないのだ。
装備品に関しては余り興味が無かったので即決した。そして手に入れたのが《古代文字学》だったのだ。
《古代文字学》の効果は、古代文字が読める様になるという物だ。最初はこのスキル使えねぇ!と思った。
しかしこのスキルは意外な事に古代遺跡で役に立った。と言うのも古代遺跡には幾つもの壁画や石盤が存在しており、そこに書かれていた文字は正に古代文字だったのだ。
攻略に加わった他のプレイヤー達は《古代文字学》を取得していなかったので、そこら中に書かれている文字は、ただ遺跡っぽい雰囲気を出す為のものと考えていた。しかしこの文字がとんでもない代物だったのだ。
その中で最も俺に利益をもたらしたのは、アイテムの製造方法が刻み込まれた壁画だった。
古代遺跡には何十と言う数の壁画が点在しており、それぞれアイテムを作る為に必要な素材や道具、スキルが書かれている。
HPポーション+SSだとかMPポーション+SS、果ては蘇生薬何てアイテムの製造方法が刻まれた壁画も幾つかあった。他にも武具やゴーレムの作り方、《錬金術》や《鍛冶》、《調合》等々の豆知識を刻んだ石盤等もある。
その中でも俺が気に入っている石盤がある。【エデン】の裏設定が刻み込まれた石盤だ。
この石盤が中々面白い。例えば今から数千年前の【エデン】には、魔法と言うものが無く科学技術が発展していたとか、歴史を綴った物語とか、読んでみると面白い。
その中で一番好きなのはハイヒューマンに関する歴史だ。
かつて世界に魔法が無かった頃、ハイヒューマンは他の追随を許さない科学力で世界を支配していた。しかしある時世界に魔法が生まれ、他種族達はハイヒューマンに対して攻撃を始めた。
いくら世界を支配する程の科学力を持つハイヒューマンでも、未知の力である魔法には太刀打ち出来ず、次第に数を減らされていった。
しかし何もハイヒューマンだけが魔法を使えない訳ではなく、時が経つにつれて他種族と同じ様に魔法を使い始めた。
科学は突き詰めれば魔法と代わりない。逆に魔法も突き詰めれば科学と代わりない。
科学と魔法の両刀使いになったハイヒューマンに魔法のみの他種族が勝てる道理もなく、世界は再度ハイヒューマンの支配下に落ちた。
その後数百年間世界を支配したハイヒューマンは、調子に乗って神に喧嘩を売り滅ぼされた。
―――なんて言う物語だ。
オチはあんまり好きではないが、それなりに気に入っている物語だ。まぁ物語が事実だからこそ、ハイヒューマンの主要都市であるこの場に誰一人居ないのだ。
「なんか前より蔓が生い茂ってるな……。」
前にログインした時は少し蔓が絡まっている程度だったのに、今や殆どの建物が蔓に覆われて見えなくなっている。
植物は成長が早いなぁ〜、なんて馬鹿みたいな事を考えながら、“転生碑”がある広場から離れる。
拠点がある方の道には戻らず、拠点とは正反対に続く道を歩いて行くと右手に神殿が見えてくる。―――と言っても蔓に覆われているので、古代遺跡の構造をよく知らない者には分からないだろうが………。
右手に見える神殿のすぐ脇にある路地を通り、古代遺跡の中心に通っている大通りに出る。ここにはかつて商店街があったらしい、建物には『魚屋』とか『八百屋』と古代文字で書かれた看板が掛かっているし。
この大通りを右に行けば西門に出る、左に行けば巨大な墓地らしき場所に出る。今回は墓地ではなく外に用が有るので右側に歩いて行く。
西門に近付くにつれて蔓や苔が少なくなってきた。どうやらこの辺りは植物の侵食が進んでないらしい。ここら辺は前にログインした時と変わらない。
西門に着くと何やら野太い咆哮と、木が折れた時特有の乾いた音が響いてきた。古代遺跡の外で何かが暴れているのだろう。
この辺りに出現するモンスターはマーセナリーモンキー、キングコング、モラス、レッドドラゴン、ロックウルフくらいだろ。
他にも何種類か居たが、木を折ったり、野太い咆哮を上げる様な奴は居なかったと思う。
「多分ゴリラ(キングコング)だと思うんだが……。」
あのゴリラは嫌いだ。物防が無駄に高く、物理攻撃はほぼ効かないに等しい。まぁ魔法スキルはよく効くから倒すのは難しくない。
タンク役とか、近接戦闘特化型なら相性は最悪だ。まぁレベル1万を超えている廃人の近接戦闘特化型なら、力でゴリ押しして倒せるけど………。
俺は魔法スキルを基本にして戦っているので、ゴリラが出て来ても問題はない。しかしわざわざ戦うのも面倒だ。
何とかして回避出来ないだろうか?転移系のアイテムはこのフィールドでは使えないし、スキルも同じだ。
「ふむ………戦闘はどっちみち回避出来ないか。」
転移は不可能だし、歩いて行くしかないだろう。どっちみちフィールドから出るには、モンスターが沸いて出てくる森を通る必要がある。
今ゴリラとの接触を回避出来ても、いずれは別のモンスターに会う事になるだろうし、もう面倒だから正面から堂々と歩いて行く事にする。
ゴリラだろうがドラゴンだろうが、どっからでも掛かって来んかい!
ってな訳でボックスから俺の相棒(装備)を取り出す。その名も“相棒”!見た目はちょっと長めの棒片なのだが、実は結構強い。
物理的攻撃力は皆無だが、魔法的攻撃力は他のどの武器よりも強い。ただし非常に脆いので、近接戦闘には不向きだ。昔、スライムの体当たりで折れたと言う事例が多発した程脆い。
その為接近戦闘特化型のプレイヤーからはネタ装備扱いで、遠距離戦闘特化型のプレイヤーからはチート装備扱いされている。
そんな相棒を俺は頻繁に使う。この貧相なフォルムから、高火力魔法スキルをぶっ放つのは快感だ。
相棒を軽く振って補助魔法の《隠蔽》を自分に掛ける。これでモンスターに気付かれずに近付き、高火力魔法を至近距離で放つ。そうすれば大抵のモンスターは一撃で死ぬ。
だから知り合いのプレイヤー達から、暗殺魔術師なんて呼ばれてた。
「ゴリラ狩りだぁぁあ!!」
馬鹿みたいな奇声を上げながら相棒を振り回して西門を出る。すると高温多湿な熱帯雨林か!?と言いたくなる様な森が目の前に広がる。
先程森から聞こえた咆哮は、西門から真っ直ぐ進んだ方から聞こえてきたのでそのまま直進する。
「ゴリラは何処じゃぁぁあ!出て来いやぁぁあ!」
奇声を上げながら………。
「しまったぁあ!!奇声を上げながら走ったせいで《隠蔽》の効果が切れちまった!」
森に突撃しようとしたら、大量のモンスターに囲まれてしまった。少々テンションを上げ過ぎたらしい。
不覚だ!まさかテンションが上がり過ぎて、《隠蔽》を使ってる最中に大声を出したり、激しくに動いたら効果が切れるのを忘れてしまうとは!
なんて事を考えてる間にモンスター達は襲い掛かってきた。つー訳で必死に逃げている。それはもう脱兎の如く全力で走って逃げている。
戦ってもいいのだが面倒くさい。戦うの自体はいいのだ、魔法スキルで跡形もなく吹き飛ばせばいい、問題はその後処理だ。
俺があのモンスター達を一撃で吹き飛ばす威力の魔法スキルを使えば、森が荒野になってしまう。明らかにオーバーキルになる。どこの世界にアリ相手に核弾頭を使う馬鹿が居るのだろうか?
勿論威力の低い魔法スキルや武術スキルは有るが、そういうのは単体に攻撃する物が多く、今俺を追い掛けて来ているモンスター集団を相手にするのは面倒くさい。
アリを一匹づつ踏みつけて行く様なものだ、体力的には何でもないが精神的に疲れる。そんな時にはコチラ!古代遺跡製のお薬“白い粉”の出番です!勿論違法な薬物じゃないぞ!
この白い粉は、掛けた相手を錯乱の状態異常にする効果を持つ。もう一度言うがこれは断じて怪しいお薬ではない!
これを自分に掛けたら最高の気分になれるとか言ってたプレイヤーが居たが、断じてヤバイ薬ではない!
これを走りながら後ろへ振り撒いて行く。するとなんと言う事でしょう!あれだけ仲良く俺を追いかけ回していたモンスター達が、仲間割れを始めたではありませんか!
錯乱状態で殴り合いの掴み合いだ、最早どれがどこに攻撃したのかも分からないくらいゴチャゴチャしている。
さぁ〜て、追い掛けてくるモンスターが居なくなったので、只今より殲滅を開始します!
まぁでも、下手に魔法スキルを使ったら森が無くなるので、出来る限り森への被害が少なくなる魔法スキルを使う。
「被害を少なくするには、威力が低いのがいいよな。
《マナショット》ぐらいが丁度いいだろ。」
瞬時に俺が覚えている魔法スキルの中から、一番威力が低い《マナショット》を選択して使う。これはMPを1消費して、無属性の弾丸を1発作り放つ魔法で、威力は使用者のステータスにより変わる。
当然俺みたいなチート級のキャラが使えば、一発でも砲弾レベルの威力になる。そんな物を乱闘騒ぎをしているモンスター達に撃ち込んだ。
発射して数秒後に大爆音が響き、咄嗟に耳を塞いだが間に合わなかった。
「耳がぁ〜〜!!耳がぁ〜〜〜〜!!」
某大佐の台詞をパクリながら暫く地面をのたうち回り、漸く耳が正常に戻った。まさかあんな大爆音が鳴るとは思わなかった。
ゲームの時とは違い、音にも気を付ける必要があるみたいだ。
そんな事を考えながら先程を放った方を見ると、ミンチになったモンスターの死骸と抉れた地面が目に入った。
「………おぉ、地味にグロいな。」
ちょっと吐き掛けたたがなんとか耐える。これぐらいは我慢出来る。
しかし何時までも見ていたら吐きそうなので、大至急その場を離れて森を突き進む。あそこに留まって居てもろくな事がないだろう。
なのでその後黙々と、たまに見掛けるモンスターを排除しながら歩き続けた。するとついに森の切れ目に到着した。
「やっと出れた!」
暑苦しい高温多湿な森を3時間程歩き続け、ついに出る事が出来たのだ。思わず小躍りしながら跳び跳ねまくってしまった。我ながら中々恥ずかしい事をしてしまったな………。
しかし周囲にモンスター以外の気配は無いので、気にしない事にする。
さて森から出れたがお腹が空いてきたので、最寄りの町まで行って飯を食いに向かうとしよう。
書いててふと思ったのですが、一話が長くて投稿するペースが遅くなってる様な………。もう少し一話を短くして、投稿頻度を上げようかと思う今日この頃です。