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エデンの園  作者: 北東
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第一話【転生】

一度だけ投稿した事があるのですが、色々と詰め込もうとし過ぎてゴチャゴチャになってしまいました。

今作はそうならない様に頑張ります。

2503年、人類は仮想の世界を手に入れた。数百年間空想上の代物とされていたVR技術、ソレは開発されると同時に莫大な富を生み出し世界を一変させた。


開発当初は医療・軍事技術の進歩を促進し、数ヶ月後には大手の企業に、数年後にはスポーツ選手達のイメージトレーニングに、数十年後には庶民の娯楽になり、現在では世界中の誰もが利用する技術となった。


そんなVR技術を使ったMMO―――所謂VRMMOは発売されてから数十年が経つのだが、今だにたった一本だけしか発売されていない。

理由は単純だ、世界で初めて発売されたVRMMO【エデン】に勝るゲームが開発出来ないからだ。


今迄一人用のVRゲームは多く発売されて来たが、MMO―――多人数用のオンラインゲーム―――は世界初、当然世界中の人々が【エデン】を買い求めた。


そして他社がVRMMOを開発し始める頃には、世界中の殆んどの人が【エデン】を購入していた。VRMMOは1つ作るだけでも莫大な開発費用が必要になり、当然それを回収する為に売値は高くなる。


世界中の人々が何十万円とする【エデン】を購入した後で、すぐに何十万円とする別のゲームを買うだろうか?当然買う訳がない。


つまりVRMMOは作っても売れないと判断され、【エデン】発売から数十年経った今でも新作は発売されていないのだ。


そんなVRMMO【エデン】は、今や社会に無くてはならない物だ。かく言う俺も【エデン】をプレイしているプレイヤーの一人だ。


それも“最古参”と呼ばれている、βテストから【エデン】に参加しているプレイヤーの最後の一人でもある。【エデン】が発売されてから数年は多くの最古参達が居たのだが、時が経つにつれ一人また一人と引退して行き、今や発売当初からプレイしているのは俺だけになったのだ。


ならば何故俺が他の最古参達と違い、今だに引退していないのかと言うと年齢が低いからだ。


当時βテストに参加していたのは大手企業の重役達が多く、一般の人達も30〜40代の者が多かった。


勿論若者達も居たのだが、当時は就職氷河期の真っ只中で、多くの若者は就職活動に精を出していた。まぁ、数年後には就職難は解消されて、多くの若者が【エデン】をやり始めたのはまた別の話だ。


なのでβテストでは余り若者は居らず、多くのβテスターが中年と言ったところだったので発売から数十年経った今では、年齢の関係上多くが引退したのだ。俺は当時まだ15歳だったので数十年経った今でも【エデン】をプレイ出来ている。


そんな俺は今非常に困っている。何故なら現実(リアル)で事故を起こして死んだと思ったら、いつの間にか【エデン】の拠点(マイホーム)にあるベットに居たのだ。


ログインした記憶は無いし、俺が最後に記憶しているのは、ダンプカーに跳ねられて雨で濡れたコンクリートに叩き付けられる瞬間だ。


バイクで職場に向かう途中で雨が降りだしたので急いで職場に向かったのだが、途中にあったマンホールでスリップしてしまい事故を起こしたのだ。


かなり速度が出ていたし相手はダンプカーだ、生存率はかなり低いだろう。ならば何故俺は此処(【エデン】の中)に居るのだろうか?


可能性が一番高いのは、事故を起こす夢を見ていたと言った所だろう。―――しかし【エデン】に夢を見る機能は存在しない、何故なら【エデン】において睡眠とはログアウトと同じ意味を持つ、つまり寝ればログアウト出来るのだ。

ならば、絶対に夢を見ていたと言うのが有り得ないかと言うと、断言は出来ない。


例えば運営側が告知無しでアップデートを行い、夢を見れる機能を付けた可能性も無い事は無い。ただし利用者への告知無しでのアップデートはVR法第30項に違反するので、運営側もそんな事はしないだろう。


次に可能性が高いのは記憶喪失。奇跡的に一命をとりとめて退院して、自宅に帰って【エデン】をプレイしている最中に記憶が無くなったなんてどうだろうか?


少し無理が有るかも知れないが、無い訳ではないだろう。しかし記憶喪失だと何故此処が【エデン】の中の拠点だと分かったのかが説明出来ない。


事故の後での記憶だけ喪失するなんて言う、ご都合主義な記憶喪失は有り得ない―――と思う。医者ではないので断言は出来ないが、多分無いのではないだろうか?


次は最も可能性が低いもの―――数百年も前から創作物には良く出てくる、今でも都市伝説として語られているゲームの世界への“転生”ではないだろうか?―――と言う可能性。


まぁ有り得ないだろうが、根っからのゲーマーである俺には期待せずには居られない可能性だ。ゲームの世界に転生なんてものが本当に有るのならば―――とゲーマーなら誰もが一度は考えるだろう。


それになんだか“転生した”って言うのが一番しっくり来るのだ。まずはこれが夢なのかゲームなのかを確かめよう。


取り合えずベットから立ち上がり、普段から俺が装備している常闇シリーズを脱いで行く。


当然【エデン】では―――と言うかVR技術が使われている物では―――下着を脱ぐ事は出来ない様になっている。これはVR内での性犯罪防止の為に、VR法第24項で定められている。


ならば今この瞬間に下着を脱ぐ事が出来れば、此処はゲーム内ではないと言う事になる。


「………せいっ!」


気合いの掛け声と共にトランクス型の下着を下ろすと、アッサリと脱げた。普通は脱ごうとしても下着に触れる事さえ出来ないのに、普通に脱げた。


ちょっと跨がスースーするのですぐに下着を穿き直し、常闇シリーズを装備していく。


現時点で此処がゲームである可能性は消えた。まず下着が脱げたのと、跨がスースーすると言うのがポイントだ。


前者は当然VR法第24項に違反するからで、後者はVR法第2項に違反するからだ。VR法第2項とはVR内での温度についての取り決めだ。


例えばVR内で火の中を通った際に、リアルな温度を再現したらどうなるだろうか?当然余りの熱さに驚くだろう。そう言う事が無い様に、VR内では温度と言う物を感じる事は出来ない。


つまり跨がスースーするのは、此処がVRの中ではない事の証明になるのだ。ならば残る可能性は夢か転生か………。


まずは夢の可能性だが、夢を見ている人は自分が夢を見ていると認識出来るだろうか?大半の人は夢を見ていると言う認識は、起きた時にするものだろう。寝ている最中に「これは夢だな」と気付ける人は少ない。


ならば転生の場合はどうなのか?転生が絶対に有り得ないものかと言われれば、否定は出来ない―――しかし肯定も出来ない。確かめる方法が無い以上、有り得ないと断定するのはどうかと思う。


今迄地球上では天文学的な数の生物が死んでいるのだ、その中のほんの何体かが記憶を保ったまま転生しておかしくは無いのではないだろうか?


つまり何が言いたいかと言うと、俺は転生した、と言うのが一番しっくりくるのだ。それに夢だと思って行動して失敗するより、現実だと思って慎重に行動した方がいいだろう。


もし夢だったなら、目が覚めた時に「面白い夢だった」と笑って楽しめばいいだけの話だ。


そうと決まればとことん楽しむとしよう。元はと言えば【エデン】を始めたのも、現実(リアル)で溜め込んでいるストレスを発散する為だったので、やりたい様にやって来た。


流石にゲームの時と同じ様にやる訳にはいかないが、ある程度は自由気ままに生きて行こう。


「………取り合えず外にでるか。」


部屋の中で決意を新たにして居ても仕方がないので、取り合えず外へ向かう。俺が今居る拠点は小さく作ってあるので、寝室と客間と倉庫くらいしかない。


恐らく【エデン】で拠点を持っているプレイヤーの中では最も狭いだろう。大半の拠点持ちは、それをギルドホームとして登録しているので、中はとても広く作ってあるからだ。


ギルドとは、プレイヤーが10名以上集まると登録出来る物で、ギルドに所属すれば様々な特典がある。


例えばギルドに所属すれば安全にレベルを上げられたり、ギルドによっては回復系アイテムの配給、素材系アイテムの交換や安値での取り引き等、ゲームを進める上では非常に便利な特典がある。



他にも有名なギルド(NPCからのクエストや新たなフィールドの発見、PKプレイヤーの討伐を積極的に行うギルド)は、アイテムを販売しているNPCから格安でアイテムを売って貰えたりする。そして有名なギルドに所属しているのは、一種のステータスになるのだ。


その為有名なギルドには何百というプレイヤーが所属しており、必然的にギルドホームとして使う拠点は大きく作られる。なので俺の拠点は結構珍しい作りになっている。


「そう言えば、アイテムはどうなってるんだろ?」


俺は【エデン】のサービス開始以来、初めて戦闘と生産を両立出来ているプレイヤーだ。大抵のプレイヤーがどちらか片方に絞るのだが、俺はそれを両立した。


最初は生産職の鍛冶師をしていたのだが、鍛冶で使うアイテムの多くはモンスターからドロップするので、どうしても戦う必要があった。その為ある程度は鍛冶師として頑張り、途中から戦士にジョブチェンジしたのだ。


そうすると今度は回復系アイテムが必要になってくる。今度は錬金術師にジョブチェンジして、スキル《調合》を手に入れて回復系アイテムを生産した。


別にNPCから買っても良かったのだが、生産職系は余り稼ぎが良くなかったので金を節約したかったのだ。


そうしてアレが必要だ、コレが必要だと言っている内に、戦闘・生産を両立出来る様になったのだ。


その為に俺の拠点の倉庫にはとんでもない数の素材系アイテムや、武器と防具、回復系アイテムや課金アイテムが眠っている。正直所持しているアイテムの種類だけなら、誰にも負けない自信がある。


その膨大な数のアイテムはどうなったのか?あれだけの数のアイテムは果たして、この小さな小屋程度の拠点に収まっているのか?


ゲームでは倉庫には空間圧縮の魔方陣が書かれており、倉庫内はとんでもなく広い―――と言う設定だった。何故“設定だった”と言うのかと言うと、【エデン】では実際に倉庫には入れなかったからだ。


と言うのも倉庫は、ドアノブを握って取り出したいアイテムを思い浮かべるだけで、倉庫内のアイテムが自動的にアイテムボックスへ送られてくる様になっていたので、倉庫には入れなかったのだ。


「そう言えば、アイテムボックスとかは使えるのか?」


今の状況でメニューを開く事が出来るだろうか?一応ゲームの世界っぽいが、メニュー画面が開けるとは限らないしアイテムが使えるとも限らない。一度試してみよう。


「“メニュー”―――おぉ!開いた。」


メニューと言った途端、目の前に青い半透明の四角いメニュー画面が出てきた。幾らか項目が消えているが、今迄【エデン】で見てきたものと変わらない。


ステータス・スキル・アイテム・マップの4つしかない、本来はこれにGM通信・掲示板・セーブ・ログアウトの4つが加わった8つの項目がある。


前者の4つは言わずともがな、後者のGM通信は不具合が起きた際にGM(ゲームマスター)へのメールを送れる、掲示板はプレイヤー間での情報のやり取りが出来るもので、セーブやログアウトは言わなくても分かるだろう。


まず確認するのはステータス、これはアイテムよりもずっと重要なものだろう。このステータスによっては使えないアイテムや、装備出来ない武具が出てくる。


しかし、ステータスに関しては恐らく変化は無いだろう。


何故なら今装備している常闇シリーズの防具は、安直な名前に似合わず実は究極級(アーティファクト)の代物で、レベル1万以上でなければ装備出来ないからだ。


まぁゲームの仕様と違って制限等が無くなっている可能性もあるが…。


「“ステータスオープン”。」


   ★   ★   ★   


名前:クロウ=L=スルト

性別:男

種族:ハイヒューマン


level:60,027

HP:1,000,000/1,000,000

MP:6,015,450/6,015,450

闘気:9,547,381/9,547,381

筋力:5,620,008

器用:3,580,746

知力:8,451,213

物攻:6,058,740

物防:7,059,124

魔攻:8,401,521

魔防:5,190,427

速度:6,920,451

運:307,580


   ★   ★   ★   


「………うむ、いつ見てもチートだ。」


どこをどう見ても、数十年間掛けて出来た努力の結晶とも言える、正真正銘のチート級アバターであるクロウのステータスだ。


運以外のステータスは軒並み7桁のチートの申し子クロウは、正に【エデン】最強のアバターだ。


レベルが1万を越えたら廃人の仲間入りとまで言われていた【エデン】で、唯一5万の大台を突破したのだ、コレをチートと言わずして何をチートと言うのだろう?


まぁここまでレベルを上げるのは大変だった。【エデン】はゲームバランスなんて考えてない様なシステムが多く、最低限のルールとマナー以外は存在しない、弱肉強食のゲームだ。


ただレベルを上げるだけでも相当な危険(リスク)がある。【エデン】はある意味リアリティーを追求したゲームだ。


【エデン】では死んだ場合、かなりキツいデスペナルティーがある。今迄得てきた経験値を0にされたり、ボックス内のアイテムを消去やアバターの初期化等々、一時期厳し過ぎると言う意見が多発した程だ。その時は運営側からの説明があり、丸く収まった。


話は元に戻って、ステータスに付いてだ。名前と性別は説明する必要は無いだろう。

種族は初期に選べるヒューマンから派生する上位種族のハイヒューマンで、多分俺以外にはこの種族は居なかったと思う。


レベルは60,027、【エデン】がβテストの頃から毎日の様にレベリングを行った成果だ。因みに一般のプレイヤーの平均レベルは5,000〜7,000だ。


HPは体力、0になれば当然死ぬ。死んだ場合はデスペナルティーを受けた後で最寄りの街で復活する。


MPは魔力、魔法(マジック)スキルを使う際に消費するので、0になったら魔法スキルは使えなくなる。


闘気は武術(アーツ)スキルを使う際に消費する、これも当然0になれば武術スキルが使えなくなる。


筋力は装備や持ち歩けるアイテムの数に関係してくる、数値が低ければ装備出来る物が低級の物になり、数値が高ければ高級な物になる。


器用は生産等に関係しており、高ければ高い程品質の良いアイテムが作れる様になる。


知力は魔法スキルに関係しており、高ければ魔法スキルの威力が上がったり、詠唱を短縮出来る。


物攻は物理的攻撃の威力に関係しており、武術スキルを使っていない状態での攻撃力を示す。


物防は物理的防御の防御力に関係しており、武術スキルを使っていない状態での防御力を示す。


魔攻は魔法的攻撃に関係しており、魔法スキルを使った攻撃の攻撃力を示す。


魔防は魔法的防御に関係しており、魔法スキルに対する防御力を示す。


速度は移動速度に関係しており、武術スキルを使っていない状態での移動速度、回避力を示す。


運はモンスターを倒した時や採取した際のドロップ率に関係しており、高ければ高い程ドロップ率が高くなる。


ステータスに付いてはこれぐらいだろう。次はアイテムボックスを確認しよう。


ステータス表示画面からメニューに戻り、アイテムと書かれている項目をタッチする。


「―――中身はちゃんと有る………のか?」


目の前に現れたアイテムの一覧表を見て全部有るだろうと思ったのだが、ボックス内のアイテム数が多過ぎて全部有るのか分からない。


ステータスの筋力を上げ過ぎて持てるアイテムが多くなり過ぎたのだ。多分全部有るだろう………確認しようが無いので“多分”だ。


これでは倉庫内のアイテムの確認など不可能だろう。倉庫にはボックス内の数十倍のアイテムが収納されており、暇潰しに作ったアイテムや武具で溢れ反っているだろう。


最早開ける事さえ躊躇する程だ。現状把握が済んだ後で整理しよう。


「次は外に行くか。」


取り合えず今すぐ確認すべき自分に関する事は分かったので、次は外に付いてだ。


これも以外と重要な事だ。何故なら、拠点から出たらそこは上空1万mでした!なんて事になったら困るからだ。


もしもそんな事になったら、まともに外出すら出来なくなってしまう。それでは困る。


食料等に付いては問題ないが、俺がボッチなると言う問題が出て来る。こんな普通の一軒家にも及ばない様な、小屋と呼ばれても仕方がない様な拠点で一生を過ごすなんて不可能だ。


一旦客間に向かい南側に面する窓を覗く、そこから見る限り周りがマグマ煮えたぎる火山だとか、海の奥底だとか、上空に浮いているとかは無さそうだ。


少なくともこの窓から見えるのは見馴れた、少し苔むした石畳と建物だ。


「拠点の位置は変わってないみたいだな。」


窓から見える限りは安全そうなので玄関へ向かう。

家は一応半和風の拠点なので、靴は玄関で履く。


この靴は俺が普段から使う装備の中で、唯一常闇シリーズではない。古代級(エンシャント)の武具の1つ、天上人の靴と呼ばれるレアアイテムの1つだ。


これを履けば空を自由に“歩ける”様になると言う、他に類を見ない珍しい装備だ。


玄関で座ってから天上人の靴を履き、玄関の扉に手を掛け開け放ち外へと一歩踏み出した。



ちょっと長かったかな?いまいちどれくらいで切ればいいのか分からない……。

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