第一章 二話 スキル
「まず、スキルには二種類あるのね。一つは分かりやすく言えば、呪文みたいに唱えると発動するスキル。もう一つは唱える必要のない常に発動しているスキル。後者の方はよく、パッシブスキルとか言われてるかもしれないけど、まあ、ミヅキあなたの好み次第ね。」
この上から目線な言い方は、慣れれば気持ちがいいものだ。
…出会ってすぐに上下関係完成?嫌だ。あくまで俺が主人だろ?
「んで、あなたはスキルをまだ選んでないから選ぶことができるの。」
「なるほど。そこまではわかった。が、その先、どんなスキルがあるのかが分からないと選べないんだが。」
「そう思って、こんなのを持ってきましたぁー。」
ミリアはそう言うと、どこから出したのか辞書のようなものを取り出した。ミリア自身より大きな辞書。不思議だ。
その辞書に手を伸ばす。
「ちょっと待った。」
ミリアが辞書を遠ざける。すごい力持ちなんじゃないか?
「ミヅキには、すでにスキルがいくつかセットされているの。その一つがゲイズね。」
「ゲイズ?」
「説明されるより、やってみるのがいいわ。対象をこの辞書にして、『ゲイズ』と唱えてみて。」
対象をどうとかって言うのはわからないけど、なんとなく、こうかな?というように、辞書に意識を向け唱えた。
『ゲイズ』
すると頭の中に情報が流れてくる。
★スキル辞書:この世界にあるとされるスキルをまとめた辞書。まだ完成ではなく毎年少しずつだが、更新され新しいものが発行されている。
なるほど。『ゲイズ』か。
「無事にできたみたいね。色々なものに対して使えるから、とりあえず初めてのものに出会ったら使うことをお勧めしておくわ。」
そこで、ミヅキはスキル辞書に手を伸ばす。開く。そこには、ものすごい数のスキルがかかれていた。例えば…
☆炎魔法
☆時魔法
☆戦いの歌
☆穴を掘る
☆指輪職人
などなど。
この中から出来れば最強。できなくても、この場を打破できるものがいいと思った。
「ミリアのお勧めは?」
ちょこんと座っている姿もかわいらしい。羽根をゆっくりヒラヒラさせている。
「んー、そうねぇ。やっぱりイメージスキルかなぁ。てか、それがいいよ。」
「なにそれ?」
「ミヅキ自身で新しいスキルを作り出すの。もちろん制約は作られるだろうけど、最強目指すなら、イメージしないとね。」
そんなことができるのか。でも、与えられたものの中から選ぶのならともかく、新しく作り出すとなると、一晩じゃ足りない。だけど、このままいけば明日からは奴隷になる。ハーミットたちを助けられないかもしれない。
「イメージスキル、イメージスキル。」
ミヅキは、ぶつぶつと唱え始める。ミリアはニコニコしながら鉄格子の周りをヒラヒラと飛び回っている。
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『ゲイズ』
★ミヅキ
Lv.1
装備.ボロの布切れ
サポーター.ミリア
スキル.☆ゲイズ☆ブックマーク☆SP召喚☆異空間BOX
★ミリア
Lv.1
装備.妖精の服
職業.サポーター《助言》
スキル.☆助言☆変幻自在
何度かやっているうちに、楽しくなってきた。俺だけが知る世界。なんとかなりそうだと思えた。新しいスキルもイメージできたし、あとは、朝を迎えるだけ。
☆ブックマーク:一度見たスキルをコピーし魔法の本に記録する。記録したスキルは本を開くと使えるようになり、閉じると効力を失う。
クロロ様。イメージをありがとう。
☆SP召喚:サポーターを召喚することができる。初回以外は名前を呼ぶことで発動する。
☆異空間BOX:生物以外のあらゆるものをいれることができる。ただし、キャパシティはレベルに依存する。
☆助言:ありとあらゆる知識を自分以外の人が必要とするとき引き出すことができる。《助言》サポーター専用スキル。
☆変幻自在:いろいろなものに変化することができる。ただし、効力はLv×時間で失われる。
『ゲイズ』×『助言』コンボ完成。
朝まで眠れなかった。昨日の不安が嘘であるかのようにドキドキが止まらない。もちろん、これから始まる戦いに緊張はした。ミヅキは、左手を出し、唱える。
『ブックマーク』
左手にはふわふわと浮かぶ本が現れる。ページをめくるとなにもかいていない白紙が続く。このスキルの弱点は「パッシブスキル」を記憶できないことと、本を開かないとスキル発動出来ないこと。それは某漫画で理解済み。あとは、どう戦うか。
この扉を開けるであろう兵士に目星をつけ、ゲイズを唱えておいた。
★アッシュ
Lv.2
装備.兵士の鎧 兵士の兜 兵士の剣
職業.歩兵
スキル.☆兵士の忠誠:立場が上の者が一定の範囲内にいると攻撃力が少し上がる。《兵士装備スキル》
兵士装備スキルとは、兵士の○○など、一般的にシリーズものと呼ばれるものを装備することによって発動する特殊スキルらしい。ミリア曰く。
「さて、ミリア。そろそろいくよ。」
鉄格子の中で相当話した。ある意味ミリアはミヅキのなかでこれまでにないくらい信用できる者となっていた。
ミリアにとってもそれは同じだった。
「そうそう、忘れるところだったわ。異空間BOXの中に武器が入ってるから使ってね。」
どうやってここから抜け出すのかと考えていたときに、ミリアは助言をくれる。まさか、俺の頭の中をお見通しではないよな。と、ミヅキに思わせるほどである。
『異空間BOX』
手を伸ばすと、空間が歪む。最初は驚いたが、慣れれば、仮面ライダーと同じだ。手応えのあるものを掴み、引き出す。
★天空の剣:天空シリーズのひとつ。体が軽くなる魔法がかけられている。装備中は☆素早さUPが自動発動する。
見た目も悪くない。悪くないどころか、ゲームの最終局面で手にはいるような見た目。それに、自動発動スキルもついている。残念ながら、ブックマークでは装備スキルも記憶できない。案外使いにくいのか?
ミヅキはボロの布切れに天空の剣というものすごくミスマッチな装備で時を待った。
ミリアからみれば滑稽で大笑いしている。いくらミリアが笑おうと、周りを歩く兵士には聞こえない。
そして、時はきた。