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第一章 一話 異世界の扉

落書き程度に保存してあるものを少しずつ推敲しながら投稿していきたいと思います。


長い一塊かも知れませんが、どうぞ温かく見守っていてください。


ご指摘、お気づき等あれば、修正できる部分にカンして直していきたいと思います。


よろしくお願いします。

まるで、新訳聖書にでも出てくるような厳かな雰囲気を感じた。実際にはそんなもの読んだことはないんだけれども、なんとなく、これまで生きてきた経験とかで「みんなから信仰されるもの」ってこんのもんなんだろーなぁーというのを感じた。


扉は開かない。


男は扉の前に立ち尽くし、それが開くのを今か今かと待ち続けている。


男は少しの髭と白髪を生やし、みすぼらしい格好で、だけど、顔立ちとかはあまり年老いた風ではなくどちらかと言うと割りと整っている方であった。


名をミヅキ。


実際には男の名などとうに忘れられてしまっていた。そして、それがこの扉の前にいるということなのである。


男は深く息を吸い込んだ。ゆっくりと吐き出す。

「異世界への扉よ!我は選ばれし子。その存在と共に、神の御心のままに。」


それまで静かだったその空間にミヅキの声が染み渡る。同時に扉は光を放ち始める。最初は小さな光だった。やがて、というよりは瞬く間に大きく眩しくなり、この空間すべてを包み込んだ。


開いたとも開かないともわからないその扉の前から、ミヅキは消えていた。

------------

「名前は?」

ミヅキ

「性別は?」

「身長は?」

169

「体重は?」

67

など、いくつかの質問を投げ掛けられた。ミヅキはそれに答えていく。中でもよくわからなかった質問は、「容姿は?」と訪ねられたこと。答えようにも言葉で容姿を伝えることなど不可能だと思っていると、頭の中になにやら白い枠のようなものが出てきた。特に何と言うことはない。それが当たり前だと言うかのようにごくごく自然に出てきて、ミヅキもそれを受け入れた。ミヅキは白いわくの中に自分の姿を想像して当てはめた。


「初期スキルは?」


これは悩んだ。今まで生きてきて、スキルなんぞと言うものに触れたことがなかったから。こちらからの質問にも答えてくれるのだろうか。


「選択肢をくれ。」


「選択肢はない。が、後で決めても良いぞ。」


質問に答えてくれた。これで、絶対的だった声の主の立場に少しでも近づいた気がした。


「では、そうする。」


ミヅキはスキルを後で決めることにした。いまいちピンとこないものを選んでしまったのなら、それもそれだと思ったからだ。


「問いかけは以上だ。何か困ったことがあれば、聞けばいいだろう。」


「誰に?」


いった後で、不味いと思った。さすがに馴れ馴れしいか。


「いけばわかる。」


声の主は期待を裏切った。あくまで冷静である。こちらの考えすぎか、と男は少しほっとした。


瞬間、扉は光を動かした。動かしたというより他に表現が見つからない。眩しく放たれた光は、目の前をものすごいスピードで駆け抜けた。ものすごいスピードで移動しているのは自分だと言うことに気づいたのはそれが終わってからのことだった。

---------------

気が付けば、眠っていた。いつの間にか、ガタゴトと揺れる馬車に運ばれている。


「目が覚めたか。」


男に声をかけられた。


「ここは?」


「見りゃわかるだろう?馬車だ。」


「そんなことはわかる。どうしてこんなもので運ばれてるんだ。」


目の前の男もそうだが、ミヅキ本人も同じくみすぼらしい格好だった。扉の前にいたときもみすぼらしい格好だったが、今の方がもっと醜い。ボロボロの布っ切れをただ着ているというよりは、巻いている。


「ははは。もしかして、記憶がねえのか。俺たちは奴隷だよ。まぁ、奴隷というよりは、奴隷候補だな。」


「どういう意味だ?」


ミヅキは真剣な表情。それに対して男は少し小バカにしたような表情。


「偉い人のお眼鏡に叶ったのさ。今まで一生懸命働いたご褒美に、もっと働かせてやるってな。」


「すまん。よく、状況がつかめないのだが。」


馬車の中には二人。外を横目で見ると、同じように馬車が走っているのが見える。辺りには何もない。砂にまみれた道を幾台かの馬車がガタゴトと走っている。


「襲われたのさ。村が。あんたは、たまたま旅の途中で寄っていたところを襲われたんだろうな。」


男は続ける。


「村の名前すら知らないだろうが、結構楽しいところだったよ。だけど、火を放たれた。家族も何人かは殺された。理由?そんなの偉い人のお眼鏡に叶った、という他に見当たらない。何かの邪魔をしたわけでもない。」


さっきまで陽気に話してくれていた男の表情が曇っていく。ミヅキにはそれが辛かった。話を変える。


「俺はミヅキ。あんたは?」


「ああ。まだ自己紹介もしてなかったな。まぁ、これから役に立つかはわからんが名前だけでも知っといてもらうか。私はハーミット。ナツメ村の村長だ。」


村長というのには若すぎる。目の前にいる男はどう考えても40代後半。村長と言うにはまだ若すぎる。ミヅキは思っていることをそのまま口にした。


「そうか?そんなもんだろ。」


疑問は疑問のままで解決されることなく会話が途切れた。

---------------

「降りろ。」


馬車が止まると同時に、前から男がやってきてそう言った。ミヅキとハーミットはしぶしぶ降りる。他の幾台かの馬車からも同じように何人かずつ人が降りてくる。ハーミットによると全てナツメ村の村人らしい。


このハーミットって男。さっきまで陽気な顔してたのは、俺に気を使ってたのか?


ハーミットの表情は暗いままだ。


馬車を降りると、今度は兵士が迎えにきた。後ろから剣の切っ先を足元に当てられる。


「ほら、早く進め。」


言われるままに進んでいく。これまでに経験したことのない恐怖。本物の剣。鎧。雰囲気。だけど、それを嫌だという勇気はなかった。


「明日になれば仕事場も決まるだろう。ここでしっかり休んでおけよ。」


兵士は鉄格子に囲まれた部屋に俺を通すと、そのまま扉を閉め、鍵をかけ、出ていった。


奴隷のわりには、一人一部屋か。狭いけど、これならいいか。


………ちょっとまて。


やっとここで気がついた。いや、気付いていたのだけど、あえて意識しなかった。これまでの展開があり得なさすぎて、怖かったから。


俺は何をしにきたのだ。この世界に。

わざわざ試練とやらを命がけで乗り越えて、たどり着いた扉の向こうで奴隷やってますなんて言える人がいなくても言いたくない。俺は選ばれたのだ。


すると心の中から勇気がわいてきたかのような錯覚に陥った。その錯覚はこの展開を一気に突き崩す。


「スキル」


ポツリと呟いた。この世界の手前、声の主に聞かれて保留にしておいたこと。今思えば、声の主はこの世界での俺のスペックを聞いていたのだ。気付けば、もっとイケメン高身長にしていたのに。


そんなことは今さらどうでもいい。スキルだ。だけど、どんなのにすればいいかわからない。


迷っていると、股関節のあたりがモゾモゾと動く。


「んんん…」


声まで聞こえる。そーっと手を入れ、掴み、「取り出して」みる。


「ぷっはぁーー!もう、このまま死んじゃうかと思ったわよ!!」


取り出した「それ」はいきなり声をあげる。鉄格子の前を通る兵士たちに変化はない。どうやら「これ」の声が聞こえているのは、俺だけらしい。


「なんなんだよ。お前は。」


ボソボソと「それ」に尋ねる。


「わたしは、ミリアよ。」


こちらに来る前に声の主からそんなこと尋ねられた気がする。


「サポーターの名は?」


今となって気づく。まさかこんな妖精みたいなのがサポーターだとは。もっと女性らしい姿のサポーターが良かったな。巨乳がよかったな。まあ、ミリアもこれはこれでかわいいけど。かわいいけど、足りないものは埋められない。


「スキルについて説明するわ。」


いきなりかよ!!


と思ったが、知りたいことが最初に聞けるってのは有難い。この状況を打破すれば、あとでゆったりとでも話はできる。


ここから、ミヅキの冒険は始まるのである。


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