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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
化学部日常篇
8/45

元素7 コンビニとオッサンとお菓子な女の子

それは、突然だった。






朝、5時。


場所は……俺の家、黒鉄家の二階、俺の部屋。


朝日が若干まぶしい、春の朝。




俺は、自室のベッドで寝ていた。




「♪♪♪♪♪♪!!」




突然。


朝、5時に携帯の着信音がなった。


朝5時に。


「♪♪♪♪♪♪!!」


…………。


勿論、この時の俺はまだ夢の中。


しかし……


「♪♪♪♪♪♪!!」


携帯の着信音は鳴りやまない。


「♪♪♪♪♪♪!!」


「♪♪♪♪♪♪!!」


「♪♪♪♪♪♪!!」




「……ん…うぅ」


あまりにもうるさい。


仕方なく起床する俺。


「♪♪♪♪♪♪!!」


まだ頭がボーッとするがな……。


まさに寝起き。


「♪♪♪♪♪♪!!」


「……電話?」


俺の安眠を妨害した諸悪の根源は、どうやらこの携帯電話。


まだ半分寝ぼけている俺。

しかし、とりあえず携帯を手にとり、通話ボタンをプッシュ。


「……もしもし?」


寝起きだから声がかすれた。


『Oよ、今日も朝練するから7時に学校へ来い!!』




……携帯の向こうから聞こえた、何かこう……胸騒ぎのする声。


悪い意味での胸騒ぎ。


「……だれ?」


半分わかるが、とりあえず聞いてみる。


『私だ、石鉄高のMgだ!!』


石鉄高のマッドサイエンティスガール。


プロローグで初めて聞いた呼び名だな。


「……何? マグネシウム?」


わざとボケる。


その間にも俺はベッドから出て、窓のカーテンを開ける。


……今日は曇りか。


『マグネシウムではないぞ? マッドサイエンティスガールだ!!』


あー、うるさいなぁ。

声のボリュームでかい。


「……で、そのマッドさんが何の用?」


『だから朝練だ!!』


「……またか」


ってか、昨日も朝練やって、ジョンソンが来て……。


「……それ、強制参加?」


『当たり前だ!!』


……マジでか










「……眠い」


現在朝6時


意味のない朝練とやらに駆り出された俺こと、黒鉄徹哉は家を出た。


空は曇り。


気分は最悪。


「……眠い」


全く……安眠妨害もいいところだ。


しかも当日連絡。

何故昨日のうちに言わないんだ?


「……眠い」


大きなあくび。

そしてため息。


しんどいよ。


そして


「腹減った……」










学校の近所にあるコンビニ。


朝早くからの強制招集のせいで朝飯を食べてなかった俺は、部活に行く前に食料調達。


「いらっしゃいませぇ〜!!」


中年のオッサン店員が笑顔でこっちに営業ワードを投げ掛けた。


俺はソレを真顔でスルーし、菓子パンのコーナーへ。


「…………」


……オッサン店員、すげぇこっち見てる。


けどスルー。


「…………」


超ガン見。

……だからこっち見んなよ!!


俺、もしかして目付けられてる?


やだなぁ!!

万引きとかしねぇよ!!

俺、ハートは意外とチキンだから。




……とか言ってたら、フライドチキンが食べたくなってきたのは秘密。




で、菓子パンコーナー。


「とりあえず、あんこたっぷりサンドイッチ無いかな?」


あれ、奇妙な味がしてウマイんだよね。

ハムとチーズとレタスとあんこ。


お口の中がビッグバンになります。




その時、菓子パンコーナーの向かい、お菓子コーナーの所に見知った人影が。


「……あれ?」



俺は菓子パンが陳列されている棚越しに、さりげなく確認。


身長的には俺より頭1つ分小さい。

短い髪を左右に分けたミニツインテール。

顔は小さく、しっかりと整っている。

そして背中には竹刀。


「……やっぱりか」


棚のお菓子を超キラキラした目で眺めているアイツは、まぁ、俺の知り合い。


「……そこのお嬢さん、何してんの?」


「ふぇっ!?」


棚越しに声掛けてみたら、めっちゃ驚かれた。


「ど、どこ!? だ、誰!?」


しかも超焦ってるし。


「棚越し」


「えっ!?」


俺のヒントを元に、棚のこっち側に目をやる彼女。


そして目があった。


「おっす」


「なんだ……テツかぁ〜……」


俺の顔を見た途端、急にヘナヘナしだしたコイツは施仗明子せじょうめいこ

全くもって失礼なヤツだ。


俺と同じ石鉄高校1年。

あ、クラスは違いますよ?


「朝っぱらからお菓子かよお前……」


コイツの買い物かごには沢山のお菓子。


チョコやらポテチやらグミやらマシュマロやら色々。


「あのね、朝だからこそ糖分取って、頭を覚醒させんのよ!」


何をどや顔で言ってんだコイツ。


あ、ちなみに明子とは小学から一緒。

まさに腐れ縁。


で、コイツのあだ名が……


「そんなんばっか食べてると、血糖値がバカになるぞ、アキコ」


「うっさい!!」


……明子って、アキコとも読めるでしょ?

だからこのあだ名。


まぁ、このあだ名を使用すると、高確率で不機嫌になるが。


「ってかテツ、いつもこんなに早かったっけ?」


かごに甘栗を入れながら質問してくるアキコ。


機嫌治るのが早い。


「違うよ、今日は半ば強制収容されに行くの」


あそこは牢獄。

放課後、日が沈まない限り家に帰してくれない。


『Oよ、幽霊部員なんかになってしまってはダメだぞ!!』


って、どっかのクルクルパーさんが。


『もし幽霊部員になってしまったら、徐霊くらいはしてやる』


クルクルパーは、幽霊部員の意味を間違っているし。


化学大好きなヤツが、幽霊を信じちゃマズくないか?


「……テツ、どうしたの?」


棚越しに俺の顔を凝視してくるアキコ。


「いや……ちょっと黒歴史化しつつある過去を思い出してただけ」


「黒歴史?」


何だか不思議そうなアキコ。

かごにはいつの間にかシュークリームがプラスされてるし。


「……そういや、アキコは何か部活入ったの?」


少し話題を変える。

後で会うクルクルパーの事は考えたくない。


「…………」


……なぜ黙る?


……ああ。


「明子は何か、部活入ったのか?」


「いや、まだ入ってないけど……」


とか言いながら、かごにガムを投入するアキコ。


「じゃあその背中の竹刀は何だ」


剣道部……は確か、石鉄高校には無かったハズだし。


「ああ、今日は帰りに道場寄ってくから」


「なるへそ」


そういやそうだ。


門下生まさかの200人を誇る、超有名な剣道道場、施仗道場。


そこの師範の娘こそ、この甘党アキコさんなのだ。


ちなみに本人も門下生の1人。




多分剣道、強いよ。


ってか、まだ部活入ってないの?

もう4月終わるぞ?


……フフッ


「なぁ明子?」


「ん?」


レッツ勧誘Time!


「お前、まだ部活入ってないなら、化学部入らないか?」


直球ストレート勧誘!


「……化学?」


「イエス!」


そう化学!!

今なら名誉棄損になりかねない元素記号あだ名が貰えます!!


「化学……ねぇ……」


アキコさん、かごにクッキーを入れながら考え中。


「……お前、結構金あんだな」


「え?」


かごには山盛りのお菓子。

血糖値うんぬん以前に、コレ結構な金額だぞ?


「これ、軽く三千円くらいいくんじゃね?」


かごの中からカール的な黒ひげおじさんがこっちをガン見してるし。


今日はよくオッサンにガン見されるもんだな。


「いいの、今日はお小遣いの日だし!」


満面の笑み。

バックに黄色いお花が見えた。

そうか……そんなにお菓子、好きか……


の割には、アキコは全然太っていないが。

むしろ細い。


「……そ、そうか」


……何たじろんでんだ、俺。


その時……




「うがぁ……俺らぁ、酒がほすしぃ〜!」




「……は?」


コンビニ、何だか小汚ない中年オッサンが入ってきた。

足元超フラフラ。

顔、真っ赤。


一発で分かる、酔っぱらいのオッサンだ。


……朝から酒って。


「酒がほすしぃ〜! 俺らぁ、酒だぁ!」


呂律回ってねぇし。


「……すげぇ酔ってんな、あのオッサン」


「だね」


俺とアキコ、とりあえず店の端へ。

だって、絡まれるの嫌だし。


「酒だぁ! 酒をもってこぉい!」


うるさいなぁ。


「さぁけぇ!!」


酔っぱらい、店内をブラブラ

他の客も迷惑そう。


その時


「お、お客様……あまり店内で騒がれては、他のお客様に迷惑……」


さっきまで俺をガン見していたオッサン店員、酔っぱらいに声を掛けた!!


「ああ? うるせぇな、酒をもってこい!」


酔っぱらい、大声で反論。


「お客様、その……あまり大声を出されては……」


オッサン店員、意外と態度小さい。


その時!!


「うるせぇ!!」


ドカッ!!


「ぐあっ」


酔っぱらい、店員の顔をグーで殴った!!


「きゃーー!!」


店内にいた、1人の女性客が絶叫。

オッサン店員、鼻血を出しながら転倒。

うずくまり中。


「酒だぁ! 酒だぁ!!」



店員を殴った酔っぱらい、店内のすみにあった掃除用のモップを手に取り……


「アルコールだぁ!!」


暴れ出した。


「きゃーー!!」

「うわっ!!」

「おおっ!!」


店内パニック!!


ってか、


「危ねぇ!!」


モップを振り回し、ところ構わず棚や商品を殴り続ける酔っぱらい。


ちなみに店員、未だ床で悶え中。


その時


「テメェ、何見てんだコラァ!!」


「……は?」


いつの間にか、酔っぱらいが目の前にいて。


他の客、みんな外に避難していて。


何故かアキコさんも外に避難していて。


店内、俺と酔っぱらいと半分死んだ店員のみ。




あ、あかーん!!



ってか


「お前らいつの間に逃げたッ!?」


皆さん、外からガラス越しにこっち見てる。


そのね……皆さんの目がね……なんか……哀れみの目なの。


すごい哀れみなの。


誰か……警察に連絡してくれたかなぁ。


「テメェ、シバくぞコラァ!!」


きゃーよっぱらいのといきあるこーるくさい!


「何脳内ツッコミしてんだコラァ!!」


きゃー、酔っぱらいが俺の心を読んできたー!


「テメェ、酒は持ってるか?」


「……はい?」


「酒だぁ!!」


バシーンッ!


酔っぱらい、モップを床に叩きつけ威嚇。


「うおっ……」


俺、マジビビり。

だって怖いもん。


「酒をよこせ……酒だぁ!!」


ほ、本格的にまずくないか、このシチュエーション……


「酒をよこせっ!」


「うわ、ちょ!!」


何故か胸ぐらを掴まれた俺。

せ、制服がヨレヨレに……


「オラッ、とりあえず死ねや!!」


「なぜそうなるッ!?」


あ……いかん。

口に出してツッコンでしまった。


酔っぱらい、超キレ気味。

俺、絶体絶命。

あかーん。


「じゃあ死ねやッ!!」


その時、俺は酔っぱらいに投げられ、地面にダイブ。


ドーン!!


「痛っ!!」


あー……腰打った。


そして……


「オラッ!!」


俺の目の前には、モップを振り上げた酔っぱらいの姿。


や、ヤバいっ!!






その時……




ガシッ!!




「なっ……」


酔っぱらいが振り上げたモップ。


そのモップが、酔っぱらいの手から地面に落ちた。


「痛いっ!」


酔っぱらいの手は真っ赤に腫れてるし。




「……テツに手を出すな!!」




酔っぱらいの後ろ、そこには小さな人影が。


「……明子!」


そこにいたのは、竹刀を持った明子さん!


「て、テメェ!!」


酔っぱらい、明子を確認した瞬間一気に跳躍。

明子に襲い掛かる!


しかし……


「フッ!!」


明子は竹刀を一振り。


次の瞬間……




ドサ




無音のまま、酔っぱらいは床に倒れた。


まさに一瞬。


「……ふぅ。テツ、大丈夫?」


「あ、ああ……」


軽く一息ついたアキコ。


その笑みは、何か……こう……良かった。

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