元素5 その時、俺は人の表と裏を見てしまった
「マイネームイズジョンソン。ナイステューミーテュー!」
oh、ナイスなカタコト英語ッ!!
只今、この化学部にとある金髪の方が来訪中。
中臣ジョンソン君。
石鉄高校1年生。
アメリカ人と日本人のハーフだそうな。
金髪の髪に青い瞳、黒ふちのメガネ。
日本人の要素が見当たらない……
「ボク、リカガダイスキデス。ダカラ、カガクブニタイケンニュウブニキマシタ!」
「マジでか?」
そう、何とジョンソン君は化学部への入部希望者だったのだ!
あ、ちなみに今、杵島先輩と琴浦さんは着替えに行っちゃってるからいません。
詳しくは前話。
なので、俺がジョンソン君の対応中。
「アノー?」
「は、はい?」
ジョンソン君、科学室内をキョロキョロ。
「カガクブッテ、ヒゴロナニヲシテイルンデスカ?」
「…………」
早速答えに詰まった。
……日頃、何してたっけ、俺?
日頃の部活
杵島先輩がくだらない実験をして自己満足する。
俺、後ろからそれを見ているだけ。
…………。
「……化学部では日頃から、高度な化学実験を行い、それをレポートにまとめています」
部員確保優先のため、9割方嘘の情報を流す。
そう、ここでジョンソン君に入部を断られたら、4月中に5人の部員確保ってのが難しくなる。
「コウドナカガクジッケンデスカ……」
うーん……と、何かを考え込むジョンソン君。
ってか、カタコトの日本語聞き取りにくいがな。
読者、カタカナだと読みにくいがな。
「アノー、コウドナカガクジッケンッテ、グタイテキニドンナコトヲ?」
「……え?」
ジョンソン君、まさかの不意討ち。
青い瞳が俺を凝視。
「ぐ、具体的にどんな事かって?」
「ハイ!」
輝くジョンソン君の瞳。
理科、好きなんだね。
日頃の実験内容
リトマス紙
蜜柑に電流
中和実験
風船パーン
「……主に、ニトログリセリンや液体窒素を使った、特別な実験を少々」
そう、ハンマーで叩いたり、グミ凍らせたり。
これは7割方本当だろ!?
「ニトログリセリンッ!? ソレ、キケンナバクヤクデスヨネ?」
ジョンソン君、興味津々。
「え? あ、ああ……」
ニトロって、爆薬なの?
俺、あんまし知らないんだけど……。
「スゴイデス、オモシロソウデス!!」
ジョンソンテンションアップ!!
俺、疲れてきた。
あと、いい加減カタコト日本語やめれ。
「ホ、ホカニハドンナコトヲ?」
「ほ、他にはって?」
他には?
何をしてたかって?
化学部の日常
基本ぐーたら。
「……他には、まぁ、色々やってます」
……茶化す。
「イロイロデスカ……ウーム」
おっと、何かを考え始めたジョンソン!!
なんか怖い。
「……ジャア、ヒトツキイテイイデスカ?」
その時、何故か突然真剣な眼差しになったジョンソン少年。
キリッとしてる。
「質問か? ど、どうぞ?」
やべっ
俺、ちょっとキョドってる。
「ジャア……」
そして、ジョンソン君は禁忌に触れた。
「……ブチョウサンハ、アナタデスカ?」
真顔ジョンソン。
「……NO」
俺、即答。
で、
「ジャア、ブチョウサンハイマドコニ?」
……こやつ、さっきの白昼堂々スク水着てた変態女が部長だとは気付いてないな。
「……部長は今……多分更衣室だと」
お着替え中。
「……ナゼ?」
そ、それ聞く?
「いやだから、多分お着替え中かと……」
「……ナニ? ジャアイマ、ブチョウイナイノ?」
その時、突然空気が凍った。
……ン?
なんかジョンソン、ちょっと雰囲気が変わったような……
つーか、寒い。
「ぶ、部長は更衣室で……あ……その……」
「……イルノ? イナイノ?」
あのー……ジョンソン君、目が……怖いよ?
何? その鋭い視線?
「……はい、今はいませんが……何か?」
正直に言った。
ちょっとヤバいかも。
「ブチョウ、イナイノカ……」
その時、ジョンソンは椅子から立ち上がった。
何故か……黒いオーラを纏って。
……え?
「じょ、ジョンソン君……?」
つられて俺も立ち上がる。
その時
「……軽々と人の名前呼ぶんじゃねぇよ、この三下がッ!!」
……ン?
俺、絶賛フリーズ。
「テメェ部長じゃねぇんだろ? だったら用はねぇんだよ!」
ジョンソン君?
日本語、上手いね。
俺、もしかして幻聴聞こえてる?
「さっさと失せろ三下がッ!!」
鬼だコイツ
鬼の形相。
ってか
「何だおまえっ!?」
に、二重人格?
「……黙れ三下」
「さっ……三下……」
突然グレたジョンソン君。
すげぇ日本語。
どこで覚えた?
「こっちはな、化学部入って、来年部長になって、有名理科大学に行くってシナリオがあんだよッ!!」
「シナリオ!?」
何だコイツ?
「だから今から現部長にゴビ売って、来年部長に推薦……ハッ!!」
その時ジョンソン、何故か突然我にかえる。
俺、相変わらずフリーズ。
「……アノー」
「……はい?」
またカタコトかい。
「スミマセンガ……」
「…………」
「……イマノ、ナシノホウコウデ」
「…………」
もう嫌。