元素32 元素な彼女は信じてる
「・・・嫌な空気だな」
ホテルのとある一室。
実時はそっと息を吐いた。
「これからが本番ってのに・・・」
龍牙も同じく、重いため息を一つ。
・・・重い空気の洋室のその部屋。
「辛勝ってとこか、今回は」
2人は・・・全身血まみれだった。
「・・・次は、負けるか。このままだと」
「はぁ・・・お菓子食べたい。糖分不足ぅ」
「・・・ソンナチダラケノスガタデイウナ。フンイキガダイナシダロ」
ホテルの地下、駐車場。
分厚いコンクリートの柱の陰に、2人の人影が。
「・・・うん、そうだね。ごねん、不謹慎だった」
「・・・ナンダ、ヤケニヒトギキノイイ・・・」
「うん、だからアンタもこんな時くらい、そのキャラやめたら?」
「ナッ・・・・・・」
彼女・・・明子の言葉に一瞬たじろいだジョンソン。
「先輩のこれからがかかってんのよ。アンタもいい加減・・・」
「・・・分かってる」
「・・・っ!?」
そして、ジョンソンはその血に染まった拳を強く、握った。
「・・・俺はっ!!」
これは、科学的な、日常であり、非日常なとあるお話。
「・・・はがねよ」
「・・・なんだ、宝」
杵島はがねの捕われている部屋、その中央。
そこに、二つの人影。
「黒鉄は死んだ」
唐突に。
宝は言った。
なんの前触れもなく。
ただ、静かに。
しかし、どこか楽しそうに。
宝は、言った。
そして、はがねは・・・
「・・・バカか?
Оが死んだ?
・・・ははっ、おかしな事を、宝」
はがねは・・・笑っていた。
「・・・いかれたか?」
「いや、貴様ほどいかれてはないぞ。
ただ・・・」
そして、
「この地球から、酸素は決して無くならない。21世紀の今の科学ではな」
「・・・・・・」
「黒鉄は・・・貴様には殺せないほどの男だよ、宝!」
・・・そして、彼女は動き出す。
・・・そして、彼らは挑む、杵島の血に。
・・・そして、彼は生きる・・・彼女のために。
元素な彼女と記号な俺
第1章、完結。