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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
番外短編集
39/45

げんそなかのじょ! 5

作者の過去は黒歴史ばっかり!


げんそなかのじょ!


第5話「中学時代」




【中学時代1】


それは今から1年前、黒鉄徹哉中学時代。


「あーあ……高校受験どこ受けようかなぁ?」


中3の夏。

気温は30度を超え、額から汗が流れる。


外からは油蝉鳴く声が響く。


空は雲一つない快晴。


まさに進路先を決める時期。


俺は自宅の自室、机に向かい真剣に悩んでいた。


「う〜ん……やっぱり六角高校……いや、片菜高校……偏差値的には葉城高校か……」


「なぁに悩んでんだよクロテツさん」


机に向かう俺の隣、そこには二人の友達。


「雄治……そう言うお前は行く高校決めたのか?」


自室のオンボロ扇風機を独占し、大の字になって寝ている男。


名前は大谷雄治。


他人の家なのにパンツ一丁(暑いから)。


奇跡のデリカシーの無さから、ある意味勇者。


「俺はもちろん片菜にした。あそこは授業環境いいみたいだしな」


目を瞑り、暑ぃ〜と一言付け足す雄治。


ちなみに自室のクーラーは壊れており、修理に来るのが来週。


つまり今週地獄。


「いいよねぇ男子は。いつでも上脱げるし」


そして雄治の隣でうちわをパタパタしているのが施仗明子。


相変わらずのミニツインテール。


今日はオレンジのキャミソールにショートパンツ。


「ははん、男の特権だからなコレは」


雄治は自慢気にパンツをパタパタ。


自重しろ。


「なぁアキコ」


「めいこだっつってんのに!」


「お前は行く高校決めたのか?」


俺は椅子の背もたれに寄りかかってぐだぁ。


汗が止まらぬ暑さ。


もう着ているTシャツが汗で悲惨。


「アタシ? アタシは……まだ決めてない」


アキコは少し目をそらす。


「決めてないって……夏休みあと3日だぞ? それまでには行く高校決めないと……」


「だって仕方ないじゃん……行きたい場所が決まらないんだし」


アキコはいつもこうだ。


購入するお菓子を決める時と剣道の時以外は、即決力が皆無になる。


「いっそ明子も片菜に来るか?」


雄治、もはや口以外動いていない。


「片菜ってそもそも男子校でしょ。ユウはアタシを男子だと思ってるわけ?」


アキコさん反論。


「え、男子だろ? その腕力からして」


「うっさい!」


アキコ、寝ている雄治の腹に向かって踵落とし一発。


ドッ


「がはっ……」


むせる雄治。


「全く……だからユウはデリカシー無し男って言われるのよ!」


「んだよ……その暴力的な面からして男子……」


「必殺ドロップキック!!」


「ぐあっ……」


なんかコント的やり取りを後ろで展開している二人。


お互い暑さで汗だく。


熱中症になるぞ?






【8月31日】


今日は中学最後の夏休みの日。


俺は雄治とアキコと、またしても自宅で宿題片付け中。


まだ全然終わる気配の見えない量あり。


「もう夏休みも終わりだねぇ……」


俺は数学の宿題である因数分解を解きながら、ボソッと呟く。


クーラーの壊れた部屋。


丸机を三人で囲むように座り、背後ではオンボロ扇風機が首降り状態で頑張っていた。


机には宿題の山と麦茶。


「……今年の夏は、結局海も祭りも行かなかったな」


雄治は右手でペン回し。


回すな、書け。


「なんかずっとテツの家に来てたよね」


アキコは麦茶を一口。


「まあ、ウチ両親共働きだし、兄貴も姉貴も遊び呆けて家にはあまりいなかったしな」


つまり二人が来なかったら孤独だったって事。


「なんでだろう、クーラー無いのにテツん家、なんか居心地がいいんだよね」


「明子に同じく。なんでクロテツん家はこんなに居心地がいいんだ?」


「俺に聞くな。そして手を動かせ」


宿題終わらねぇぞ。






「……そういやクロテツ、お前高校決めたか?」


ふと、雄治が聞いてきた。


蝉が鳴き、扇風機の稼働音が室内に響く。


「……とりあえず、石鉄にしようかなと」


告白in the 俺。


「石鉄かぁ……確かあそこは文化部が有名なインドア高校だよな」


「そう。ほら俺運動音痴だからさ、文系の方がしょうにあってると思うし」


リアル運動は苦手。

だから、俺にとっては石鉄はいい高校だと思う。


多分素敵な部活ライフとかも送れそうなイメージだし。


素敵な部活ライフが。


「まぁ確かにクロテツにはピッタリだな。……そんで明子は?」


「え、アタシ?」


何故かビクッと驚く仕草をしたアキコ。


「明子はクロテツとは違って運動得意だから、星村高校とか征咲高校とかか?」


星村も征咲も、運動系の部活が盛んな学校。


アキコは剣道やってるから、やっぱりそんな所が似合う。


「あ、アタシは……その……」


何故かモジモジし出すアキコ。

何故だろう、なんか未来的デジャヴ。


「……もしかしてアキコ、まだ行く高校決めてないとか?」


「…………」


“アキコ”を反論せずに黙りこむアキコさん。


「おいおい、明日までだぞ高校選択。どうすんだよ……」


明日は学校に行き次第高校選択プリントの提出あり。


もう今日中には決めないとマズイ。


「あ、アタシは……」


アキコさんにいつもの覇気なし。


どうしたんだよ……




「……ちょっと明子、いいか?」


その時、雄治がペンを机の上に放り投げ、よっこらせと立ち上がった。


「……え?」


「いいからいいから、ちょっと来い明子」


ちょいちょいとアキコに手招きをする雄治。


アキコは大量の?マークを浮かべつつも、雄治に言われるがままに立ち上がり、雄治の元へ。


「ちょっと廊下こい」


「……うん」


こうして二人は、何故か廊下へと行ってしまった。


「…………は?」


俺、孤立。






【告白】


「お前、クロテツと同じ高校に行くつもりなんだろ?」


「えっ……」


「俺には分かんだよ、お前クロテツの事、好きなんだろ?」


「……は? あ、い、いや、べっ、別に好きとかそういうんじゃなくてっ!!」


「嘘つくな。顔真っ赤だぞ?」


「いや、だからこれは暑くて……」


「……明子、素直になれよ」


「うぅ……だから」


「明子」


「うっ……わ、分かったわよ……」






「……正直、テツの事が好きなのか好きじゃないのかは分からないの」


「ほう、まだ友達気分だと?」


「うぅ……その、何て言うか、テツの側にいると楽しいんだよね」


「楽しい?」


「うん。なんかね、他の女友達と遊んでいる時も十分楽しいんだけど、なんか、テツと一緒にいると、また違った特別な楽しさがあると言うか、何と言うか……」


「…………」


「こう、なんかふわふわするって言うか、暖かくなるって言うかさ」


「…………」


「だから好きなのかとかは分からない。けど、テツとまだ一緒にいたいって気持ちがあって、だから、アタシもテツと同じ……」


「そういうのを、好きって言うんじゃねぇのか?」


「えっ……」






【夕暮れ】


「中々終わらねぇな、宿題」


「だな。もうこりゃ徹夜覚悟かもな」


「えーっ、アタシまだおやつ食べてないんだけどぉ!!」


三者三様の意見を述べつつ、俺達は宿題の山の崩落作業に取りかかる。


ちなみにまだ富士山、いやヒマラヤよろしくの宿題の山が三人分。


もう登頂は絶望的だ。


「とにかく徹夜だ! 宿題の片付けを第一にだ!!」


あまりに追い詰められた精神は、時に異常をきたす。


俺は壊れかかっていた。


「やべぇ、クロテツが壊れ始めた」


「こら雄治喋る暇あったら手を動かせやこらー!!」


「本当だ……テツが壊れた……」


「こらアキコもさっさと宿題やれー!」


「めいこだよパワーボム&じゃあお前も宿題やれよ飛び膝蹴り!」


ドカッガバッ


「ぐはっ……」


俺、ノックアウト。






「そうだ、徹夜するなら夜食とか必要だよな」


その時、雄治が一言提案。


「クロテツ、確か近くにコンビニあったよな?」


「あ、ああ。あるけど?」


ああ、そういや昼から何にも食べてないなぁ。


何か焼きそば食べたい。


「じゃあさ、クロテツと明子で買い物行って来てくんね?」


「ぶっ……」


雄治の言葉に何故かアキコが吹いた。


「ん? ああ、まあいいけど」


「あ、アタシも行くの?」


何故動揺すんだよ。


「ああ行ってこい。俺は冷やし中華とコーヒー牛乳な」


雄治はペンをくるくる。


「後で金払えよな。……よし、じゃあ行くかアキコ」


「だからめいこっ!!」


こうして、俺とアキコは二人でコンビニに買い物へ。


そして、アキコが石鉄を受けると言う事を聞いたのが、この買い物へ行く途中の道端だった。

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