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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
杵島家強襲篇
34/45

元素27 物語は静かに動き出す

村實ホテル


町の外れにある小さなホテル。


そこの201号室、シックな洋室のその部屋に、彼らはいた。


「結晶、黒磨、蛍、金造、紫乃。明日の朝一番の飛行機で大阪まで飛ぶ。遅れるなよ」


杵島ギンは室内にいるメンバーを一瞥。


部屋のソファーには五人の杵島家の人間。


「ギン、そういえばはがねはどうした?」


結晶は自らの薙刀の手入れをしながら、ギンに問う。


「はがねか……隣の部屋で大人しく寝ている」


ギンはそう言うと、部屋の窓から外を見た。


外は既に暗く、町の明かりが幻想的だ。


「……ハッ、杵島のおもちゃの分際で生意気な野郎だ」


ギンは笑っていた。

目を細め、窓ガラスに写った自分を見ながら。


「……全く、兄と妹は全然似てませんね」


そう言ってソファーに腰を掛けているのは、見た目二十歳くらいの女性。


スレンダーな体型に、黒のストレート。


「……なんだ紫乃、お前分かってるじゃねぇか」


ギンは女性―――杵島紫乃の方へと振り向いた。


「確かに俺とはがねは似ていない。血は繋がってんのにな」


「まぁ、私ははがねよりもギンさんに着いていきますけどね!」


紫乃はギンの側により、べったり。


「ギンさんこそ杵島の主。私達の希望」


「紫乃、酒飲んだか? アルコールの匂いがする」


「年代物の赤ワインを少々」


頬を赤く染め、ギンに身を委ねる紫乃。


「……人前でいちゃいちゃしてんじゃねぇよ」


その時、黒磨がソファーから立ち上がる。


「金造、行くぞ。こんな所にいたら脳が腐る」


黒磨の呼び掛けに金造―――牛渓金造が反応、黒磨の後をついて部屋から退室。


「……相変わらず黒磨はクール、金造は無口だな」


ギンはテーブル上にあった赤ワインを一口。


「あらギンさん、それ私のグラス……」


「別にいいじゃねぇか、グラスくらい」


グラスの中の赤ワインを飲み干し、ギンは一息。


「牛渓金造……代々杵島家の守護に仕える武道一家牛渓家の次期当主……ってかやっぱり牛渓家の連中は皆無口だな」



空のグラスに写るのは、ギンと紫乃の姿。


「……蛍、はがねに夕食でも持っていけ」


ギンはソファーに座り、漫画を読んでいる蛍に命令。


「夕食? 別にいいけど……」


読んでいた漫画を閉じ、素直に言うことを聞く蛍。


机の上に置いてあるトレーを持ち出し、適当に料理を小皿に乗せる。


「えーっと、姉貴は漬物とかが好きだから……」


蛍は和食中心の料理を乗せ、そのまま部屋を後にした。
















「……そろそろかな」


同時刻、村實ホテル裏の小高い山。


その麓の一本の木に寄りかかる、人影が1つ。


「……はがね」


その人影は、ぐっと右拳を握っていた。


「……絶対に助け出してあげるからな」


その人の瞳は、とても力強く輝いていた。

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