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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
杵島家強襲篇
32/45

元素26 今回は説明回ですが飽きずに読んでね by黒鉄徹哉

午後9時

石鉄高校、保健室。




俺は半ばアキコとジョンソンに連行される形で、学校へと来ていた。


背中にケガをおい、意識のない琴浦さんは、政長さんのバイクで運んだ。


今さらだけど、アキコは真剣を持ってるし、政長さんは銃を持っている。


そもそも、政長さんと吉崎さんとは初対面。


アキコとジョンソンは至るところにケガを負ってるし。


これは一体、何なのだろうか……。


俺はとにかく、なるがままに学校へ。














「無事だったか?」


学校の保健室。


廊下は当たり前に暗く、電気がついていない。


静寂の保健室。


俺達以外には誰もいない。


目の前には、中澤の姿。


琴浦さんはケガの処置をしたのち、ベッドへ寝かした。


アキコとジョンソンもケガの処置。


吉崎さんと政長さんは椅子に腰掛けている。


「な、中澤先生。これは一体、何なんですか?」


俺は聞いた。


杵島先輩がお兄さんに連れていかれ。

アキコとジョンソンは杵島家の人間に襲われたらしい。

琴浦さんも杵島家の人間に襲われて。

俺共々やられかけた時に、見ず知らずの政長さんと吉崎さんに助けられ。


正直言って、脳内がパンク寸前。


「……黒鉄、お前にも全てを話さないとな」


中澤先生は辛そうな表情を見せる。


「……お前達を学校へ呼んだのは他でもない、杵島家の事についてだ」


















杵島はがねは、裏社会の一角を握る、杵島の家に産まれた。


裏社会の家に産まれた以上、全ては裏の世界で生きる事となる。


杵島はがねは中学校まで、家と関係のある裏の中学校へと通っていた。


しかし、杵島はがねは裏社会を嫌った。


裏には自由がない。


そして裏には、人を思いやる気持ちがない。


元々理科が好きだった杵島はがね。


裏の世界で生きるためには、護身術や表社会からの干渉を拒むための知識を得る必要がある。


はがねはそれを嫌った。


人を信じず、己だけを信じる裏社会。


大好きな理科が出来ず、黒い知識だけを学ぶ裏社会。




はがねは家を飛び出した。


友達が欲しい。

理科を勉強したい。


ただ、それだけだった。


裏にはないそれだけを求めて、はがねは裏を出て、表へと旅立ったのだ。


そして、そんなはがねを保護したのは、たまたま杵島家と面識のあった中澤。


はがねの事情を知った中澤は学校近くのアパート1部屋を借り、はがねに貸した。


一人暮らし。


はがねはその後、中澤のツテで石鉄高校へと入学。


部活は化学部に入部。


先輩であり、はがね入学当時の化学部部長柚葉彩音や、入学当時の物理部部長の政長実時、そして実時の友人吉崎龍牙。


大好きな理科―――化学を楽しみ。

そして、多くの友人達と学園生活を送っていったのだ。


そして今。


杵島家ははがね奪還のため行動を起こした。


後継者のために……














「杵島はがねはただ、自由が欲しくて家を飛び出した。裏社会を嫌って、家を飛び出したんだ」


中澤は続ける。


「しかし、杵島家は後継者のためにもはがねを連れ戻そうとしている」


俺は思い出していた。


夕方、杵島ギンに連れていかれる先輩の、あの表情を。


「はがねは本当は裏社会なんかには戻りたくはないんだ。けど、状況からして、みんなのために自らの自由を捨て、杵島家に戻ったんだと思う」


……くだらない。


「俺は裏ルートから杵島家の動きを察知したのが今日。政長と吉崎に連絡して施仗、中臣の救助へと向かわせた」


…………。


「……先に言っておこう」


その時、中澤の表情が変わった。


「杵島家の狙い。それは……


はがねと繋がりの深い黒鉄徹哉を殺害し、その他部員や知り合いを拉致、監禁。

はがねにはそれを知らさず、表の組織が殺害監禁したと言うデマを教える。


そうすれば敵討ちとして、はがねは裏社会の活動に精を出す。


つまりははがねの裏社会での意欲を上げるために、キミらは利用されつつあるのさ」


バシッ!


その時、俺は机を殴った。


「……中澤先生、俺は杵島はがねを連れ戻してきます」


「…………」


「今年の文化祭ね、ウチの部活はコスプレ実験教室をやるんです」


「…………」


「なのに、その発案者がいないとか、マジあり得ないんで」


「…………」


「だから今先輩がいる場所を教えて下さい」


「……杵島家は裏社会だ。一般人なんか簡単にやられるし、そもそもお前は殺害ターゲットにされてんだぞ?」


「そんなもん知りません。俺は杵島はがねに文化祭の責任をとらせるだけです」




その時、中澤が笑った。


「……バカめ」


















「先輩をなんとしても助け出す!」


「テツ、包帯とれかかってる!」


「センパイ、マッテイテクダサイ!」


「はぁ、なんで俺まで……」


「……ヤツには昔に借りがある。だから今回は力を貸そう」




黒鉄徹哉

施仗明子

中臣ジョンソン

政長実時

吉崎龍牙




今、学校の校門に立つ。



『杵島はがねは今、町外れの村實山のふもと、村實ホテル内にいるはずだ。今は杵島本家のヤツが出払っているため警備は手薄。狙うなら今だ』


中澤先生は元、杵島家の情報収集科にいたことがあったらしい。


何でも、杵島先輩が家出する事を事前に話した唯一の人で、その時先輩と一緒に杵島家を出たとの事。




俺達は今、中澤先生お手製の防弾ベストを着用し、耳には小型の無線。


「……あの」


『これは以前杵島家から出る時に使った戦闘道具の一部だ。いやぁとっておいて良かった』


「いや、その……」


『施仗、中臣、政長、吉崎は武道に通じ、なおかつ強い。黒鉄、お前はしっかり守ってもらえ』


「いやだからね、アンタは来ないのかと……」


『俺は琴浦さんをしっかり守っているから!』


「…………」


ちなみに琴浦さんは未だ意識戻らず。

傷は深い。




『いいか、杵島家は人1人殺しても無かった事にできるくらいの裏権力を持っている。だから死んだとしても助けるだけ無駄。だから俺は助けないからな』


つまりは自力で何とかしろと。




今回の目的は杵島先輩の奪還。

+琴浦さんの敵討ち(あ、まだ琴浦さん死んでないよ!)


杵島先輩は俺達に迷惑が掛かるからと、自らの自由を捨てて杵島家へと戻っていった。

望みもしない裏社会へ……。




基本他人に迷惑かける事に定評のある杵島先輩。


……全く、何やってんだか。




俺は杵島先輩に文化祭をやらせるために、先輩を連れ戻しにいく。


それでいい。


とにかく、杵島先輩に会いに行こう。




「さて、行くか」

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