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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
杵島家強襲篇
29/45

元素24 とうとう解説役にまで成り下がった主人公のお話

鈍く光る刃が、地面に倒れている俺達目掛け、振り下ろされた。


薙刀の重さは結構なモノらしい(黒鉄徹哉脳内リサーチ調べ)


それを軽々しく振り下ろす杵島結晶は化物だ。






人気の無い夜の公園。


まるでスローモーションのように感じる、この時。


街灯の灯りが刃を照らし、結晶の顔に濃い影を作り出す。


その口元は歪んでいる。


底知れぬ恐怖。

死に対する畏怖。


今更になって沸き出てきた感情。


刃は俺の目の前にまで迫ってきている。




俺はただ、倒れている琴浦さんの身体に覆い被さり、盾となる事しか出来なかった……。





















「施仗桜花流三ノ型“夜桜”ッ!!」


シュッ!!


「っ!?」


その時、結晶の背後で何かが動いた。


俺達に振り下ろされた刃は宙で止まり、とっさに反転した。


直後


ガキッ!!


結晶は咄嗟に振り返り、薙刀を縦に構え、その刃を防いだ。


「うわっ、危なっ!」


結晶は汗を一粒流し、息を吐く。


……そして、結晶の背後から奇襲を仕掛けた人物が、口を開いた。


「中々の反射神経ね」


彼女は刀を引き、再び構えの姿勢に。


「……お、お前っ」


俺は思わず口をパクパク。


そこにいたのは……



「テツ、大丈夫……ってうわっ、凄い血が出てんじゃん!?」


目を見開き、俺の赤い右肩を見たアキコの声は裏返っていた。


そんなアキコはTシャツにショートパンツ姿。

まさにラフ。


……しかし、その桜色のTシャツの右肩部分は真っ赤に染まっており、しかもアキコの首もとには真っ白な包帯が巻かれていた。


左頬には切り傷、右膝には擦り傷。


「お前……」


俺は先ほどの中澤からの電話を思い出す。


『他の化学部の連中も杵島家と接触しているハズ……』


まさか……


「テツ、肩大丈夫!? 琴浦さんは!?」


結晶の薙刀を刀で払いのけ、こちらへ駆け寄ってくるアキコ。






その時、アキコの後ろで何かが鈍く光った。


「……っ、アキコ後ろだッ!!」


俺は咄嗟に叫ぶ。


「……え」


その時、一瞬で体勢を立て直した結晶が、片手で薙刀を振るう。


「油断したね」


結晶の顔は笑っていた。


「危ないっ!!」


「分かってるわよ!」


俺の目の前。

アキコはすぐさま刀を地面と垂直に構え、姿勢を低くする。


そして……


「施仗桜花流八ノ型“葉桜“ッ!!」






相手の横斬撃を縦の刃で受け止め弾き、さらに姿勢を低くし攻撃を防ぐ。


その瞬間右足をバネにし、一気に跳躍。


相手の頭上に飛び込み、怯んだ相手の顔から胸にかけて強烈な縦斬りを放つ。


相手の攻撃を受け止め、一瞬にして攻めに転じるカウンター技、施仗桜花流八ノ型“葉桜”。


これは薙刀や槍など、リーチの長い武器を使う相手などに有効だ。






「なにっ!?」


薙刀の横斬撃を刀で弾いた直後、アキコは迷う事無く結晶の目前へと跳躍した。


それにより、結晶は一瞬反応に遅れる。


その一瞬こそが、葉桜のカウンターの時。


「……はああああぁぁぁぁっ!」


アキコは、刀を振り下ろした。
















今更だけど、アキコが持っているのは真剣だ。


本物の日本刀。


きらり〜ん。




「カウンターかい、いやぁ危ない危ない」


結晶の頬には大きな切り傷。


しかし、傷自体は浅く、出血も微量。


「……やっぱりアンタ、反射神経だけはめちゃくちゃ凄いわね」


アキコの頬には一粒の汗。


俺は今、常人では理解不能(ぶっちゃけ俺も理解不能)な、高速の剣技を目の当たりにした。


アキコが結晶の薙刀を防ぎ、一気に頭上へと飛び込んだ所までは、俺でも確認できた。


しかし、薙刀を振るったままの状態だった結晶は、咄嗟に薙刀を引き、自らの腹に柄をぶつけた。


その衝撃で結晶は後ろへぶっ飛び、アキコの攻撃をかわしたのだ。


アキコの刀は結晶の頬を数センチしか捉える事が出来ず、結果浅い傷しか作れなかった。


「施仗桜花か……君は施仗明子さんって訳ね」


結晶は薙刀を両腕で低く構える。


その顔は相変わらずニヤニヤ。


「そう言うアンタもどうせ杵島家の人でしょ!?」


アキコは刀を構え直し、左足を少し引き、右肩の位置を少し前に。


あれは確か……以前某物理部に襲われた時に使ってた構え……


施仗桜花流一ノ型、桜吹雪!!




「アンタがテツと琴浦さんをやったの?」


アキコは刀を構えたまま、結晶に問う。


「ああ。まあ元々、黒鉄君には手を出さないハズだったんだけどね」


結晶も薙刀を構えながら、その問いに答える。


「そう……」


アキコの表情は暗い。


そして、しばらくの沈黙の後、アキコは重そうな口を開いた。




「やっぱり……杵島家の人は……テツだけを殺すつもりなのね」




「……は?」


今この場はシリアスな空中パンパンだ。


あんまし茶化したくない。


しかし一言だけ、一言だけ言わしてくれ。




「何言ってんのお前っ!?」

おまけ、随時更新


施仗桜花流剣技一覧




一ノ型“桜吹雪”

強烈な横斬撃。

施仗桜花の基本技。

シンプル故に力が全てを語る。


二ノ型“鏡桜”


三ノ型“夜桜”

切り抜けざまの斬撃。

一子乱れぬ動きで相手に回避の隙を与えない。

スピード命。


四ノ型“乱れ桜”


五ノ型“桜草”


六ノ型“彼岸桜”


七ノ型“垂れ桜”


八ノ型“葉桜”

カウンター攻撃。

リーチの長い相手に有効。

相手の頭上に飛ぶので基本脚力に依存する技。

あと相手にかなり接近するため、勇気依存技でもある。


九ノ型“桜華”


十ノ型“百桜繚乱”






桜の名前とか桜云々の名前とか、調べるの大変でした。


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