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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
杵島家強襲篇
24/45

元素21サイドストーリー Au編

黒鉄徹哉が杵島ギンと遭遇していた頃。




東京、秋葉原






「ったく、カタコトキャラ設定は疲れるぜ」


彼は電気街を歩いていた。

金色の髪に、整った顔。

ブレザーの制服を着崩しつつ、大量の紙袋を引き下げ歩く彼。


中臣ジョンソンだ。


アメリカ人の父に、日本人の母を持つハーフ。


「中臣氏は確か、学校ではカタコトキャラを作っているのでしたっけ?」


ジョンソンの隣には、小太り気味の男。

天然パーマの頭に、チェック柄のTシャツ。

背中にはリュック。


彼もまた、アニメのキャラが描かれている紙袋を大量に持っていた。


「ああ、何しろ俺はキャラ薄いからな。何かインパクトある設定がないと、空気になっちまうから」


「おおぉ、流石は中臣氏!! 策略家ですなぁ!!」


ジョンソンは自分をおだてる隣の男に対し、普通の日本語を使っていた。


キャラ作り……


「……そうだ黄池。この後、アニメイトにも寄ってくか?」


ジョンソンは隣にいる男―――友人の黄池太郎に提案。


「そうですね、まだ時間あるし、寄っていきますか!!」


黄池はその太い腕に巻いてある腕時計を確認し、時間を確認。


「中臣氏、なんか狙っているモノでも?」


「決まってんだろ。今年の夏アニメのグッズ探しだよ」


「流石は中臣氏、アニメオタクですなぁ!!」


「お前もだろ。それに俺、学校ではオタクって事隠してるからな。たまにはいいだろ」


こうして二人は、そのまま秋葉原の中心へと歩いて行った。
















「いやぁ、しかし今年の夏アニメは豊作ですなぁ!!」


「だな」


現在夜の7時過ぎ。

秋葉原での買い物を終えた二人は、地元へと帰ってきていた。


ちなみに二人共、手には大量の紙袋。


「今年の夏はなんといっても“メイドなアニマル”のアニメ化! 楽しみですな中臣氏!」


「ああ、あのラノベ原作のあれか」


「やっぱり俺は鯨岡さん派だなぁ」


「黄池はホントに黒髪ロング好きだな」


そんな話しをしながら、二人は帰路に着く。






「では、ウチはこっちなので!!」


そして、とある交差点。


「ああそうか、黄池は紅葉町だっけか」


そう言うと、ジョンソンは軽く手をふった。


「じゃあ、ここで」


「では。中臣氏、また来月も行きましょう!」


「ああ」


ジョンソンは黄池と別れ、一人自宅の方へ。


「来月か……予定空いてたかな?」


そんな事を考えながら。




その時……


「はあああぁぁぁっ!!」


ブオオオォォォン!!


「……っ!!」


ジョンソンの前に突然、拳が迫っていた。


「なっ……っ!?」


ジョンソンは咄嗟に反応。

体をひねり、その拳を回避。

体勢を立て直す。


「あ、危ねぇ!」


ジョンソンの目の前。

そこには、見ず知らずの一人の女子が拳を構え、立っていた。


「ちっ、外したか」


その女子は……ジョンソンよりも背が小さい。


夏用のセーラーの制服、まだ若干幼さの残る顔。


「……子供?」


確かに子供。


「……アンタ、杵島はがねの関係者でしょ?」


彼女は拳を構えたまま、ジョンソンを凝視。


その長い黒髪ポニーテールが、少し揺れた。


「……センパイノ?」


ジョンソン、杵島はがねの名前を聞いた途端にキャラ変更。

カタコトになった。


「……そう。確か君は……中臣ジョンソンだっけ?」


「…………」


ジョンソンが無言になったのを見て、彼女は少し笑った。


「……当たりね」


次の瞬間……




フワッ




「……ナッ!?」


ジョンソンのすぐ目の前、そこには拳を構えた……


「悪いね、ちょっと拉致させてもらうよ!」


「……速いッ!」


かなりの速さでジョンソンの懐に潜り込んだ女子。


そのあまりの速さに、ジョンソンは一瞬反応に遅れた。


「しまった……」


回避は不可能。


そう判断したジョンソンは、すぐさま受け身の体勢へ。


「はあああぁぁぁッ!!」


次の瞬間ッ!!


ドオッ!!


「ぐはぁッ……」


かなりの勢いを持った右拳が、ジョンソンの腹部に直撃。

一瞬だが怯む。


「まだまだっ!!」


その一瞬の隙に女子は再度拳を放つ。


今度は左で。


「ガバッ……」


そして、それも直撃。


しかし……


「はああぁぁっと!!」


続けざまの回し蹴りのコンボ。


その靴の爪先がジョンソンのみぞおちに入り、さらに追撃の右拳も直撃。


「……ッ」


流れるような、打撃のコンボ。

そのあまりの速さに全て直撃を食らったジョンソンは、地面に倒れ込んだ。


「げほっげほっ……」


口の中を切ったのか、ジョンソンは血を吐いた。


「おぉ! 君、意外と体頑丈だね。喧嘩とかよくしてんの?」


一方の女子は、倒れたジョンソンを上から見下し、すまし顔。


「普通だったらとっくに気絶してんのに。まだ意識あるなんて凄い!」


「……ぅっ」




中臣ジョンソンは日本育ちのハーフ。


そのため小学生時代、ジョンソンはハーフということで周りからいじめを受けていた。


特に暴力。


クラスの男子から殴られたり、蹴りを食らったり。


そのたびに、ジョンソンはそのいじめをした子に仕返しをしていた。


殴られたら殴り返し。

蹴られたら蹴り返し。


それは中学でも変わらず。




そのためジョンソンは、多少喧嘩にはなれていた。













「……お前は」


体をぼろぼろにされたジョンソン、この口からは小さな声しか出ない。


「何? 聞こえないよ?」


わざとらしく耳に手を当て、ジョンソンをおちょくる女子。


「……お前は何者だ」


「ああ、そう言えば言ってなかったわね」


すると女子は、オホンと咳払い。


「私は杵島蛍。杵島はがねの妹で中学三年生。よろしくねっ!」


「なっ……せ、センパイの……?」


「そう。今は姉の友達を片っ端から潰している所なのです!!」


すると蛍は、倒れているジョンソンの目前に拳を構える。


「姉が何の未練もなく杵島家に戻れるよう、こっちも必死なのですよ」


「杵島……家……だと?」


ジョンソンの瞳は、もう力のない瞳をしていた。


「そっ! だからさ、とりあえずは君たちを拉致して、姉の目の届かない所に置いておくの!」


そして蛍は、笑顔で拳を放った。


「そう、黒鉄徹哉以外の人間を……ね」


「……ッ」





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