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元素な彼女と記号な俺  作者: 五円玉
化学部日常篇
17/45

元素16 濁流を逆そうするべからず

「くそぉ〜……焼きそばは食べられ、賀谷には変な誤解を……」


「まぁまぁテツ、そう落ち込まない!」


「落ち込ませたのはお前だッ!」









結局、あの後賀谷はどっかへ行ってしまった。


しかも変な誤解付きで。


はぁ……。


「何!? そんなにアタシが焼きそば食べた事怒ってんの!?」


そして今、何故かアキコは急に若干機嫌が悪くなった。

何故だ。


「いや、別に焼きそばの事はどうでも……」


どっちかと言うと、誤解の方。


変な噂が広がらなければいいが……


「じゃ、じゃあ……もしかして」


「ん?」


さっきとは違い、今度はちょっと俯き気味のアキコさん。

感情豊かだね。


「その……あ、アタシとテツが付き合ってるって誤解が……嫌なの?」


「…………」


こいつ、読心術とか心得てる?


「そ、そうなの?」


「あーその……えっと……」


……この場合の的確な答えは何だ!?


正直に言うか?


けどアキコさん、明らかに暗い雰囲気だし……

ってか何で?


と、とにかくどうする、俺!?






「あ……いや、お、お前が嫌がるんじゃねぇかなと思って……その誤解」


結局、こんな感じでまとめてみました。


「……えっ?」


「いやだから、お前嫌だろ? こんなチンチクリンな男と付き合ってるって誤解されるのはさ?」


超絶自虐的な言い訳。


……そうだよ、俺はチンチクリンだよッ!


「…………」


「……あれ、アキコ……さん?」


ど、どうした?

何故黙る?


……ああ、チンチクリンとは会話するのも嫌なのね。


……複雑。


「……だし」


「ん?」


その時、アキコは超小さい声で何かを呟いた。


き、聞こえない……。


はぁ……聞き取れないから、仕方なく耳を近づけ……


「アタシは明子だしッ!!」


「がはっ!!」


叫ばれた。

耳元で。


ぎゃあぁぁぁぁッ!!


「ばっ、てめっ、耳元で叫ぶなバカッ!!」


み、耳がっ!!


「う、うるさいッ! アタシはアキコじゃなくてめ・い・こッ!!」


いやアキコで。


「あ、アタシは別に……その……て、テツでも……」


赤いぞアキコ。

何でだ?


……それより。


「み、耳がぁッ!」


「……へ?」


「へ? じゃなくて、耳がぁッ!」


まだキンキンする。

鼓膜ピンチ。


その時……。


「……ッ!!」


グイッ


「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁッ!!!」


耳をつねりやがった。


「な、何すんだテメェッ!!」


被ダメージ1.5補正。


「……死ね、このチンチクリン野郎ッ!!」


「ぐはっ……」


精神に563のダメージ。

黒鉄は倒れた。

もう手持ちに戦えるポケモ……徹哉はいない。


……目の前が真っ白になった―――


















「フスベジムハスゲーキチクダヨナ? ドラゴントカキチクスギ!」


「……いつの時代の話をしてんだ金髪」


去年あたりにリメイクされたよね。

あれ、一昨年だっけ?


それより……


「ツラい……」


今日は賀谷とアキコの二人から嫌われました。


うぅ……(泣)


「Oよ、共に流れるプールへ行かないか!?」


「……ん?」


聞き慣れた声。

俺は振り返った。


「ほら、浮き輪も持ってきたぞO!!」


「…………」


そこには、黒いビキニ……てか、杵島先輩超大人っぽい!!


平らな胸以外は完璧なスタイル!!


「……ん? どうしたO?」


「あ、いや……」


な、何を見とれてんだチンチクリンな俺ッ!


自制心自制心……。


「スケベダナクロガネ。サスガコーイチダンシ」


「テメェも高一だろ」


このピチピチ競泳海パン野郎。






「……お、お待たせ」


それから数分後、向こうからやって来たのは……


「おおC、遅いではないか!!」


琴浦さん登場。


琴浦さん、フリルの付いたワンピース状の水着……ってか、


「…………」


い、色んな意味で凄かった。


「ど……どう……ですか?」


ぶはっ!


その水着でモジモジはアカンっ!


「凄く似合っているぞC!!」


杵島先輩跳び跳ねるなコラ。

滑るぞ。


「コ、コレガジャパニーズミスギ……ジャパニーズハレベルタカイ……」


「確かお前ハーフだろ、半分日本人だろ」


全く……


「……あれ?」


その時、琴浦さんが気付いた。


「施仗さんは?」


「ん、アキコ?」


ヤツはさっき、俺の耳つねって一人流れるプールに……


「…………」


で、流れるプールの方に目をやると……




「おりゃあああぁぁぁぁぁぁ!!」


バシャバシャッ!!




「…………」


流れるプールをクロールで逆そう中でした。


しかも監視員、アキコに気付いてねぇし。


「何やってんだアイツ……」


やけくそ的な感じだな。

何のやけくそかは知らんが。






「さて、私たちも流れる濁流の中に飛び込むとするか!」


「濁流は初めから流れてます」


プールを濁流と表現するクルパはほっといて、俺は浮き輪を持っていざ、流れるプールへ。


あ、決して泳げない訳ではないからね?


で、


「……ぬるい」


ぬるいプールを流され中。


……ぬるい。

そして


「人が多い……」


家族連れの方が半分、友達と来てますの方が半分といった所か。


とにかく、人が多過ぎてなかなか流されない。


「Auよ、私はここで水素発生実験をしてみたいのだが……」


「イイトオモイマスヨ、センパイ!」


……後ろから、何だかとっても危ない話声が聞こえたが、無視。


「すごい……本当に流される……」


隣で同じく浮き輪ごと流されている琴浦さん。


しかし、そっちを向くと自制心がうんぬんなので向かない。


この流れるプールに、俺の安息はないらしい。


その時……




「おりゃあああぁぁぁぁぁぁッ!!」




「……ヤバくね?」


前方から逆そうしてくる、危ないフラグの塊。


ヤバいよな、これ。


「あ、アキコ! 一旦止まれッ!!」


このままだとぶつかるぞ!!


しかし……




「おりゃあああぁぁぁぁぁぁッ!!」




聞こえてなかった。


で、もちろん……




バシャッ!!




「ぐおっ!?」


「痛っ!」


浮き輪にくる、もんの凄い衝撃!


すげぇ波。


ザプーンだよ。


そして……


「……っ!!」


何故か沈んでいくアキコ……って、


「ちょ、マズいッ!」


俺はとっさに浮き輪から脱出し、水中へ。


意外と深い流れるプール。


しかもネーミング通りに流れてます。


その中、アキコは無音で流れながら沈んでいく。


「……くそっ」


俺は必死に潜り、手を伸ばす。


届け……




そして……














「大丈夫かO、Liっ!?」


何とか力付くでアキコをプールサイドまで運んだ俺。


ああ……流れが辛い。


そして、後ろから流れてきた杵島先輩とジョンソン、琴浦さんが合流。


「けほっけほっ!」


アキコは大量に水を飲んだせいか、盛大にむせております。


……まぁ、意識はあるみたいで良かった。


「おいアキコ、逆そうは止めような……はぁ」


辛い……


「けほっけほっ!」


まだむせてる。


監視員は何だかあっちであたふたしているし。


「施仗さん、大丈夫?」


心底心配そうな表情の琴浦さん。


「けほっけほっ……だ、大丈夫」


しかし、今だ盛大にむせ中。


全く……



「とりあえず医務室行くか?」


「……大丈夫」


……やっぱりと言うか、何と言うか。


元気はないな。


いつものお菓子なアキコさんパワーはどこへやら。


まぁ、今は仕方ないか。


「……けど、やっぱり医務室へは行った方がいいぞ?」


だってずーっとむせてんだもん、アキコ。


「だ、だから大丈夫……けほっけほっ」


何で強がるかなぁ。




……しゃーない。


「わかった。俺が連れてく」


「……へ?」


だって心配なんだもん。


「先輩と琴浦さんとジョンソンは適当に遊んでてくれ。アキコは俺が医務室まで連れてくから」


「しかし……」


仲間の事となると、結構優しい&心配性な杵島先輩。


「大丈夫ですよ、医務室へ運ぶだけですから」


そして、俺はプールサイドに座っているアキコの肩と足に手を回し……


「おしっ!」


「ちょ……」


イッツァ抱っこ。

いわゆるお姫様抱っこってヤツ。


「さて、行くか」


「え、ちょ、ちょっと……」


「じゃ、ちょっくら医務室まで行ってくるんで!」


そう言って、みんなの元を後にする。






「……クロガネ、アレワザトヤッテンデスカネ?」


「……さあな。じゃあ、今度は濁流スライダーに行くぞAu、C!!」


「ま、待って下さいっ……」














「……ん? どうしたアキコ?」


現在医務室へ向かう途中。


なんかやけにアキコが静かだ。


俺の腕の中で微動だにしない。


「あ、アキコじゃないし……」


そしてやけに迫力がない。


「大丈夫か? マジで具合悪いとか?」


だったら大変だけど。


「いや……そ、その……」


そっぽを向くアキコ。

そのせいで表情がうまく見えない。


「ん?」


「いや、その……あ、ありがと……」


小さな声だったけど、確かにそう聞こえた。


「……どういたしまして」


まぁ、元はコイツがプールを逆そうしたのが悪いのだが……




まぁ、今はいいか。

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