元素15 今回の主役はある意味焼きそば
賀谷 由姫という女子がいる。
平仮名変換すると、かたに ゆき。
黒髪ショート、肌は白く爽やかな笑顔が特徴。
そしてそのボディは、あの琴浦さんに匹敵するほどのナイスな……。
彼女とは小学校中学校が同じ。
そう、あのお菓子なアキコと同じ境遇だね。
まぁ、中学校時代はそこそこ喋りはしていたけど。
それだけで、特別何かはなかった。
現在は何とお隣の県にある六角高校に通っています。
そう、我ら石鉄高校ではないのね。
で、現在アクアランド。
そこで俺は、中学校の卒業式以来約3ヶ月ぶりに賀谷と再会した。
全く変わってなかった。
まぁ、3ヶ月じゃあ変わらないか。
「久しぶりだな賀谷、元気してたか?」
「うん、元気にしてた!」
おお……相変わらずの爽やかスマイル!
この笑顔求め、中学校時代は男子が賀谷に群がっていたな……。
「そうか……ならいいや」
元気なら安心だ。
「黒鉄君は……今日は友達と来てるの?」
そう言ってジョンソンを指差す賀谷。
「……あれは友達じゃあない。エセ日本語使いの自己中ハーフ人だ」
「ダマレシゲボクノクロガネ」
中指突き立てるジョンソン。
何? 突き指させて欲しいのか?
「下僕?」
「ああ、あの自己中ハーフ人が俺の下僕って事」
「チゲーヨ、マチガッタチシキヲオシエルナクロガネッ!!」
「……カタカナだと読みにくいね」
「だろ? 批判がこないのが不思議なくらいだ」
「ソコニフレチャダメダロバカ!!」
ふぅ、ジョンソン激昂。
面倒くさい奴だ。
「……あ、あのね黒鉄君」
「ん?」
その時、賀谷が俺の腕をつついてきた。
何?
「あの……ひ、久しぶりに会ったんだし、たまには何か……食事でもしない?」
「食事?」
「うん……そ、そこのテラスとかでさ」
賀谷の視線の先には、白いテーブルがあるテラスが。
確かに腹減ったし……焼きそば食べたい。
……が。
クルパと琴浦さんとアキコを待たなくちゃいけないし……
さあ、ギャルゲー的選択肢!!
1、クルパ? 琴浦? アキコ? んなの無視無視。焼きそば食べようぜ焼きそば。
2、やっぱり先輩や琴浦さんを待たないと……元は先輩が連れてきてくれた訳だし……
3、ジョンソン、あとは任せたッ!! 俺はとにかく逃げるぜッ!!
……3はないな。
逃げたらアカンでしょ。
って事で。
「じゃあ焼きそばでも食べるか」
1を選択。
だってクルパ来ないんだもん。
ジョンソンは1人で未だ激昂中。
浮き輪に向かって怒鳴ってます。
痛い子だ……本当に痛い子だ……。
だからとりあえずは焼きそば!!
「ほ、本当!?」
「あ、ああ……腹減ったしな」
「そう……じゃ、じゃあ早く行こう!」
何故か爽やかスマイルな賀谷。
そんなに腹、減ってたのかな?
「この焼きそばうめぇな!!」
ソースと青のり、紅しょうがが見事ドッキング!!
「そんなに美味しいの?」
「うまい、うますぎる!!」
現在アクアランドのとあるテラス。
そこで俺は賀谷と食事中。
俺は焼きそば、賀谷はたこ焼き。
どっちも焼き焼き。
「このソースの甘味なんかは特にもう!!」
焼きそばうまい!
超うまい!
ソースヤバい!
「そうなんだ。黒鉄君、凄い笑顔だしね」
そう言う賀谷も笑顔。
「賀谷、お前も一口食べてみろよ!」
俺は焼きそばの皿を賀谷に差し出す。
美味しいものはお裾分け精神黒鉄君!
「えっ!?」
「うまいから!」
本当に美味しいのコレ!
「わ、私たこ焼きだから……お箸ないよ?」
そう言う賀谷の手にはたこ焼き用のつまようじ一本。
……仕方ないな。
「じゃあホレ、俺の箸使っていいから」
「えっ!?」
賀谷の顔が何故か赤くなった。
……湯だった?
「あ、もしかして俺の使った箸じゃ嫌か?」
相手は女子。
これでも一応、毎日歯は磨いているのだが……。
「い、いや、そう言う事じゃなくて……」
相変わらず顔赤い。
「ん? ああ、そう言う事か」
「はい?」
俺は全てを悟った。
多分今、賀谷は何らかの理由で箸が持てないんだ!!
手を痛めているとかで。
フフッ、名推理だぜ俺ッ!!
だったら…
「ホレ、口開けろ」
俺、箸で焼きそばを掴み賀谷の口前へ。
「ええッ!!」
さらに赤くなった賀谷。
何か林檎並みの赤さ。
「いいから、うまいぞコレ!!」
……後々考えると、この時の俺は大胆だったなぁ。
でもこの時は焼きそばの旨味の事しか頭になくて……。
「ほれ、あーん……」
「あ、あーん……」
賀谷の口が多少開いた。
よし、そこに入れ……
「頂きッ!!」
パグッ!!
「……え?」
その時、どっかからアキコが沸いて出た。
そして、賀谷の口にインするはずだった焼きそばを横から一口。
箸ごと持っていかれた。
って、
「なっ、おま、どこから沸いて出た!?」
水色を基調とした見た目爽やかなビキニ。
アキコは体育会系だからボディライン超スリム。
身長低いけど。
男の希望、青春の賜物は標準くらいの大きさ。
「あ、由姫じゃん! 久しぶり!!」
「おい、まず人の話を聞けッ!!」
全く……。
一方、焼きそばを取られた賀谷は……。
「あ、アキコ? 何で黒鉄君と一緒に!?」
素で驚いてた。
「だからアキコじゃなくて明子! め・い・こ!!」
いやアキコでいいだろ。
「何!? もしかして黒鉄君、アキコと……」
何か勘違いしてねぇか賀谷?
超真っ赤だった顔が今、超真っ青に……。
「だからめ・い・こだって言ってるでしょ!!」
「アキコ、それ以前にもっと解くべき誤解があるだろッ!」
「だからめいこだって!!」
あー面倒くさい!!
賀谷、顔青い。
よし、ここは強引にでも誤解を解こう!!
「いいか賀谷、俺とアキコは決して付き……」
「だからめいこぉ!!」
ああ痛い!
殴るなアキコ!!
「……うん、わかったよ」
だぁッ!!
椅子から立ち上がった賀谷。
きっとまだ誤解解けてないぞ!!
「待て賀谷、ちょ、焼きそばあげるから……」
「マジで! じゃあもらう!!」
「アキコ、テメェに言ってるんじゃねぇ! あっ食うなコラッ!!」
「うまッ!!」
「だから食うな……あっ、ちょ、賀谷ッ!!」
最悪だ……
うつむきながらあっち行っちゃったよ……
その背中からは何とも言えない負のオーラが……
「本当美味しいねコレ、特にソースがもう!!」
今回、一番幸せだったのはきっとコイツだな。
チクショー!!
「はぁ〜ウマっ!!」