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――第43章・反応攻撃――

第三の柱――


「葉山レイ、で間違いないか?」


「はい! その通りです!」


「ふむ。……靴を履く気はあるか?」


「このままでいいです。ありがとうございます」


 第三の柱の内部。月明かりに満ちた静かな結界の中で、ソレンとレイは向かい合って座っていた。周囲には湿地と湖が広がり、レイは白いドレス姿で裸足のままだ。


「チッ。本当に変わり者だな。だが、スキルは三つ解放済み、レベルも高い。――聞こう。お前はどのタイプの魔法士だ?」


 レイは手を掲げ、月光の盾を展開した。


「ルナ! 月! ……まあ、好きに呼んでください!」


 ソレンは立ち上がり、レイの周りを歩きながら観察する。


「タンク向きだ。……ただ、体格は細い。まだまだだな」


 彼が盾を軽く叩くと、反発で弾き返された。


「能力は実に見事だ。だがカイタンシャには役割がある。――耐えられるか?」


 レイも立ち上がり、胸を張る。


「何でも来いです! 防御の試練ですか?」


「いや。いやいやいや。そんな生易しい“試練”ではない」


 ソレンが手を叩くと、少年二人と少女一人が奥から現れた。レイはきょとんとする。


「ん? 誰ですか?」


「お前の生徒だ。タンクの役割は、仲間を守り、盾になること。もちろん攻撃もできるが――火力は彼らに担わせる」


「……誰から守るんです?」


「彼らの“姉”からだ」


 直後、地面が震えた。土の中から、セリカが姿を現す。レイと父へ、礼儀正しく一礼した。


「父上。ご命令を」


 ソレンは一歩引く。


「この娘を限界まで追い込め。弟妹に怪我が出ても構わん。覚悟はしている」


 そう言い残し、ソレンの姿は消えた。


 同時に、UIが浮かぶ。


〈目標:子どもたちを守れ〉

〈目的1:盾を15分間、破られずに維持せよ〉

〈目的2:目標ゾーンへ3回到達せよ〉

〈目的3:反応攻撃を7回使用せよ〉


「反応攻撃? 新しいやつだ!」


 遠くから、ソレンの声が響く。


『エレメントは互いに反応する。盾で守るだけではない。反応を“攻撃”に変えろ』


 声が途切れると同時に、セリカが地面を踏み鳴らした。


「ジュゲン魔法士:地砕きの報復!」


 土の杭がレイを囲む。レイは即座に盾を広げ、子どもたちを包んだ。


「ジュゲン魔法士:月光の護光!」


 土杭が盾に触れた瞬間、淡い白へ変質し――爆ぜた。


〈反応発生:大地の月光〉


『一回目だ』ソレンの声が淡々と告げる。『武器にしろ。急げ。私の娘は有能だ』


 セリカは足を引きずるように地を削り、土杭の波を放つ。すると少年の一人が前へ出て、指で銃の形を作った。


「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」


 弾丸のようなベクトルが土杭を貫き、真っ二つに裂く。セリカが一歩退いた。


「今のすごい!」レイが目を輝かせる。「何それ!?」


 少年は腰に手を当て、得意げに笑う。


「僕の必殺技! 指で撃つと、消えるんだ!」


「冗談じゃない! 名前は?」


「シズル! こっちは弟のセイラン、妹のサリナ!」


 三人が手を振る。レイも笑って振り返した。


「よろしく! 私はレイ!」


 サリナが返そうとした、その時――彼女の顔色が変わり、レイの背後を指す。


「レイさん、後ろ!」


 セリカが低く構え、掌の上で土を集めて形を作り始めた。


「ジュゲン魔法士:忘却の石槍!」


 巨大な石の槍が生まれ、盾に突き刺さる。盾にひびが走った。


(やばい! 割られる――!)


 シズルが前へ出る。


「僕がやります、レイさん!」


 指銃を放つが、セリカは槍を引き、横薙ぎで盾の側面を叩いた。衝撃で、盾の中の全員が転ぶ。


「がっ……!」


 レイは跳ね起き、月の紋章を呼ぶ。


「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」


 腕を薙ぐと月刃が走り、セリカの槍と衝突――触れた槍が月光へ変わり、爆ぜた。


〈反応発生〉


 爆風で盾はさらに傷む。レイは汗を浮かべ、歯を食いしばった。


(修復しないと……!)


 レイは両手を上げる。


「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」


 月光が盾を撫でるように走り、ひびが塞がっていく。だが、膝をついた途端、視界が少し暗くなった。


「レイさん、私が手伝います!」


 サリナが背中に手を置いた。


「ジュゲン回生者:エネルギー転送!」


 二人が淡く発光し、サリナの体から金色のエネルギーがレイへ流れ込む。サリナの髪が一本、灰色に変わった。


「はい! 生命エネルギーを少し使って、スタミナを渡しました!」


 レイは立ち上がり、体の内側に力が満ちるのを感じる。


「うわ……! でも、それ危なくない?」


「少しずつなら平気です! 私、若くて丈夫だから反動も耐えられます!」


「分かった! じゃあ早く終わらせる! サリナに無理させない!」


 レイが盾へ月光を流し込むのと同時、セリカの頭上に石槍が十数本、並んだ。


「……あ」


(それ、よくない……!)


 セリカが一気に放つ。爆ぜる反応と衝撃で盾は大きく軋んだ。


 セイランがドレスの裾を引く。


「レイさん……僕、何かしていい?」


 レイは背を撫でた。


「もちろん! どうした?」


「僕のスキル……姉に使えます。でも……盾の一部を開けてほしい」


 レイはセリカを見て頷く。


「いいよ! 気をつけて! 長くは開けられない!」


 月光の筋で盾に小さな穴を作る。セイランが両手で地面を叩いた。


「ジュゲン闘士:刃付きミニガン!」


 地面から刃のついたミニガンがせり上がり、セイランが掴んで乱射する。刃弾が姉へ飛ぶ。


「銃で金属!?」レイが驚く。「セイラン、すごいよ!」


「ほ、本当……?」


「本当! 私にも教えて!」


「む、無理だと思います……」


 セリカは避けるが、一発が肩をかすめる。彼女は両腕を上げ、土塊を盛り上げた。


「ジュゲン魔法士:守護の石板!」


 二枚の石板が刃弾を防ぎ、弾かれた刃がレイの盾へ当たり、またひびが広がる。


「しまっ……!」セイランが青ざめる。「ご、ごめんなさいレイさん! 姉がそのスキル持ってるの忘れて――!」


「大丈夫! そのまま時間稼いで! 私が盾を直す――!」


〈目標ゾーン:出現〉


 遠くに灰色の円が現れ、矢印UIが示す。


〈60秒以内に目標ゾーンへ到達せよ〉


「よし、作戦変更! ゾーンへ行くよ!」


 レイは月光の強い波で盾を修復しながら、円へ向けて前進する。だがセリカが前方に石槍を突き立て、進路を塞いだ。


『簡単に歩いて届くと思ったか?』ソレンの声が嘲る。『高レベルなら分かるだろう。ダンジョンは甘くない』


 セリカの槍が盾を押し返し、全員が後退する。レイは盾の一部を開けた。


「みんな、ここで遊んでて! すぐ戻る!」


 レイは盾の外へ跳び出し、月の紋章を呼ぶ。だがセリカは動かない。


「ん? 戦わないの?」


 セリカがレイの頭上を指す。


〈警告:10秒以内に盾へ戻れ!〉


「えっ!?」


 レイは慌てて盾へ飛び戻る。


「なんで!? 戦いたいのに!」


『できない』ソレンが冷たく言う。『タンクは盾だ。助けたいなら“内側”からだ』


 レイはゾーンの残り時間を見る。


「30秒……! みんな、彼女を引きつけて! 安全地帯まで運ぶ!」


「はい、レイさん!」


 サリナが兄たちの背に手を置く。


「姉ちゃん、無理すんなよ!」シズルが叫ぶ。


「レイさんの指示でしょ!」サリナが言い返す。「引きつけるって言った! 全力でやる!」


「……分かった。でもやりすぎるな!」


 レイが盾の穴を開けると、二人の少年が連携で攻撃を投げる。セリカは巨大な石板を作り、押し潰そうとした。


「……申し訳ない、弟妹」


「今じゃない!」シズルが叫ぶ。「ジュゲン滅者:狙撃爆弾!」


 石板の中心が爆ぜて穴が開き、全体が崩壊する。


「道が空きました、レイさん!」


 レイはその隙に盾を滑らせ、全員をゾーンへ導いた。


〈残り時間:0:05〉

〈ゾーン:1/3〉


「やった!」レイが笑う。「あと二回!」


 次の円は部屋の反対側に出現。同時に、セリカは石板と石槍を複合で展開した。


「複数スキル同時……!」セイランが怯える。「どうやって渡るんですか……」


 セリカが石槍を投げる。レイは腕を伸ばし、月の紋章で弾き返した。


〈反応発生〉


 槍は月光へ変わり、セリカが石板で防ぐ――だが爆ぜた月光が雨のように降り注ぎ、セリカを地面へ叩き落とした。


〈反応攻撃:1/7〉


 レイは自分の手を見た。


「……私、今のやった?」


 三人が口を開けて固まる。


「当たった!」シズルが歓声を上げる。


「私もやりたい!」サリナが食いつく。


 セイランが倒れた姉を指す。


「気をつけて! また来ます!」


 セリカは地面に踵を打ちつけ、土杭の嵐を放った。


「任せて!」シズルが前へ出る。


 指銃で杭に穴を開け、勢いを削いだ。レイは盾をセリカの周りへ滑らせ、次のゾーンへ向かう。


「逃がさない」セリカが低く言う。


 彼女は超大型の石槍を両手で形成する。レイは力を込め、月光のビームを放った。槍が月光へ変わり、セリカが一瞬止まる。


〈反応攻撃:2/7〉


(効く。でも……食らいついてくる!)


 レイは急いで移動し、ゾーンへ滑り込んだ。


〈ゾーン:2/3〉


『悪くない』ソレンの声が響く。『だが終盤は、思うほど単純ではないぞ』


〈目標ゾーン:出現〉


 レイは周囲を見回す。円がない。


「え? 部屋の中じゃない? 別の場所行く感じ?」


 サリナがレイの袖を引いた。


「レイさん、ゾーン見つけた!」


「どこ!?」


 サリナが指差した先――セリカの足元に、小さな発光円がある。


「……それは、問題だね」シズルが呟く。


「えっ、彼女!? 今まで避けてたのに!」


『子どもたち、覚悟を見せろ』ソレンが命じる。『ここで崩れるか?』


 レイは拳を握った。


「いける! みんな! 一分! 彼女をスタンさせて、その間にゾーンへ入る!」


「無理よ」セリカが石板を作り、その上に乗る。


 石槍の雨が降り、盾をかすめる。子どもたちが不安げにレイを見る。


「どうするの?」シズルが訊く。


〈残り時間:0:45〉


「信じて!」レイが言い切る。「私を信じてくれる?」


 三人が頷いた。


「セイラン、あなたが一番火力ある。盾から出て左で引きつけて! シズルは右で私と一緒! サリナ、まだいける? もう一回、力を貸して!」


「いつでも!」


「でも……姉に当てられたら――」セイランが怯える。


 レイは月光を纏う手を掲げる。


「当てさせない。助ける。――あなたの刃は金属でしょ?」


「……はい」


「じゃあ反応できる。金属魔法士だっているくらいなんだから!」


「……分かった。やります!」


 レイが盾に穴を開け、セイランが転がり出る。


「ご、ごめん姉ちゃん!」


 レイたちは反対側から回り込む。セイランが射撃すると、セリカは石槍で弾く。そこへシズルが指銃を向けた。


「ボン、バン!」


 石板が崩れ、セイランの射撃が通る。


 レイが狙いを定める。


「ジュゲン魔法士:月の明幻化!」


 レイのビームがセイランの刃弾の軌道へ走り、月光が金属表面で反射し始めた。


〈反応発生:月の反射〉

〈反応攻撃:3/7〉


 反射光がセリカの肩を焼く。セリカが眉を動かした。


「熱い……冷たい……どうして……」


 その隙にサリナがシズルの背へ手を置く。


「下の石板を狙って!」


「バン!」


 石板が割れ、セリカが体勢を崩す。彼女は防御の石槍を増やすが――レイが再びセイランへビームを投げた。


「撃って、セイラン!」


 刃弾がビームを掠め、壁で跳ね、石槍群へ突き刺さり、次々に月光反応で爆ぜる。


〈反応攻撃:4/7〉

〈反応攻撃:5/7〉

〈反応攻撃:6/7〉


(あと一発。スタンまで押し込む……!)


 レイは叫ぶ。


「セイラン、連射できる!? 今から“でかいの”送る!」


「……はいっ!」


 シズルが石槍を潰し続ける中、レイが腕を振り抜いた。


「ジュゲン魔法士:無人の夜の三日月!」


 巨大な月の紋章がセイランの前へ飛ぶ。セイランは狙いを定め、刃弾の雨を叩き込んだ。


「う、受けて……姉ちゃん!」


 刃弾が月紋章へ当たった瞬間、紋章が反射面となって月光の衝撃波を解放した。空間全体が震え、セリカも、その場の空気も、止まる。


〈反応攻撃:達成〉


 レイは盾を修復しながら、倒れたセリカの方へ滑らせる。


〈残り時間:0:04〉


 サリナがレイの脚に触れ、最後の力を流し込む。髪がさらに灰色へ変わった。


「……行って、レイさん……!」


 盾は前へ進み、時間切れ寸前で――ゾーンへ入った。


〈ゾーン:達成〉

〈盾維持:達成〉


 レイは仰向けに倒れ、笑った。


「やった……オマリロ先生、きっと褒めてくれる……!」


 頭を預けた、その耳元に――微かな囁きが落ちる。


〈よくやった……レイスさん〉


―――

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