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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

夢と現実

作者:
掲載日:2026/03/09

眠たい。最近よく眠れない。なぜだろうか。そう思いながら外を見た。窓を開けると、夜風が顔を撫でてきた。周囲は寝静まっている。夜の12時くらいだろうか。ここから見える他の家は電気がついてない。街灯だけが道を明るく照らしている。空をみて眩い星をみた。自分のものにしたいほど綺麗だ。けど自分のものにはできない。とても儚い。そんなことを思いながらベッドに入り寝ようと、準備をした。

「今日はよく眠れるといいな」

祈りのような独り言を呟き俺は眠りに入った。


第一夜

何時間寝たんだろうか。目をかきながら周りを見るとおかしいことに気づいた。俺は目を覚ましたはずだ。これは夢か?そう思い今いる場所から立った。何もないんだ。俺はベッドにいたはずだった。ここはどこだ。暗くてよく見えない。不気味だ。まるで見えない何かがこちらをじっとみている。そう思えるほどの暗闇が広がっていた。だが床の感触から冷たく固いもの。コンクリートがあるのは感じ取れた。周囲を警戒して見渡すと、わずかに光が漏れている場所を見つけた。ここがどこかわかるかもしれない。一縷の希望を頼りに光へ向かうとそれは刹那にして無くなった。

【希望などなかった。】

そう思うほどの絶望だった。光でうっすら見えて初めて気づいたが、大きな壁があった。光の原因は小さな窓だった。まるで獲物をそこに誘い込むように、月の光が集まっていた。外を見ると何もなかった。暗くて見えないとかでは断じてない。なにもない。はてなしなく続く奈落があった。しかも空から延々と雨のような何かがふっていた。かろうじてそれが月で光っているのがわかった。いや、

【光っているのしかわからなかった。】

不気味さが全身に広がる。あれは一体なんだ。俺は何を見ているんだ。そう疑問に思い体を動かそうとしたら体が動けなくなっていた。終わりの見えない奈落と得体の知れない何かに恐怖してしまっている自分がいた。呆然としていると反対側の場所にも光があった。さっきまではなかったはずだ。罠かと考えた。誘い込まれてる?そう訝しんだ。

「だれかいるのか」

大声で言うと、なにもかえってこなかった。おかしい。かえってこないのはまだしも俺の声が響いてない。この空間も終わりがないと気づいてしまった。震えが止まらない。これはなんだ。夢か?現実か?確実にここは危険だ。本能が逃げろと言っている。そして、また僅かな希望にかけ光へ向かった。罠だとしても行くしかなかった。

かれこれ10分は歩いた。光との距離が永遠に変わらない。抜け出せないループにハマっているようだ。ここから逃げたい。恐怖が頭を支配した。すると突然光との距離が縮まった。逃げれる。直感的に感じた。光はやはり月光だった。扉から漏れ出ている。向こうには一直線の道があった。奈落に囲まれている。扉をでて走り出した。緊張の糸が切れたのか、俺は寝転んでしまった。油断していた。突如足の感覚がなくなった。包丁でも人の足は切れる。そう気付かされた。片足が包丁で切断されていた。叫ぼうとしたが声が出ない。ある程度の恐怖を超えると、人は声が出なくなるらしい。これは本当だ。痛い。痛い。どこから包丁が来た。すぐにその疑問は晴れた。さっき窓から見た【何か】。雨だと思っていたもの。それは包丁だった。そう気づいた瞬間。走ってきた場所が崩れ去っていき、雨のように刃が数え切れないほど降ってきた。絶望。地獄。ぴったりの言葉だった。だがおれはなんとか逃げようと、這いつくばりながら前に進んだ。死にたくない。痛い。痛い。死にたくない。俺の気持ちに応えたかのように、突如扉が目の前に現れた。助かった。

「がしゃん、がしゃん」

刃が空中でぶつかり擦れ合う。恐怖の音。上を見上げた。

「は?」

間に合わなかった。身体中に突き刺さる。肉を切り裂かれる感触。【血は出ていない。】指、腕、足、徐々に感覚がなくなる。四肢が無くなり意識が消えゆく中最後に見たものは扉。

いや、【扉の向こうにいる俺だった。】


目が覚めた。家だ。帰ってきた。四肢もついてる。布団に汗が染み付いてる。

「悪夢か」

安堵するために、そう決めつけた。だが四肢がついてるのに、切られた感触がある。震えが止まらない。恐怖の音が頭に残っている。だが一つわかってたことがある。不眠の原因だ。最近眠れなかったのは、悪夢のせいだ。毎夜眠った後、なぜか布団が汗で濡れていた。俺はきっと自分を守るために記憶を無くしたんだ。そうじゃなきゃ説明がつかない。きっとそうだ。スマホを見ると日付が2日も変わっていた。そして、丑三つ時だった。背筋を悪寒が襲う。悪夢のせいか、体がどっと疲れていた。急激な眠気が襲う。薬を使い目を覚まそうとした。薬の作用で手が震えて薬を取れなかった。

「くっそ。ねたくない、ねたくない、悪夢はいやだ。たすけてくれ」

だれも助けてくれる人などいないのに助けを求めた。昔から助けてくれるのは薬だけだとわかっていたのに。そう考えながら俺の意識は薄れていった。


第二夜

またベッドじゃないところで目が覚めた。前回と違いすぐに場所はわかった。俺の知っている場所だ。逃げ出したい。昨日の悪夢とは違う恐怖が頭を支配する。忘れられないあの場所だ。全部覚えてる。ゴミしか入ってなかった下駄箱。教科書を破り捨てられた教室。集団で殴られたトイレ。全部鮮明に思い出される。その瞬間吐いてしまった。トラウマ。そう言うしかない記憶。それのせいで薬に手を出したんだ。吐き終わり、落ち着きを取り戻すよう歩き出した。俺が起きた場所は教室だった。ひとまず周りの状況を確認するため屋上に出ることにした。屋上から見回すと、周りは住宅がなく荒野しかなかった。暗いせいか、先が見えない地平線。奈落とは違う恐怖が俺を襲った。だか刃の雨が降ってない。ここから簡単に逃げれる。安堵と恐怖が入り混じった。昇降口へむかおうと震える足を進めた。突如後ろから音がする。後ろを見てはいけない。振り返らず逃げろと直感がする。だが好奇心に勝てなかった。見てしまった。空中に扉があった。扉から出てきたのは。【俺だ。】だが、体躯が違う。そして、右手には剣のような物。俺の顔に不気味な笑みを顔に貼り付けている。やつの口が裂いてきた。人じゃない。

「よお。殺しにきたぞ。」

聞き慣れた声で言ってきた。だれの声か思い出せない。だれだ。危険を感じだ。俺は全速力で逃げ出した。後ろからも足音がする。追いかけてきてる。走ったおかげか下の階に降りて奴の姿は見えなくなった。見えなくなってしまった。奴の居場所がわからない。どこで襲われるかわからない。震える。動悸が激しい。落ち着くため、近くにある教室のロッカーに隠れた。狭い空間で俺の呼吸する音しかしない。落ち着かない。ポケットに入れていた薬を飲んだ。頭がスッキリしてきた。状況を整理しよう。わかっているのは、ここは母校。周りは荒野。奴は俺を殺しにきてる。奴の体は、俺とは全く違う。筋肉隆々の体。服から見える全身に火傷痕。気づいてしまった。恐怖の象徴。俺をいじめたハイザキの体だ。

「おい、ごみカケル。はむかってみろよ。悔しくないのか?」

ハイザキは笑いながらトイレで殴ってきた。俺はうずくまりながから耐えている。気に入らないという理由。それだけでいじめられてる。だれも助けてくれない。そんな日常が高校の二年と半年続いた。疲弊し切っていた。生きるため。逃げるため。いじめられてる途中、ペットボトルに入れた灯油をかけた。ポケットに入れたマッチに火をつけた。

「てめぇ、いつか絶対殺す」

悶えながらあいつはそう言った。そのあとは、火が消え、体が冷たくなった。そのあとは捕まった。いじめられていたことも鑑みて、執行猶予がついた。だが親には見捨てられ、家を残して逃げられた。どん底だ。そうして俺は救いを求めるため、薬にのめり込んだ。

意識がはっきりしてきた。

「いやなことを思い出したな」

ため息を吐くと、歩く音が聞こえてきた。俺の顔のあいつだ。近づいてくる。教室に入ってきた。歩き回っている。ロッカーの隙間からは鮮明に見えない。突如あいつは、何かの液体を撒き散らした。臭い。その瞬間こっちを見てきた。口が裂けている。ニヤリとして、マッチをつけた。一気に炎が教室に燃え広がる。あいつを中心に炎が燃え盛っている。徐々にロッカーの壁が熱くなる。ロッカーが開かない。開かない。熱い。苦しい。息ができない。あいつはまだニヤリとこちらをみてる。死ぬ。そう思うと、ロッカーをあいつが開けた。俺は無意識のうちに走り出していた。教室を出ると服が燃えていた。火傷もしていた。【血は出ていない。】うしろから余裕そうに歩いてくる。走る。痛い。走る。階段を降りると昇降口が見えた。逃げれる。安心した。油断した。後ろを見てしまった。あいつがいた。剣らしき物をこちらに向けてきた。

「おつかれ」

鈍い音がした。体を見る。心臓の位置にぽっかり穴が空いていた。銃弾だ。あいつは剣じゃなく、銃剣を持っていた。また撃たれた。足が消し飛ぶ。頭から倒れた。鈍い音がする。

「無様だな」

近づきながら言ってきた。死にたくない。死にたくない。いやだ。もう死にたくない。そんな望みも無駄だった。頭の近くて鈍い音がして、俺の意識は消えた。最後に見たのは、

【やはり昇降口の扉の向こうにいる俺だった。】


痛い。目が覚めた。またベッドにいて、また悪夢を見た。体が汗まみれなど気にしなかった。一連の悪夢で憔悴しきってしまった。

「おれのなにがいけなかったんだよ」

薬を摂取した。気分が良くなってきた。風呂に入りご飯を作る。味がしない。ただ生きるために栄養を取る作業。外に出てみた。散歩していると、周りの人がこちらを見ている気がする。わらいごえがする。俺をわらっているのか?怖い。全てが怖い。逃げこむように家に戻った。

どれくらいの時間があったのだろうか。家で座り込んで考えていた。あたりは静寂に包まれていた。おそらく夜になった。ベッドに戻る。疲れた。今日は悪夢を見ないことを祈る。


最終夜

ベッドだ。いつもの見慣れてる景色。半開きの窓。薬がある机。昔やっていたピアノ。全部が俺の知っている物だった。だか夢か現実かの区別がつかない。確かめるため、俺は2階から1階に降りた。外に出て確認しようとしたら、扉が開いた。夢の中で散々見た。玄関の扉。扉からは【俺】が出てきた。体躯が一緒、服装もジャージ姿で一緒だ。違いを挙げるとすれば、顔が見えない。暗くはない。玄関の明かりはついている。なのに、ぼやけるように顔が見えない。だが俺だと直感で分かった。もう一つの違いは、手に包丁を持っていること。その包丁は最初の悪夢で見た物と一緒だった。もう1人の俺、奴は玄関で俺を見つめてじっと佇んでいる。まるで隙をうかがっているようだ。また夢を見ているのか?俺はそう考えた。だが玄関の向こうに見える景色は現実そのものだ。向かいには家。隣には子供が遊べる空き地。現実と夢の区別がつかなくなってしまった。混乱してた。すると奴は包丁を突き刺してきた。咄嗟に指で防ぐ。体に刺さるのは防げた。その瞬間。

「ぼと」

なにかが落ちた音がした。手に目をやる。右手の人差し指、中指、薬指がない。切り落とされていた。痛い。指が焼けるように痛む。【血が止まらない。】逃げなければ、そう思う前に体が動いていた。奴は後ろから歩いて追ってきている。やはり顔は見えない。血が垂れる。自室に逃げ込むしかない。ベッドの下に隠れ息を殺す。

「ギシッギシッ。バタン」

部屋に入ってきた。鼓動が早くなる。歩く音がなくなる。

「ミシッ」

ベッドの上に座ったみたいだ。呼吸すらできない。絶対にバレてはいけない。血が垂れる。ポトポト音を出し垂れた。終わりだ。その瞬間、奴はベッドから上がり扉を出た。聞こえたなかったのか?不審に思いながらベッドの下から這い出た。突如扉が開く。笑っている。俺の過呼吸の音、奴の笑い声が響く。ナイフを刺してきた。次は左手で庇う。指が飛び散る。指など気にせず走った。血が飛び散る。血を失いすぎた。意識が朦朧とする。階段を駆け降りる。生きるため。死にたくないから。あと数歩で玄関。長い。後ろから追って来ている。一瞬のはずなのに長く感じる。何時間もかけて歩いた気がする。扉についた。扉に手をかける。違和感に気づいた。なぜ俺は今血を出している?今まで四肢が切れても、肉が焼き切れても今まで血は出なかった。なのに今は血が出ている。冷や汗が出る。これは夢じゃない。【現実だ。】だとしたら奴は一体なんなんだ。そう考えると扉から奴が出てきた。今度は顔がはっきりとしてる。俺の顔だ。俺の口から血が噴き出る。奴のナイフが心臓に刺さった。もう一つの違和感に気づいた。【俺がなぜ現実にもう2人いる?】

視界がぼやけ始め、まるで本当の景色を写すようにくっきりと見え始めた。俺の右手には指がある。そしてナイフが握りしめられている。心臓に刺さっている。俺は幻覚を見ていた。薬の作用だ。厳格に言うと、合成麻薬の作用だ。俺は自分自身の体を自分で傷つけていた。

「クソが」

俺の意識はそこで途切れた。

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