竜の誓い
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宜しくお願いします。
竜の誓いと裏切りの炎
幼い頃から、僕はリナと婚約していた。竜の血を引く騎士の家系である僕の家と、魔法の薬草を扱う名家であるリナの家は、何代にもわたって同盟を結んでいた。
僕は彼女が好きだった。
いや、愛していたと言っても過言ではない。
彼女の家の薬草園で遊び、一緒に魔法の勉強をした日々は、僕の宝物だった。
「レオ、うちの薬草園を手伝ってくれない?」
三ヶ月前、リナの父親が倒れ、家業が傾き始めた時、僕は迷わず手を差し伸べた。
朝から晩まで、薬草の収穫から取引先との交渉まで、僕は自分の家の修行をそっちのけでリナの家のために働いた。
指には、十歳の時に交わした約束の証である竜の鱗の指輪が光っていた。
この指輪は、両家の魔力が込められており、お互いの心が離れると輝きを失うと言われていた。
ある雨の夜、取引先への重要な書類を届け忘れたことに気づき、僕はリナの家の事務所へ急いだ。
窓から明かりが漏れている。
遅くまで仕事をしているのだろう、と思いながらドアノブに手をかけたその時、中から聞こえてきたのはリナの笑い声と、僕の親友だと信じていたシンの声だった。
「レオがすべてやってくれるから、うちの事業はもう大丈夫よ。それに、あの竜の指輪、本当に重くて…」
「でも、婚約はどうするんだ?」
「時が解決してくれるわ。それに、あなたがいるじゃない?」
僕はその場に凍りついた。指の上の竜の鱗の指輪が、かすかに震え、それまで放っていた柔らかな青い光が、一瞬でかすんでいった。
まるで僕の心のように。
次の日、僕は何も言わずにリナの家の手伝いをやめた。
父が心配して尋ねてきたが、僕はただ「疲れた」と答えるだけだった。
全てを話す気力さえなかった。
一週間後、リナが泣きながら僕の家を訪れた。
指輪が完全に色あせていることに、彼女も気づいていたのだろう。
「レオ、話があるの。誤解よ、あの夜は…」
僕は静かに指輪を外し、彼女の前に置いた。
「誤解じゃない。僕は全部聞いた。君の家の事業を手伝ったのは、婚約者の義務だからじゃない。君を愛していたからだ。でも、君はその愛を、便利な道具としか見ていなかった」
リナの顔から血の気が引いていくのがわかった。
「シンとは…昔から…」
「言い訳は聞きたくない。リナの本音はきいたから」
僕は深く息を吸い、幼い頃から抱いていた想いを、心の奥底にしまい込んだ。
「全ては自業自得だ。リナの、そして…僕のね。僕は君を信じてたんだ、それが間違いだった」
リナは震える手でヒビの入った指輪を拾い、一言も返せずに去っていった。
僕は窓辺に立ち、遠くの山々を見つめた。そこには、僕の家の守護竜が棲んでいる。
父が言っていた。「竜の誓いは、一度壊れたら二度と元には戻らない。だが、それは新たな道が開けるということでもある」と。
指輪を失った指は少し寂しかったが、同時に、長い間自分に課していた重しから解放されたような気がした。
僕はゆっくりと拳を握りしめた。
もう泣くのはやめよう。これからは、自分の道を歩もう。竜の騎士としての、僕自身の道を。
僕は鎧の手入れを始めた。
明日からは、自分の修行に専念する。裏切りと喪失の痛みはまだ消えないが、その痛みを力に変えて、前に進むだけだ。
全ては自業自得。だが、それは終わりではなく、新たな始まりでもあるのだ。
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