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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第46話 新しい日常

 しんどい時期です。

 新しい日常って何なのでしょうか。


 新型の感染症が流行したせいで、他の大きな問題は水面下へと押し込められているようです。

 でも問題は解決しないとそこにあり続けます。


 少子化ひとつとっても、解決の糸口すら見えないどころか悪化の一途をたどっていますよね。

 

 玲子は就職して楽しく働いているようです。

 そのこと事態は歓迎すべきことですが、仕事しながら結婚子育てとなると難しいですよね。


 順子も結局、子どもはひとりしか持ちませんでした。

 健太にいたっては、結婚すらしていません。


 働いても働いても税金で持っていかれたら、普通に生活していくためにもっと働かなくてはいけませんしね。


 収入を上げる?


 昔のように資格をとったら収入が上がるという時代でもありません。

 勉強したって、収入とは直結しませんよ。

 学ぶのはよいことですが、収入を上げるために学ぶのであれば、実際にお金が動かなければ意味がありません。


 ですが職場で求められることばかりのレベルが上がるばかりで、リターン少ないですよね。


 わたしは新しい携帯電話の使い方を順子に教えてもらいながら思います。


「お母さん、しっかりしてよね。毎日の買い物だって、アプリを活用すればお得になるんだから」

「ハイハイ、分かってますよ」


 頭では理解していますが、自分でやらなければいけないことが増えるのは面倒ですよね。


 新型の感染症対策の一環として進められたキャッシュレス化は、わたしのような年寄りにも影響があります。


 お得な買い物のためにはアプリを使う。

 電子マネーを使う。


 節約にも、感染症対策にも、それがよいことであるのは分かっています。


 でもね。

 頭で理解するのと心が納得することはイコールではありません。


「昔の方がよかったわ……」

「お母さん。年より臭い」


 つい愚痴が口を突いて出たのを耳ざとく聞きつけた順子が顔をしかめています。


 おかしいですね。

 わたしは70歳を過ぎたわけですから、年より臭くても許される歳なのではないでしょうか。

 何時になったら老後と胸を張って言えるのでしょうか。


「お母さんは、まだ後期高齢者ですらないでしょ? 早々と年寄りになられても困るの。私の定年なんて当分先なんだし」

「そうねぇ」


 健太郎さんの定年も60歳だったかどうかも判然としなかったくらいです。

 順子の定年などといえば何歳になるか分かりません。


「まだまだお母さんには健康でいてもらわないとね。うちは親戚が少ないから、玲子があっという間にひとりになっちゃう」

「そうねぇ」

 

 順子は冗談めかして言っていますが、親戚が少ないのは事実です。

 わたしと健太郎さんには兄弟がいますが、玲子はひとりっ子。

 哲也さんの兄弟のところにも子どもはいますが、2人兄妹です。


 子どもは急速に数を減らし、わたしたちの近い親戚のなかに未成年はいません。

 現実はもうとっくに新しく変わっています。


「なるべく元気で長生きしてね、お母さん」

「ふふ。わかってるわ」


 順子の手伝いをすることは減りました。

 ですが、わたしたちが病気でもしたら順子の手を煩わせることになります。

 健太が何かをしてくれるとは考えにくいですしね。


 わたしたちとしても健康でいられるのならそれが一番です。


「お野菜も期待してる」

「まぁ、この子ってば」


 やはり順子はちゃっかりしています。

 呆れながらも、思わず吹き出してしまいました。

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