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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第45話 それでも時間は止まらない

 感染症による不安な日々でも時間が止まることはありません。


 2021年、令和3年に玲子は大学を卒業しました。

 順子が大学を卒業したときには、入社までの間にお友達と旅行に行くなどしていました。


 ですが、玲子の場合は違います。

 感染症による緊急事態宣言が出るような時期でしたから、大学を卒業したくらいで浮かれている場合ではありません。

 ちょっと可哀そうですね。


 玲子も健太と同じで大学近くの会社へ就職を決めてしまいました。

 ひとり娘だというのに、順子の家へは戻らないそうです。


「せっかく順子の家はスープの冷めない距離なのに」


 わたしの口から愚痴が零れ落ちても仕方ありません。


 何かと順子はわたしを頼ってきましたが、玲子はしっかりと自立しています。


 母娘でも、こうも違うとは。


 頼られすぎも困りますが、あまりに頼られないのも寂しいものがあります。


『学生時代だって1人暮らしだったもの。社会人になっても、1人暮らしで大丈夫よ』


 玲子は画面越しに笑っています。

 インターネットで気軽に顔を見ながら通話できるのはメリットがありますが、直接会えないというのは寂しいものがありますね。


『それに今は感染症が大変でしょ? 近くに住んでいたって、昔みたいに会えるかどうかは分からないわ』


 玲子はそう言って笑っています。

 確かにそうですけど、手離れが良すぎる子というのも寂しいですね。


『遠いといっても車で高速を使えば、一時間も走れば来られるじゃない。感染症のほうが落ち着いたら私も遊びに行くし、バーバたちが来てくれてもいいのよ?』


 玲子が住んでいるのは車で行ける距離です。

 海外にいるわけでもありませんし、会おうと思えば会えます。


『私はしっかり稼げる女になるわ。感染症がおさまったら、一緒に旅行へも行きたいし。バーバだって気軽に遊びに着たらいい。そのためには健康第一。ジージと一緒に感染症対策、しっかりしてね』

「ええ、わかってるわ」


 いつの間にかわたしたちは、心配する立場から心配される立場になってしまったようです。


『元気ならどうとでもなるから、本当に気を付けてね』

「ハイハイ」


 わたしは笑いながら通話を切りました。


 嬉しいような寂しいような気分です。


 でも寂しがってばかりでは老け込んでしまいます。


 最近は感染症対策で、畑仕事に力を入れるようになりましたからね。

 遊びへ行けるようになったら、車に山ほど野菜を積んでいって、玲子を驚かせてやりましょうか。


 わたしは新たな目標を見つけて、ひとりフフフと笑いました。

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