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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第40話 健太郎さん頑張る

 2017年、平成29年。

 わたしは気付けば67歳になっていました。


 もう充分におばあちゃんの年齢です。

 玲子にバーバと呼ばれでいても、若くして祖母になっていて、そのままバタバタしていたので加齢を意識したことはありませんでした。

 

 なんでしょうか。

 こうガックリと年を取った気分です。


 冷静に考えてみれば、子どもたちを育てあげて『空の巣症候群』のような気分を味わう間もなく孫育てに入りましたからね。

 今になってまとめて欝な気分が来ているのかもしれません。


 実母を亡くし、親世代もいなくなりました。

 子どもたちも、孫も、世話をする必要はありません。

 まだまだ多少の心配をすることはあるでしょうけれど、それはわたしの役目ですらないのかもしれないですね。


「今日の昼ごはんは、僕が作るよ」

「あら、いいんですか?」

「ああ。兄さんがくれた菜の花を使ってパスタを作ろうと思うんだ。牛乳を使ったクリームパスタ風の」

「あら、美味しそう」


 年寄というと油っぽいものはちょっと……というイメージが強いようですが、わたしたちの世代は、ピザやパスタがわりと好きな方が多いです。


「義姉さんが教えてくれたんだ。パンチェッタの切り落としがあったよね?」

「ええ。まだ使ってないわ」


 最近はスーパーでの買い物も2人で行くことが多くなりました。

 だから健太郎さんも冷蔵庫の中身を把握しているのです。


 わたしはダイニングテーブルの前にある椅子へ座って、健太郎さんが作業するのを見守ります。


 パスタを茹でるための湯を沸かしながら、健太郎さんは手際よく具材を準備していきます。

 菜の花は事前にまとめて軽く茹でておいたものがありますから、サッと洗って切るだけです。

 パンチェッタも切り落としですからいちいち切りません。

 

 健太郎さんは、フライパンを火にかけて、刻んだニンニクや玉ねぎのスライス、パンチェッタを入れて炒めています。

 そこに胡椒を一振り。

 いい匂いがただよってきました。

 ぐつぐつと煮立つ鍋の中でパスタも機嫌よく踊っています。

 アツアツのフライパンのなかに注がれた牛乳がジュッと音を立てました。

 キッチンに飛び散ったような気がしますが、あとで掃除しておくから大丈夫です。

 茹で上がったパスタと菜の花をフライパンのなかであえるようにして、パスタは完成しました。


 二人分のパスタが皿に盛られて、テーブルの上に並びます。

 

「パスタを茹でるのに塩を多めにしたから、塩気が足りなかったら自分で調整して」

「はい」


 健康のためには減塩も大切です。

 でも――――


 わたしはクスクス笑いながら、健太郎さんが粉チーズをパスタの上にかけているのを眺めます。

 あんなに山盛りにしたら、塩気を抑えても意味ないのではないでしょうか。

 胡椒も足りなければ後から振り入れますし、塩も足したりしますけど、今日は大丈夫みたいです。


「美味しい」

「だろう?」


 健太郎さんは得意げです。


 テーブルの上には、パスタ以外にも野菜が並んでいます。

 時折しか仕事で出かけなくなった健太郎さんは本格的に義兄夫婦の『家庭菜園』を手伝い始めたのです。


 自分で育てた野菜は美味しいですが、わたしはなんとなく張り合いがなくなってしまって、最近はさぼっています。

 

 春だというのに、なんとなく鬱々した気分で日々を過ごすわたしを気遣って、健太郎さんが台所へ立つ日が増えていきました。

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