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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第26話 自宅リフォーム

 健太郎さんのご両親が相次いで亡くなったことで、まとまった額の遺産が入ってきました。


「商売をしていたわけではないが、農業をしていて土地を持っていたからな」


 健太郎さんはそう言っていました。

 ですがわたしは、義両親がきちんと稼いでいたから財産を食いつぶすことなく残ったのだと、思っています。


「私も自分の稼ぎがあるから、これは子どもに残したい」

「そうですね。玲子もいることですし、なるべく遺産には手を付けたくないですね」


 バブルが弾けて以降、景気が良くなる気配はありません。

 それでいて、税金も上がっているし、教育費用もかかります。


「玲子には、お金のことで進路を狭くして欲しくない」

「そうですね」


 思い返してみれば、わたしたちの頃は呑気なものでした。

 景気は良くなったり悪くなったりするものですが。

 バブル以降は常に出血が続いているなかで小康状態になったり危篤になったりするような感じです。

 玲子が生きる未来ではどうなるか、さっぱり分かりません。


「女の子だからな。安全に生きられるようにするには、お金がかかるだろう」

「そうですね」


 わたしたちは、なるべくお金が残る形で老後のことを考えて、自宅を建て替えではなくリフォームすることにしました。


「バリアフリーにして、なるべく二階へ行かずに済むように変えよう」

「そうですね」


 二階へ上がるのがしんどくなったら、掃除含めて管理は順子へ任せることにします。

 孫育てを手伝ったのですから、そのくらいしてもらわないとね。

 

「いざとなったら老人ホームに入って、この家は健太に譲るか」

「そうですね」


 健太とも話し合いをしましたが、家を買うつもりはないようです。

 そもそも結婚する気もないというは呆れてしまいますが、最近はそんなものなのでしょうか?

 貯金もあまりないようです。

 

 危機感がないのでしょうね。

 自宅はそのままありますし、こちらには順子いますから。

 定年になったら、この家へ戻ってくるつもりみたいです。


「あの子は家を管理するのにもお金がかかるって分かっているのかしら?」

「ははは。いまは社宅住まいだからな。家賃がかからないつもりでコッチに帰ってきたら、びっくりするんじゃないか?」


 健太郎さんは笑っていますが、わたしからしたら笑いごとではありません。


「まぁ今回のリフォームで、それなりにしておけばいいんじゃないか? 結婚していないなら、いずれはアイツも老人ホームへの入所を考えているだろうし。どうにかなるだろう」


 なんで男性はその辺、呑気なのでしょうね?

 まぁ、遺産は残すつもりですけど。大丈夫なのでしょうか。


「順子や玲子に迷惑をかけないか心配ですけどね」

「ふふ。どうかなぁ? 今からそんな心配をしても仕方ないよ。私たちが見本を見せてやらないと」


 健太郎さんには考えがあるのでしょうか?

 よくわかりません。


 我が家のリフォームは必要最低限で進めましたが、それでもお金がかかります。

 耐震工事やバリアフリー、外壁の塗り替え、などなど。

 

 住みながらリフォームしてもらうというわけにもいきませんでしたから、仮住まいを借りたり、荷物をトランクルームに預けたり、いろいろです。

 補助金の活用などもしましたが、それなりの出費。

 貯金はだいぶ減りました。


「70までは働かないとな」


 健太郎さんは楽しそうに笑っていましたが、わたしはちょっと複雑です。

 玲子は小学校を卒業します。

 中学生にもなれば、わたしのサポートはさほど要らなくなることでしょう。


「わたしもパートで働こうかしら?」


 わたしの友人たちも、子育てを終えて働き始める人が増えました。

 イマドキ専業主婦の価値は低いのです。


「んー、そこまでする必要はないだろう?」


 健太郎さんは首を傾げています。

 確かにわたしが働きに出なくても、なんとか家計は回りますが。

 わたしも何かしたいのです。


「それなら、家庭菜園でも始めてみたらどうだ?」

「家庭菜園?」

「悦子さんは植物を育てるのが好きだから、野菜も育てたらいい。玲子の教育にもよさそうだし、家庭菜園でとれた野菜は新鮮でおいしそうだ」


 野菜も最近は高くて家計を直撃してきます。

 家庭菜園は節約にもなりそうです。

 もちろん収穫できれば、の話ですが。


「最近は畑を借りて野菜を育てることもできるみたいだぞ。ちょっと調べてみたらどうだ?」

「そうですね」


 こうして我が家はリフォームを終え、わたしは家庭菜園を始めることにしました。

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