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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第12話 できちゃった婚 3

 後日、挨拶にきた哲也さんを連れて健太郎さんは出かけていきました。

 哲也さんは青い顔をして我が家へ挨拶に来ましたが、戻ってきたときには、もっと青い顔になっていました。


 わたしは一瞬ギョッとしましたが、哲也さんが怪我をしている様子はなかったのでホッと一安心です。


 大事な娘を傷物にしたのですから、一発くらい殴られても文句を言われる筋合いはありません。

 ですが順子のお腹のなかにいる子の父親なのです。

 元気でいてもらわないと困ります。

 わたしは複雑な気持ちで哲也さんを眺めていました。


 順子のお腹で子どもは順調に育っていきます。


 必要なことをどんどん進めていかないと生まれてしまいますからね。


 グチグチ言っている暇もありません。


 形ばかりの結婚式を挙げられるように会場をおさえて、親戚に連絡を取って、とやることはたくさんあります。


 わたしの両親も、健太郎さんの両親も、突然の結婚話に目を丸くしていましたが。

 順子に優しく甘い人たちなので、特に文句を言われることなく、大急ぎで結婚に向けて細かなことが進んて行きました。


 哲也さんの両親とわたしたち夫婦、そして新しく夫婦になる2人をまじえて結納をして。

 新居の準備や産科の選定、婚姻届けの提出などやることは山積みです。


 わたしが直接動く必要のあることばかりではありませんが、どうにもこうにも疲れます。


 新居が決まれば引っ越しです。


 順子は必要な物だけ持って出ていきましたから、部屋がガランとしてしまうこともありませんでした。


 それでも子どもの独立というのは寂しいものです。


 健太は大学進学とともに家を出て、それっきり戻ってくる気配もありません。


 わたしは順子の部屋を健太郎さんと一緒に眺めながらつぶやきます。


「これから夫婦2人の生活ですね」


 健太郎さんはわたしの肩を抱き寄せて、笑いながら言う。


「そんなことはないさ。順子の子どもが生まれたら賑やかになるぞ」

「ふふ。そうですね」


 子どもが生まれたら実家でもお世話できるように順子は家具のほとんどを置いていったのです。

 ベッドもそのままで、すぐに寝ることができます。


「この部屋にベビーベッドが入るかな?」

「どうでしょうねぇ。子どもと順子がここに泊まるとなれば、荷物も色々持ってくるでしょうし。赤ちゃんの物はおむつにしても肌着にしてもかさばるから……机かタンスを片付ければなんとかなるでしょうかね?」


 わたしと健太郎さんは順子の部屋を眺めながら、楽しい未来を思い描いていました。


 まさかその晩に「引っ越しの荷物が片付かなくて寝るところがない」と言いながら順子が哲也さんを伴って帰ってくることになるとは、この時は想像もしていませんでした。

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