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昭和25年生まれ 木村悦子75歳  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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第10話 できちゃった婚 1

 1997年、平成9年は消費税の税率が3%から5%へと引き上げられた年でもあります。

 そんな1997年。我が家を揺さぶる大事件が起きました。


「私、子どもができちゃったの。だから哲也さんと結婚して、山口順子になります」


 夕食のあと、わたしと2人きりのタイミングで、ウフフと笑いながら順子が報告してきました。


「ちょっと待ってよ、順子。結婚って。あなた、まだ24歳で働き始めたばかりじゃないの。仕事はどうするの⁉」


 キャリアウーマンになるといって四年制大学へ行ったのに、まだ二年も働いていません。


「もちろん子育てしながら働くわよ。お母さんの時代とは違うのよ? 今は男女雇用機会均等法があるし」

「それは知っているけれど……」


 1985年に男女雇用機会均等法は制定されました。


「産休もあるし。子育てしながらも働ける会社を、わざわざ選んだのよ? きちんと活用するわ。哲也さんのお給料だけじゃ、暮らしていけないし」


 わたしは静かにパニックを起こしていました。


「でも結婚する前に妊娠なんて。順番が違うでしょ?」


 驚いて声を上げるわたしに、順子は平然とした様子で言います。


「まぁ多少、順番が違っちゃったけど。イマドキは珍しくもないでしょ?」

「そうかもしれないけど……」


 いわゆる『できちゃった婚』は珍しくなくなりました。

 だからといって母親に笑いながら報告するほど一般的なことではありません。


「フフフ。お母さんってば大げさなんだから。ちゃんと哲也さんと結婚するから大丈夫」


 哲也さんのことは知っています。

 同じ学区ですから、小学校と中学校は一緒。

 同窓会で意気投合して大学入学後に付き合い始めました。

 なので付き合いも長く、妊娠させて逃げるような男性でないことはわかっていますが、それとこれとは別問題です。


「大丈夫って……お父さんにはどういうの?」


 今夜は飲み会で不在ですが、結婚となれば健太郎さんに報告しないわけにはいきません。


 順子は赤い舌をチロッと見せて笑っています。


「だからこうして根回ししてるんじゃない。今度の週末に哲也さんが挨拶にくるから、お父さんに上手に言っといて」

「もう、この子ったら……」


 哲也さんと順子がお付き合いをしていることは健太郎さんも知っていますが、結婚となれば話は別です。

 ましてやできちゃった婚。

 健太郎さんの反応が全く想像できません。

 結婚そのものには反対しなくても、妊娠を知ったら激怒することでしょう。

 わたしは頭が痛くなってきました。


 どうなってしまうのでしょうか?



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