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恋焦がれた君に堕ちるまで  作者: ChaCha


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探していた人の帰還と恋人

昼の食堂は、いつもより少しざわついていた。

トレーを持った学生たちの声が、あちこちで弾んでいる。


「治癒魔術科、帰還したってさ」


「今回、相当きつかったらしいよ」


その言葉が、耳に入った瞬間。

私は、無意識に顔を上げていた。


……帰還。


それだけで、胸の奥がふっと緩む。


(よかった……)


誰の名前も出ていないのに、

頭に浮かんだのは、あの柔らかな金髪と穏やかな声だった。


私は視線を巡らせる。

治癒魔術科の制服を探してしまう自分に、少しだけ驚きながら。


隣で、アデルが箸を止めた。


「……何を見てる」


声は低く、静かだった。


「え? 何って……」


私は曖昧に笑って誤魔化す。

自分でも理由を言葉にできない視線だったから。


アデルは、私の目線の先を追い、

ほんの一瞬だけ、眉をひそめた。


胸の奥で、

言葉にならない違和感が、静かに芽吹く。


――放課後。


寮へ向かう道は、夕方の気配を帯びていた。

風が涼しく、石畳の上に影が長く伸びる。


その向こうから、

見覚えのある姿が歩いてくる。


「……あ」


思わず声が漏れた。


ルイスだった。


少し疲れた様子で、

それでも確かに、そこに立っている。


「逢いたかった」


そう言って、彼は笑った。


「無事に帰って来てくれて嬉しい!」


言葉が、するりと口から出た。

考えるより先に。


「今回は本当に危なかったよ。でも……」


ルイスが、少し言葉を切る。


「君に……」


その先を、

別の声が遮った。


「やぁ」


アデルが、自然に一歩前へ出た。


「俺はアデル。ソフィアの恋人だ」


――え?


「え!? ちょっと! 何言い出すの!?」


思わず声が裏返る。


ルイスは一瞬目を瞬かせ、

それから、困ったように笑った。


「恋人。あっ……そういえば、前も一緒だったね」


「ち、違うの!」


私は慌てて首を振る。


「幼馴染で、腐れ縁なだけなの!」


必死に説明する私の横で、

アデルは一切動じない。


「恋人だ。隠す必要はない」


きっぱりとした断言。


ルイスは、少しだけ視線を伏せたあと、

柔らかく息を吐いた。


「……はは。そうか。それは……じゃあ、俺は行くよ。またね」


「あっ……また……」


手を振るルイスに、

私も、つられて手を振る。


その背中が遠ざかるのを見送っていると、

隣から、はっきりとした舌打ちが聞こえた。


「……もう! なにあれ!」


私が抗議すると、

アデルは涼しい顔で言う。


「変な虫が飛んで来ただけだ」


「失礼すぎるでしょ……」


赤ちゃんの頃から変わらないな、この人。

私は呆れつつ、寮へ向かう。


その途中。


ぐっと、腕を引かれた。


「ちょっ――」


振り向く間もなく、

アデルに抱き締められ、唇に軽い感触が落ちる。


「……は?」


思考が追いつかない。


「俺たちは、昔も今も恋人だ」


真剣な目。


「ちょ、待って……付き合った覚えが、全くないんですけど」


「……好きだ。愛してる」


「……へ」


「答えはイエスだ。これで俺たちは恋人で間違いない」


私は、頭を抱えた。


どうしてこうなる。


確かに、

アデルは前よりずっと、必死で。

独占欲も、隠さなくなっている。


理由はわからない。

でも、その必死さを、

無下にできない気がしてしまった。


「……まぁ……ずっと一緒に生きていくだろうな、とは思ってたから……いいよ」


その瞬間。


アデルの表情が、ぱっと明るくなる。


「じゃあ、今から子作りする?」


「言い方ぁ! そして、しないからね!?」


腕を絡めたまま、

分かれ道まで一緒に歩く。


そのまま、

さり気なく私の部屋へ入ろうとするアデル。


「いや。それはない。帰れ!」


「……場所の問題ってことだね。わかった」


――わかってない。


自室の鍵を、

念入りに閉める。


シャワーを終え、ベッドに腰を下ろして、

ふと呟いた。


「……あれ? 私、彼氏持ちになったな……」


ルイスが無事で、嬉しくて。

アデルが恋人になって。


今日一日は、

情報量が多すぎた。


考えるのをやめて、

私はそのまま布団に潜り込んだ。



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