表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋焦がれた君に堕ちるまで  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/31

探してしまう

あれから数週間。

気付けば私は、何度かまた治療室のお世話になっていた。


……不名誉なことに、常連である。


寝台に横になり、天井を見上げる。

衣擦れの音が聞こえた瞬間、反射的にそちらを見た。


(……違う)


今日も、彼じゃない。


先生が軽やかな足取りでやってきて、

いつものように瓶を掲げた。


「はい。君が大好きなポーションだよー」


「……激マズなので……

 できれば早く、治療室を卒業したいです……」


先生は笑いながら肩をすくめた。


「入学当初より、搬入回数はかなり減ってるよ。

 ちゃんと成長してる」


……成長。


そう言われると、少しだけ胸が軽くなる。

倒れる頻度は確かに減っている。

意識が飛ぶ前に踏み止まれる日も、増えてきた。


「……治癒魔術科って、

 治療室でも訓練してるんですか?」


ふと、気になって尋ねた。


先生は顎に手を当てて考える素振りをし、

あっさり答える。


「基本は訓練場と野外訓練だね。

 たまに治療室で、死屍累々で寝転がってるかなー」


「……えっ?」


一瞬、言葉の意味が追いつかなかった。


「治癒する側が……倒れるんですか?」


「そりゃそうだろ。

 治癒魔術科だって人間だぞっ!」


いや、そうなんだろうけど。

理屈ではわかるけれど。


胸の奥に、別の感情が浮かび上がる。


――「生き残ってくるよ!」


街で別れ際に聞いた、あの声。


冗談めいた言い方だったのに、

今思い返すと、やけに重たい。


(……野外訓練……)


治癒魔術科は、

命の危機がすぐ隣にある環境で、

誰かを救うために走り回っている。


その中に――

彼も、いる。


「……また君に会いたくてさ。

 野外訓練の時は、絶対死ねないって思ってた」


治療室で聞いた、その言葉が脳裏をよぎる。


急に、胸がざわついた。


(……大丈夫かな……)


無理していないだろうか。

ちゃんと眠れているだろうか。

ポーション、飲みすぎていないだろうか。


次は……

次は、いつ会える?


治療室を出たあとも、

その思考は頭から離れなかった。


それから、私は気付いた。


食堂で列に並ぶとき。

学園の回廊を歩くとき。

中庭を横切るとき。

図書館にいるとき。


無意識に、視線が動く。


金髪。

青い瞳。

治癒魔術科の制服。


……いない。


(……学園に、いないのか……)


野外訓練中なのだろう。

そう思うと、胸の奥が少しだけ冷えた。


(……私も……)


立ち止まりそうになる自分を、ぐっと引き戻す。


私も、魔術訓練に集中しなきゃ。

倒れてばかりじゃ、意味がない。


助けられる側じゃなくて…

助けられる側でいるだけじゃなくて…


いつか――

並べるように。


「……頑張れ、私」


ぽつりと呟いた、その横から、

聞き慣れた声がする。


「気合い入ってるな。今日も自主練、付き合う」


「よろしくお願いします!アデル教官!」


「だから教官はやめろ」


やれやれ、と肩をすくめる仕草。

いつもの距離感。

いつもの時間。


それが、少しだけ安心する。


初夏の風が、学園の中庭を吹き抜けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ