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恋焦がれた君に堕ちるまで  作者: ChaCha


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産まれ堕ちた

……あれ。


落ち続けていたはずなのに。

いつまでも白かったはずなのに。


急に、世界が――狭い。


温かい。

ぬるい。

包まれている。


この場所に、ずっといたかった。

ここは安全だ。

ここなら、もう堕ちなくていい。


なのに。


ぎゅっ。


圧が、かかる。


え、待って。

狭い。

急に、狭い。


やだ。

このままじゃ……。


このままじゃ、死んじゃう……!


必死に動こうとしても、身体が言うことをきかない。

逃げ場がない。

温かかったはずの場所が、容赦なく押してくる。


苦しい。

苦しい。

苦しい!


――出たくない!

――ここにいたい!


そんな願いは、当然、聞き届けられない。


ぐい、と。

世界が、押し出した。


眩しい。


寒い。


いきなり、寒い!!


さっきまでの温度はどこ!?

なんで!?

さっきまでぬくぬくだったのに!!


空気が、刺さる。

肺に、無理やり何かが流れ込んでくる。


「……っ」


声が出た。

いや、出てしまった。


私は、泣いた。


めちゃくちゃ泣いた。


怖い。

怖い。

怖い。


恐怖と恐怖と恐怖と、

あと、訳の分からないことが起きすぎて怖い!!


なんで!?

なんでこうなったの!?

墜落したよね!?

白くなったよね!?


なのに、ここどこ!?


泣きながら、必死に空気を吸う。

吸わないと、もっと苦しい。

でも、吸うのも苦しい。


もう、意味が分からない。


そのとき。


――あたたかい声。


耳元で、柔らかい音がした。

意味は分からない。

言葉でもない。

ただ、安心する音。


それから、良い香り。


甘くて、柔らかくて、

さっきまでいた場所に、少し似ている。


あ……。


落ち着く。


知らないはずなのに、知っている。

このリズム。

この音。


とくん、とくん。


心臓の音だ。


……ああ。


生きてる音。


しばらくして、

私は、ゆっくりと目を開いた。


ぼやけた視界。

輪郭が、ぐにゃぐにゃしている。


大きな影が、いくつも見えた。


え?

なに?


近い。

近すぎる。


私を、覗き込んでいる。


笑顔だ。

多分、笑顔。


口が動いている。

何か、言っている。


……なに言ってるの?


まったく、理解できない。


音は聞こえるのに、意味がない。

頭が、追いつかない。


そして、気づく。


――でかい。


でかすぎる。


巨人だらけだ。


こわい!!


さっきまで包まれていた存在感のある温もりと違って、

こっちは、未知だらけ。


私は、また泣いた。


しかも、さっきより本気で泣いた。


怖い!

分からない!

でかい!!


それから、さらに問題が発生した。


……お腹、空いた。


いや、空いたとかいうレベルじゃない。

死ぬ。


本能が叫んでいる。

これは、今すぐ何かをしないと、本当にダメなやつだと。


ぎゃあああ、と泣きながら訴える。


すると。


また、あの香り。


さっきより、近い。

もっと、はっきり。


……あれ?


これ、知ってる。


口元に、何かが触れた。


反射的に、吸った。


うまー!!


なにこれ、うまー!!


必死に、吸う。

吸う。

吸う。


……吸いにく過ぎるけど!!


なんでこんなに吸いにくいの!?

でも、うまい!!

本能が止まらない!!


必死に、のむ。

のむ。

のむ。


――っ。


うっ。


空気、つまった。


げほっ。


吐く。


なにこれ!!

ほんとに、なにこれ!!


さっきまで白い世界で堕ちてたのに、

今は巨人に囲まれて、

よく分からないものを必死に吸って、

空気でむせてる。


混乱が、限界を超えた。


もう、無理。


頭が、ふわっと遠ざかる。


意識が、また――堕ちる。


……落ち着く。


今度は、下へ。

静かに。

深く。


私は、目を閉じた。


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