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恋焦がれた君に堕ちるまで  作者: ChaCha


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14/47

一緒に入るのね

夕飯を終えて、広間のソファでのんびりしていたら、

いつの間にか、少しだけ眠ってしまっていた。


「……あ」


ぼんやりと目を開ける。


「温泉……」


思い出した瞬間、身体が起きた。


そのとき、衣擦れの音がした。


隣を見ると、

アデルが、私がソファから落ちないように、そっと支えていた。


……優しい。


アデルが小さく声を落とした。

「……起きた?」


「寝ちゃってた」


そう答えると、

彼は少しだけ口元を緩める。


「すごい顔してた」


「可愛い顔してたって言って!」


即、訂正。


一拍置いて、アデルが視線を逸らしながら言った。

「……してた。可愛い顔」


どきっ。


その空気を切り裂くように、

勢いのある声が飛び込んできた。


クリスが廊下から顔を出した。

「あっ!姉様いた!貸切できましたよ!」


「まぁ!」


声が弾む。


「今年は初日から、広々とした浴場でゆっくりできるのね」


着替えとタオルを用意して、

――忘れずに、卵の籠。


今回は絶対に忘れない。


部屋を出ると。


……いた。


クリスと、

アデル。


「アデ……」


呼びかけた瞬間、

アデルが一歩前に出る。


「俺も一緒に入る!!」


即宣言。


クリスが即座に声を張り上げた。

「ダメって言ってやってください!」


そこへ。


通路の向こうから、

両親たちのグループが、和気あいあいと通りがかかった。


ミラが楽しそうに手を振る。

「みんなで入るの〜?」


サラも続く。

「私たちもよ〜」


ノアが顎で示した。

「お前たちも、こっち来るか?」


クリスが即、拒否する。

「大人組は勝手にしてください!」


両親たちは笑った。


ルカが肩をすくめる。

「あ〜こわいこわい」


ミラが言う。

「熱燗、頼めたよね〜?」


サラが頷く。

「飲み過ぎ注意よ〜」


完全に、自由。


アデルが低く言った。

「……行くぞ」


そして。


かぽーん。


「はぁ〜……気持ちいい〜」


思わず声が漏れる。


湯はちょうどよく、

身体の芯まで温まる。


クリスがぶつぶつ言い始めた。

「……姉様との洗いっこが……貴様のせいで!」


アデルも同時に。

「ソフィアの身体に触れるのは、俺だけだ!」


二人とも、小声で。


私は湯に浸かりながら、天を仰ぐ。


「はぁ〜……平和だ〜」


満月の夜。

涼しい風。

あったまる温泉。


最高である。


――と。


「……ハッ!」


卵。


「卵を、つけなきゃ!」


ざばっ。


立ち上がって、

素っ裸のまま歩き出す。


「たまご忘れてた!」


すたすた。


籠を持って、すたすた。


源泉の流れ込む、

少し熱めの場所へ。


籠ごと、投入。


その瞬間。


風が吹いた。


「……寒っ!温泉、おんせ……」


振り返ると。


アデルとクリスが、

顔を真っ赤にして、固まっていた。


「……ちょっと!」


思わず声を上げる。


「のぼせたの???大丈夫???」


湯に戻り、

クリスの方へ近寄ろうとした、そのとき。


ぐっ。


腕を掴まれ、引き寄せられる。


アデルだった。


低く、抑えた声。

「……風邪を引く前に……先に温泉を出て欲しい」


有無を言わさぬ声音。


私は、こくこくと頷いた。


「……うん」


先に、温泉を上がる。


振り返って声を張る。

「温泉たまご!引き上げ忘れないでね!?」


アデルは顔を覆い、上を向いたまま。

「……ああ。わかったから……滑るなよ」


クリスは、ぼーっとこちらを見ていた。


「わかった!?」


再確認。


「……わかった!」


二人の返事が、重なった。


体を拭いて、服を着て、

広間へ戻る。


両親たちは、カードゲームの真っ最中だった。


「私もまぜてー!」


「おいでおいで」


輪に入る。


家族みんなで行く温泉旅行は、

やっぱり楽しい。


しばらくして。


温泉たまごの籠を持った二人が合流した。


「できてる?」


わくわくしながら聞く。


殻を割る。


……。


「温泉たまごのタレがない!!」


ミラが笑顔で言った。

「柔らかくて美味しいゆで卵ね〜」


「……塩」


ぽつり。


「これじゃない感」


その様子を見て、

アデルが、小さく笑った。


湯気の向こうで、

冬の夜は、まだ続いている。



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