第6話 母の心配事
僕はみんなに嘘をついた。小山刑事の話を話す訳にはいかない。話したら僕が犯人みたいじゃないか。勝也が僕に言う。
「災難だったな。」「うん。困ったもんだよ。」
この日は授業はなく、昼には全員下校することになる。井上がボウリングに行こうと言い出す。すぐに肝試しのメンツが集まる。勝也が僕を誘う。
「一緒に行こぜ。」「どうしよかな。」
「帰ってもやることないだろ。」「そうだな。行くよ。」
僕は一緒にボウリングに行くことにする。メンツは肝試しのメンバーだが、佐藤と西山がいない。井上、松本、斎藤、川口、池田、近藤、勝也と僕を入れた8人だ。
ボウリングで遊んだ後、僕は真直ぐ家に帰る。玄関に入ると僕の母日下麻木が僕に質問する。
「昨晩、出かけたようだけどどこに行ったの。」「どこにも出かけていないよ。」
「そお、私の勘違いかしら。」「きっとそうだよ。」
おかしい、僕はどこにも出かけていない。お母さんは何を言っているんだ。
夜になって光喜の父親日下光也が帰って来る。麻木は光也に光喜のことについて話をする。
「光喜が昨晩出かけたようなの。」「彼女でもできたんじゃないか。」
「学校で佐藤さんの息子さんに続いて西山さんの息子さんも殺されたそうよ。」「物騒だな。みんな光喜のクラスメイトじゃないか。」
「私は心配で・・・」「光喜も高校生だ。信じてやりなさい。」
深夜、光喜が2階の部屋から降りてくる。麻木は眠っていたが目を覚ます。麻木が玄関へ行くと光喜がいる。
「光喜、どこへ行くの。」「ちょっとコンビニまでジュースを買って来るよ。」
「もう寝たほうがいいのではないの。」「大丈夫だよ。」
光喜は出かけていく、麻木は光喜の様子に違和感を感じた。
斎藤は2階の自分の部屋で漫画を読んでいた。もう寝る時間だが、もう少しと言っているうちに深夜になってしまっている。
突然、窓から光喜が入って来る。斎藤は驚いて言う。
「光喜、どこから入ってきているんだよ。ここは2階だぞ。」「ああ、わかっている。ちょっと用事があったんだ。」
「用事?何か用か。」「死んでくれ。」「えっ。」
光喜の顔が黒くなり顔から黒いものが伸びて斎藤の首を絞める。
「うぅ~がああ・・・・」
斎藤は助けを呼ぼうとするが声にならない。窒息して倒れる。光喜は斎藤の心臓が止まって、瞳孔が開いていることを確認すると立ち去る。
麻木は玄関で光喜の帰りを待っていた。しばらくして、光喜が帰って来る。光喜は手ぶらだった。
「光喜、手ぶらだけどジュースを買いに行ったのではないの。」「ジュースはコンビニで飲んできたよ。」
「そう。」「母さん、何を気にしているの。」
「佐藤君と西山君が殺されたから心配なのよ。」「僕は大丈夫だよ。お休み。」
光喜は2階の部屋へ戻って行く。
僕はまたもリアルな夢を見ていた。斎藤の部屋にいて顔から黒いものが伸びて斎藤の首を絞めて殺す夢だ。僕は恐怖で飛び起きる。洗面に行って顔を洗って鏡を見る。
そこには僕の顔が映っている。斎藤、殺されたりしていないよな。僕は不安になる。




