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第5話 西山の死

 その夜、僕は夢を見る。また、あのリアルな夢だ。僕は学校の校庭にいる。暗くてよくわからないが誰かいる。誰かは僕に近づいて来る。

 クラスメイトの西山(にしやま)だった。西山は僕に突っかかるように言う。

 「さっきの電話は何なんだ。佐藤殺しの犯人を知っているとはどういうことだ。」「犯人を知っているのさ。」

あれ、僕が言っているのか。夢だからな、こんな感じなのかな。

 「犯人は誰だ。ぶっ飛ばしてやる。」「犯人は僕だよ。」

えっ、なんだって!僕は殺していないぞ。

 「日下、何言っているんだ。嘘だろ。」「僕は正直者だよ。」

西山、違うよ。これは僕じゃない。

 「お、お前が殺したのか。」「さっきから言っているだろ。」

 「その顔はなんだ。」「これが僕の本性だよ。」

ち、違う。僕じゃない。

 「く、来るな。何するつもりだ。」「今から見せてやるよ。」

何をするんだ辞めろーーー、夢の中で僕は、僕の意思と関係なく動いていく。僕の体から黒い鞭のようなものが出る。それは、西山に飛び掛かり首を締め上げる。

 辞めてくれ、西山が死んでしまう。僕の叫びは、夢の中で虚しく響くだけだった。

 もがいていた西山が動きを止める。そして黒い鞭のようなものは僕の体に戻る。西山は倒れたまま動かない。

 僕は恐怖で起き上がる。ここは僕の部屋だ。きっと夢に違いない。僕は洗面所に顔を洗いに行く。鏡に映る顔は、僕の顔だ。黒いものはない。

 良かった。夢で良かった。本当に良かった。僕は安堵する。

 翌朝、学校に登校すると、警察が来て、騒ぎが起こっていた。僕は嫌な予感がする。

 勝也が僕に声をかけてくる。

 「グランドで西山が死んでいたんだ。早朝、練習の運動部員が発見して騒ぎになっている。」「なぜ、西山が死んでいるんだ。」「分からないよ。」

あれは夢じゃなかったのか。なぜ、西山が校庭で死んでいるんだ。

 教師たちが出て来て、外で立ち止まっている生徒たちに呼びかける。

 「みんな、教室に入ってくれ。立ち止まるな。」

生徒たちは促されて校舎へ入って行く。僕と勝也もみんなと校舎へ入る。教室に入るとざわついていた。窓際で校庭を見ている生徒もいる。

 先生はなかなか来ない。長い間待たされて、やっと担任が教室に入って来る。なぜか担任の顔色が悪い。担任は真直ぐ僕の所に来て言う。

 「来てくれ。刑事さんが日下に聞きたいことがあるそうだ。」「僕ですか。」

あれは夢のはずだ。僕は西山とは会っていない。なぜ呼ばれるんだ。僕は担任に連れられて行き応接室に入る。僕はソファに座る。前にはスーツ姿の中年男性がいる。

 「私は小山(こやま)だ。刑事をしている。日下君に質問があるんだ。」「僕は何も知りませんよ。」

 「昨夜、西山君と携帯で電話していたね。何を話していたんだ。」「覚えがありません。電話なんかしていないですよ。」

 「おかしいな。西山君のスマホには君からの着信歴が残っているんだよ。君のスマホを見せてくれないか。」「いいですよ。」

僕は小山刑事にスマホを差し出す。小山刑事は僕のスマホを見て、怪訝な顔をする。

 「発信歴が無いな。記録を消したのかな。」「そんなことしていません。」

 「まあ、調査すればわかることだ。」「僕を疑っているのですか。」

 「そうではないが、西山君のスマホの着信歴から最後に話したのは日下君の可能性が高いと思ったのさ。」「はい。他にありますか。」

 「済まなかったね。今後も協力を頼むよ。」「・・・・・」

僕は小山刑事が僕を疑っていると思った。僕は教室に帰るとみんなから質問攻めにあった。



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