第4話 楠木と日浄
楠木は、市内にある願本寺に顔を出す。
「友里ちゃんじゃないか。今日はどんな悪霊を見つけたのかな。」
願本寺の住職鈴木日浄が楠木に声をかける。
「今日は相談に来ました。」「何か見つけたんだろ。」
「はい。黒いものがクラスメイトに憑いています。悪いものだとは分かるのですが何なのかわかりません。」「黒くて形はないのかな。」
「形はありません。体に張り付いているような感じです。」「おそらく、穢れだね。」
「穢れはお祓いできますか。」「もちろんだよ。」
「もしかすると人を殺しているかもしれません。」「そんなに強力なのかい。」
「はい。見えないだけで、力を振るうことはできると思います。」「それは手強いな。」
「どうしますか。」「命がけだが、やってみよう。」
日浄は、できるだけ楠木の願いをかなえてやりたかった。楠木は、幼い頃、自分が他人と見えるものが違うとわからずにいて、そのため周囲の人から気持ち悪がられた。
幼稚園でも園児に「もうすぐ死ぬよ」と声をかけ、その子が交通事故で死んでしまったため、幼稚園に通えなくなっている。楠木が日浄に出会ったのはその頃だった。
楠木家は願本寺の檀家であったため、両親が楠木を連れてきたのだ。両親は子供に何か悪いものが付いているのではないかと心配した。
日浄は楠木と話をして、楠木が霊や人の死が見えていることに気づく。日浄は両親に楠木が特別なのだと説明した。しかし、両親は受け入れられなかった。
両親は楠木に見たものを人に言ってはダメだと教え込む。落ち込む楠木に日浄が「私には、全部話してもいいのだ」と言う。それから楠木と日浄の交流が始まる。
翌日、僕は再び楠木に校舎裏に呼び出される。
「今日も楠木の方が早いね。」「友達がいないから早く教室を出られるのよ。」
「それ、自慢できることじゃないよ。」「自慢していないわよ。私には普通のことなのよ。」
「今日はお祓いの話かな。」「そうよ。お祓いをしてくれるそうよ。」
「良かった。」「そうでもないわ。命がけになるそうよ。」
「それってヤバくない。」「そうよ。今度の日曜日の10時に願本寺に来て。」
「それでお祓いはいくらかかるの。」「お金はいらないわ。そうね、甘いものが好きだからお饅頭でも買ってきたら。」
僕は楠木の言う通り、お饅頭を買って行くことにした。




