第39話 不死身
勝也は仰向けに倒れた光喜から包丁を抜こうとする。しかし、包丁は光喜と一体化したようにびくともせず抜けない。光喜はまだ呼吸がある。
勝也は涙を流しながら光喜の首を絞める。
「ごめん、光喜。」
勝也は手に力を込める。涙が光喜の顔に雨のように降り注ぐ。もう呼吸が止まったはずだが勝也は手を離さない。
殺してしまった。親友だったのにこうするしかなかったんだ。俺がやらないと死者が増え続けるだけだ。
「そろそろ、離せ。暑苦しい。」「え・・・・」
勝也が光喜の顔を見ると光喜の目が勝也を見ている。
「うわわわわーーーーー」
勝也が驚いて後ずさりする。
「い、い、い・・・」
勝也は言葉が出ない。確かに殺したはずだ。なのに死んでいない。包丁が腹から押し出されるように抜け落ちる。
「この程度で我は死なないぞ。」「アラタか。僕を殺すのか。」
「いや、見逃してやろう。さっさと出て行け。」「アラタ、不死身なのか。」
「我を殺したければ、バラバラに切り刻むのだな。」「体を光喜に返してくれ。」
「良かろう。」「光喜、大丈夫か。」
僕が意識を取り戻すと勝也が僕に呼びかけていた。
「死んだのではなかったかな。」「殺せなかったよ。」
「僕が死ねばよかったんだね。」「無理だったよ。でもよかった。」
「失敗したのに?」「俺は後悔したんだ。」
「後悔したの。」「ああ、やっぱり親友を殺すことはやめだ。ごめんな。」
「いや、僕が勝也を苦しめていたんだね。」「つらいのは光喜も同じだろ。」
僕が死んでいれば全て解決していたのだろうが、僕は死ねなかった。
これは僕が自殺しても無駄なのかもしれない。
僕はアラタに言う。
「勝也を殺さなかったのは外で警察が張り込んでいるからだろ。」「それもある。勝也を殺したら、お前は我を許さないだろ。」
「そうだよ。どんな手を使っても殺してやる。」「だから殺さなかったのだ。」
あのアラタが僕の死を恐れている。僕は死ぬことが出来るのか。でも、包丁で刺されても無傷だし、小山には拳銃で撃たれたよな。どう考えても不死身だよな。
勝也は帰って行く。明日から勝也と以前と同じように付き合うことが出来ればいいと思う。




