第3話 霊感少女
教師不在の教室は、生徒たちがざわつき始める。僕は昨夜の夢を思い出す。もしかして、僕が佐藤を殺したのか。でも夢のはずだ。僕が佐藤を殺すはずがない。
勝也が僕に話しかける。
「光喜、顔色が悪いぞ。」「少し気分が悪い。」
「保健室へ行くか。」「いい、トイレへ行ってくるよ。」
僕は少しふらつきながらトイレへ行き、顔を洗う。鏡で顔を見る。僕の顔だ。夢の顔ではない。顔をハンカチで拭くとトイレを出る。
「日下君、放課後校舎裏に来て、話があるの。」「えっ。」
振り向くと楠木がトイレの出入り口に立っていた。僕が一人になるのを狙っていたのか。
「今ここで話せないの。」「ええ、他の人に聞かれたくないのよ。」「分かった。放課後校舎裏だね。」
この日、授業はまともに行われなかった。先生たちは自習を言い渡すか、遅れて来て中途半端な授業をするがだった。
僕は、楠木が放課後何を話すか気になっていた。まさか告白じゃないだろうな。僕は自分が女子にもてないことは知っている。うぬぼれるつもりはない。
なら、何の用があるのだろう。何も思いつかない。楠木とは、同じクラスという以外接点がないのだ。そう言えば、昨日初めて目が合ったよな。
僕が考えを巡らせているうちに授業は終わって放課後になる。僕は一人になって校舎裏へ行く。するとすでに楠木が待っていた。
「またせたかな。」「いいえ、来たばかりよ。」
「何の用かな。」「私に付き合ってもらおうと思って呼び出したのよ。」
あれ?楠木に付き合うのだけど告白じゃないよな。
「告白でも期待して来たの。」「いや、何の用か気にかかっていただけだよ。」
「なんだ。残念。」「それで何に付き合うの。」
「私は見えるのよ。」「見える?」
「霊とかが見えるし、死ぬ人もわかるわ。」「それと僕が関係あるの。」
「気づいていないの。日下君、黒いものに憑りつかれているわよ。」「黒いものって、悪霊?」
「分からない。でも悪いものよ。それに広がってきているわ。」「どうしよう。僕、取り殺されるのかな。」
「私の話を信じてくれるのね。」「僕は廃病院で黒いものに襲われたんだ。その後、気のせいかもしれないけど、顔の一部が黒く見えたから。」
「そうなのね。お祓いをしてもらいに行きましょ。」「大丈夫かな。」
「どういうこと。」「夢なのかもしれないけど黒いものが佐藤を絞め殺したんだ。」
「なんてことなの。そんなに強力なんて。一度、お祓いをしてくれる人に相談してみるわ。」「お願いします。」
僕は、佐藤を殺した夢が、現実のことであったのではないかと考える。さらに楠木は言う。
「私が霊とか見えることは内緒にしていて欲しいの。」「分かった。黙っておくよ。」
僕はこのことを人に話す気はない。話しても信じてもらえないだろうし、気持ち悪がられるに違いない。




