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第29話 初めての殺し

 僕は必死に走る。

 「逃げるな!ころしてやる!」

池田は叫びながら僕を追いかけてくる。僕は警察署に向かって力の限り走る。僕はだんだん息が上がってくる。池田は叫び続けているけど余裕があるようだ。

 このままでは捕まってしまう。嫌だが、戦わなくてはいけないのか。戦うなら人目の無い所にしないといけない。目の前に堤防が見えてくる。川だ。河川敷なら人目はないだろう。

 僕は堤防を駆け上がる。もう真後ろに池田が追い付いてきている。さらに堤防を駆け下りて河川敷で止まる。池田は10メートル位離れたとことに立つ。

 「日下、いい所に逃げ込んでくれたな。ここなら邪魔は入らない。」「池田、やめようよ。僕は殺していない。」

 「何言っている。お前意外にいないだろ。お前は俺たちの仲間じゃない。」「何言っているんだ友達だろ。」

 「勝也の友達だろ。勝也がいなかったら、お前は俺たちとは行動していないだろ。」「そんな風に見ていたんだ。」

確かに勝也とは幼馴染で仲がいい。池田は勝也の友達だ。僕は勝也がいるから池田と話をするに過ぎない。

 「さあ、覚悟を決めろよ。」「本当に僕を殺すのか。」

 「ああ、佐藤たちのかたき討ちだ。」「僕は死にたくないんだ。」

僕は覚悟を決める。すると僕の右腕が黒くなる。池田が目を丸くする。

 「化け物だ。俺は正しかったんだ。」「好きでこうなったんじゃないよ。」

池田がナイフを振り上げて向かってくる。僕は黒い右腕を伸ばして池田のナイフを掴む。するとナイフの刃が根元から折れる。池田の勢いもなくなる。

 僕はナイフの刃と一緒に池田の心も折った様だ。池田の態度が変わる。

 「ほ、本気ではなかったんだ。」「ナイフを向けておいて、よく言うね。」

 「俺は帰るわ。お休み。」「帰れると思っているのか。」

 「悪かった。許してくれ。」「もう、遅いよ。」

 「そうやって佐藤たちを殺したのか。」「殺したのは僕じゃない。」

 「その腕のことは黙っておくから、助けてくれ。」「だめだよ。」

池田は踵を返して逃げ出す。僕の方が早い、黒い右腕を伸ばして池田の足を引っかける。僕はゆっくり池田に近づく。池田はしりもちをつきながら後ずさりする。

 「いやだ、死にたくないよ。」「ナイフがなくなったら、これか。」

 「許してくれよ。」「苦しませないから心配しないで。」

 「いやだ、いやだ、いやだ・・・・・・」

池田が泣きじゃくる。僕は一撃で池田の首の骨を砕く。池田は糸が切れたように倒れる。僕は死体をヨシの茂みの中に隠す。


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