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第25話 ドライブに出かける

 本堂で僕は気の練習を繰り返す。アラタは日浄を殺すと脅していたが、僕が気を使うのでそれどころではないようだ。

 暗くなってきて、日浄は僕たちに家に帰るように促す。僕は楠木を家まで送って行くことにした。楠木が僕に言う。

 「日下君がアラタをコントロールできるようになれば、ずっと一緒にいられるね。」「えっ、一緒。」

 「いやなの。私は日下君と一緒にいたいわ。」「僕もだけど、それって・・・」「内緒よ。」

僕も一緒にいたいが、楠木は友達としてなのか、それとも恋人としてなのか、どう思っているのか気になった。

 でも、僕は穢れのアラタと同化している状態で殺人鬼と変わらない。こんな僕が楠木と一緒にいられるのか。この時、アラタが僕の心を読んで言う。

 「お前は人間と変わらない。ただ、人間社会では異物というだけだ。女を作ってなにが悪い。」「アラタにせいだろ。」「ふん。」

楠木と一緒にいるためには、このアラタをコントロールしなければならない。僕が頭の中で悶々と考えているうちに楠木の家に到着する。

 僕は「また、明日」と言って帰ろうとする。すると楠木が僕の手を掴んで言う。

 「信じている。私は日下君を信じているから。」

楠木が真剣な目で僕を見る。僕は圧倒されてしまう。

 「あ、ああ。がんばるよ。」

こんなことしか言えないのか。僕のバカ。僕は恥ずかしくなり、楠木から離れる。楠木は僕の姿が見えなくなるまで立って僕を見送ってくれた。

 僕は心の中が暖かくなる感じがした。久しぶりに足取りが軽い。僕は楠木のしてくれたことがうれしかったに違いない。

 この気持ちがいつまでも続いて欲しかった。このまま家に帰ると父がすでに帰宅していた。

 「お父さん早いね。どうしたの?」「ドライブへ行こうと思ったんだ。気が滅入っているだろ。気晴らしに出かけよう。」

 「何言っているの。もうすぐ夕食の時間だよ。」「食事は途中で食べればいいさ。私がおいしい店を知っているぞ。」

 「分かったよ。着替えてくる。」

僕は、急にドライブなんてどうしたのかと思ったが、楠木とのことで浮かれて、疑問は消えてしまう。

 僕と父は車で暗くなってきた街をドライブに出かける。

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