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第19話 アラタの復活

 父が車で帰って来る。僕は父に質問する。

 「お父さん、どこに行っていたの。」「警察だ。小山に会ってきた。」

 「あいつは執念深いから構わない方がいいよ。」「ああ、トンでもない奴だった。」

父はそういうと、服の中からICレコーダを取り出し、服に取り付けていた小型マイクを外す。

 「お父さんこれは・・・」「小山の発言を録音したんだ。聞いてみるか。」「うん。」

僕は小山が母の死を何とも思っていないことを知る。また、小山に対する怒りがこみあげてくる。するとアラタがささやく。

 「我慢することはない。小山を殺したいと念じるだけでいいんだ。」「代償を払うんだろ。」

 「まさか、我らは一つだ。今回だけ我の殺しに目をつむるだけだ。」「信じられないな。」

この後、父は葬儀の手配をして親戚だけで母を送り出した。僕はもう母はいないのだと思い知らされる。

 夜、眠ろうとすると自然に涙があふれる。僕は無力だ。心の中で何度も言う。

 「小山、母を返せ。」

夢を見る、あのリアルな夢だ。小山が僕の家の前にいる。僕は家を出ると走り出す。小山が追って来る。僕は近くの公園に逃げ込む。街の中の公園だがかなりの広さがある。

 深夜だ公園には誰もいない。僕は立ち止まる。小山が公園の中に入って来る。

 「何逃げているんだ。」「誘われたとは考えられないのか。」

 「なにー、バカにしているのか。」「愚かではあるな。自分の立場が分かっていない。」

 「お前、光喜じゃないな。誰だ。」「日下光喜だよ。」「嘘をつけ。」

小山は拳銃を抜いて構える。

 「我にそんなもの通用するものか。」「試してやる。」

パンと乾いた音がして僕の右肩に拳銃の弾丸が当たる。ショックはあるが、痛くない。傷口から黒いものが出て弾丸を押し出す。弾丸は地面に落ちる。

 「なんだそれは、当たったがキズ一つ付かないぞ。」「化け物め。頭に打ち込んでやる。」

小山は拳銃で僕の頭を狙う。だが、わざわざ待つ必要はない。僕は右手をふると黒い鞭となって小山の左足を打ち据える。ゴキッと嫌な音がする。足の骨が折れたようだ。

 小山は倒れる。そして半狂乱で叫ぶ。

「化け物め!死ね!」

パン、パン、パン、パンと拳銃を撃つ。2発が当たるが体にキズは付かない。小山は拳銃を打ち尽くしたのか拳銃を投げつける。

 「では我の番だな。」「まて、お前のことは諦めるから、助けてくれ。」

黒い鞭となった僕の右手が高速で、小山の右腕に当たる。あまりもの勢いで小山が弾き飛ばされる。そして、右腕が地面に転がる。

 「あああああああーーーーー」

小山が悲鳴のような叫び声をあげ、残った左腕と右足で地面を這いながら逃げ始める。僕はあざけるように言う。

 「まるで虫けらだな。どこまで逃げるんだ。」

返事はない。小山は必死にもがいている。僕は右手の黒い鞭で小山の背中を打ち続ける。シャツに血が滲み、そのシャツも破れていく。小山の動きがだんだん弱くなっていく。

 それでも僕は打ち続ける。皮膚が裂け血が飛び始める。僕は夢の中の僕に訴える。

 「もういいだろ。やめてくれ。」

夢の中の僕が言う。

 「憎いのだろ。さあ楽しめ。」「そんなことできないよ。」

とうとう小山は動かなくなる。見ると呼吸が止まっていた。目を見開いて苦痛で歪んだ顔で死んでいた。僕は笑っている。醜悪な姿だ。

 僕は目を覚ます。そしてお守りの中に入れてある護符を確認する。護符は僕の手の中にこまぎれになって出てきた。アラタが出てきたに違いない。僕は楠木に電話する。

 「夜中にごめん。」「何かあったの。」

 「護符が細切れになってしまった。」「アラタが出てきたのね。」

 「小山刑事を殺した夢を見たんだ。」「まだただの夢かもしれないわ。」

 「明るくなったら確認してくるよ。」「気をしっかり持ってね。」「うん。ありがとう。」

朝になつて、僕は公園へ行く。すると人が集まっている。人々が見る先では警察官が何人もいて何かを隠すように青いビニールシートが張られている。誰かが言う。

 「惨殺されていたらしいよ。死体を見た女性が卒倒して病院に運ばれたくらいだからね。」

間違いない、アラタが僕の体を使って小山を殺したんだ。


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