第16話 母親
僕は学校が終わると真直ぐ家に帰る。母のことが心配で、勝也の誘いを断って帰って来た。玄関のドアを開けると母が座り込んでいる。
「お母さん何をしているの。大丈夫?」「小山刑事が来たんだよ。」
「えっ。小山が。」「あんた、昨日、楠木さんとショッピングモールでデートしていたんだって。」
「小山が言ったの。あいつ、僕たちの跡をつけていたんだ。」「あんな娘と付き合うんじゃないよ。」
「楠木のことを嫌わないでくれよ。」「光喜が楠木さんと付き合っていると近所に知れたらどうするの。」
「お母さん、ひどいよ。」
僕は怒って母を残して2階へ行く。部屋に張るとベットに倒れ込む。小山の奴、なんてことをしてくれるんだ。だんだん怒りの感情が高まって来る。
それと同調するように心の底から黒いものがうごめいて来る感じがする。まさか、アラタが反応しているのか。僕は怒りを抑えようとする。平常心、平常心・・・・・
僕は母と言い争いをする。僕の中から黒いものが湧き出て来る。アラタだ。黒いものは母の首をしめる。やめろ、やめてくれ。僕は血の気が引いて来る。
アラタは母の首をしめたまま吊り上げる。母のうつろな目が僕を見下ろす。
「あんたが私を苦しめて殺したんだ。」
母の目はそう言っているようだった。
僕は目を覚ます。夢か、僕は寝てしまったらしい。すでに夜になっている。僕はコンビニに弁当を買いに行くことにする。1階に行くと家の中が暗い、電気がつけられていない。
母も寝込んでいるのか。気になって、居間の明かりを灯す。静かだ、いないのか。おかしい母が出かけるわけがない。僕は隣の部屋の引き戸に手をかける。
嫌な感じがする。僕は引き戸を開けることをためらう。寝ているだけだ。そっと確認するだけじゃないか。思い切って引き戸を開ける。僕は腰砕けになってその場に座り込む。
母麻木は首つり自殺をしていた。部屋の壁に取り付けたフックに布を裂いて作ったひもをかけて首をつっている。
僕は慌てて父に電話する。
「父さん、大変だ。」「どうした。」
「母さんが自殺している。」「なんだって、119番はしたか。」
「まだだよ。」「すぐに電話して。麻木を降ろしてくれ。すぐに帰るからな。」
僕は119番に通報して、母を何とか降ろそうとする。僕は母の下に布団を敷いて、ひもをはさみで切る。母は布団に落ちて倒れる。
「お母さん目を開けて!」
母は反応しない。そのうち、救護隊が駆け付けて母を病院に搬送する。僕は母に付き添う。僕は病院に到着すると父に電話する。
「今、病院に到着したよ。」「麻木は生きているのか。」
「分からない。桐ヶ丘総合病院にいるから。」「そこで待っていなさい。」
父が到着する前に僕は医師から母の死を告げられる。




