第14話 二人で買い物
日曜日、僕は午前9時30分に桐ヶ丘駅の噴水前に到着した。僕はすでに疲れている。母が出かける僕の様子を見て、楠木と出かけることに気づいたのだ。
僕は洗面所で身だしなみを整える。母はその様子を見ていたらしい。
「光喜、どこに出かけるの。」「勝也と遊んでくるよ。」
「違うでしょ。楠木さんと出かけるつもりね。」「そんなわけないだろ。」
「勝也君と遊ぶなら、身だしなみを整えたりしないだろ。」
僕のことをよく見ている。いつもそんなに詳しく見ていたのか。
「今日はたまたまだよ。勝也に確認してくれてもいいよ。」「勝也君とは話をつけているんでしょ。出かけてはいけません。」
「高校生にそれはないよ。僕は行くからね。」「だったらついて行きます。」
なにー執念深い、母さん性格が変わってきているよ。付き合いきれないので振り切って出て行こうとする。すると母は腰にしがみついて離れない。仕方なく引きずって出て行こうとする。
「麻木、離してあげなさい。」
見かねた父が母を引きはがす。僕は逃げるように家を飛び出す。これでは買い物を楽しむところではない。
僕は疲れた体を沈めるようにベンチに座り込む。楠木が来るまで少しある。その間に気持ちを切り替えよう。
「日下君どうしたの。疲れているように見えるわ。」「おはよう。早いね。」
「楽しみで早く来ちゃった。」「僕も楽しみにしていたよ。」
「その割には変よ。」「気にしないで、行こうか。」「うん。」
僕たちは駅のホームに向かう。目的地はショッピングモールだ。行くためには電車で15分位かかる。電車を降りて改札を出るとショッピングモールに通じる橋が架かっている。
僕たちは橋を渡り始めるが人が多い。僕ははぐれないように楠木の手を握る。楠木はうつむく。僕は「しまった」と思って言う。
「ごめん、いやだった。」「いやじゃないよ。」
楠木は答えると握り返してくる。僕はホッとする。そして僕たちは手をつないで歩く。楠木は僕をブティックに連れて行く。僕がいることが場違いのような店だ。
楠木は何着か服を選んで試着室に行く。僕は楠木のファッションショーを見ることになる。どれも楠木に似合っていた。今の楠木は学校にいる時とは別人だ。
「どれが良かった。」「どれも似合っていたよ。」
「全部は買えないわ。」「だったら2番目の服がかわいかったよ。」
「それに決めるね。」「僕が選んだのでいいの。」
「日下君が、かわいいと思ってくれるのでしょ。だからこれでいいのよ。」
僕は楠木が本当にかわいく思えてきた。この後、昼近くになったのでオムライスの専門店で食事をとる。僕たちはウインドウショッピングを楽しむ。
午後3時になった頃、僕たちは疲れたのでフードコートでお茶の時間にする。僕は穢れのことを忘れて、会話を楽しむ。こんなに話したのは、勝也以外ではいなかった。
突然、楠木の顔色が変わる。
「どうしたの。急に・・・」「小山刑事がいるわ。」「えっ。」
僕が振り向くと少し離れたとことに小山が座って、こちらを見ている。小山の奴、偶然か。
すると小山はこちらに来る。
「お邪魔しますよ。」
小山は勝手に座って割り込んでくる。
「お二人ともデートですか。」「買い物ですよ。」
「それにしては手をつないで歩いて、仲良く服を選んで、ずいぶん親密ですよね。」「何が言いたいのですか。」
「何もありませんよ。じゃあこれで。」
小山は一日中僕たちをつけていたのだ。小山のせいで楽しい気分はぶち壊しだ。僕たちは帰ることにする。




